東京都は10月31日、認知症対策推進会議認知症ケアパス部会(第2回)を開催した。
「認知症ケアパス部会」では、認知症にかかわる医療・介護関係者が地域で連携・協働する体制をつくるため、有効な情報共有の仕組みやツールについての検討を行っている。

会議の前半は、情報共有のシステムづくりに取り組んでいる数井裕光・大阪大学大学院教授(医学系研究科)を招き、大阪府内で行なった実験について語ってもらった。主な内容は以下の通り。

■連携システムの前提
認知症の患者は在宅生活を基本とし、かかりつけ医と在宅ケア施設が支え、認知症の専門医がサポートする。そのためには情報共有ツールが必要。同時に、家族やケアマネジャーに対する継続的で実践的な教育活動が必須である。

■情報共有ツールの特長
「心と認知症の連携ファイル」(情報共有ツール1)を患者ごとに作成し、診療やケアを受ける際には、介護者が常に携帯する。ファイルには「情報共有」と「診療情報」の2つの機能をもたせ「前者は、介護者・ケアマネジャー、ケアスタッフ、かかりつけ医、専門医が互いに連絡や質問・回答を書き込む、交換日記のようなイメージです」。後者は、母子手帳をイメージし、臨床経過や検査結果を記すものとなっている。

介護者に向けて、全10種類の「疾患別・重症度別 治療・ケアガイドブック」(情報共有ツール2)を作成。疾患別・重症度別にすることで、確実に目を通せる情報量に絞り、必要な情報を得やすくすることをねらった。ガイドブックは、専門医が診断時に適切なものを介護者に渡す。

■連携システムの試験運用
2011年2月から7月末まで、59患者(+家族)、かかりつけ医75名、介護サービス事業所84施設、ケアマネジャー48名が参加。月に1回連絡会(情報共有ツール3)を実施し、疑問点などを話し合い、よい提案はガイドブッグの改訂に生かした。

■情報共有ツールの効果
実験後、家族に情報共有ツールの感想を訊ねたところ、「BPSD対応を学べた」と答えた人は50%強。連携ファイルについては、「ケアマネ・施設に相談しやすくなった」「かかりつけ医に相談しやすくなった。医師の患者への理解が向上した」などが50~60%の回答を得た。連携ファイルに関しては、介護サービス事業所から「かかりつけ医と連絡がとりやすくなった」、かかりつけ医からは「患者の日常や、利用している介護サービスがわかった」との肯定的な感想とともに、「カルテとの二重書きになる。電子化してほしい」という意見も出た。

その他、実験を通しての気づきとして、「連携ファイルは、いきなり渡されても書くのが難しい。記入の仕方を指導する人が必要」「連携ファイルの項目の設定では、ケアスタッフより、『患者のこれまでの人生の情報や趣味、好みを入れたい』『かかりつけ医に興味をもってもらえよう、介護保険の主治医意見書を書くための情報を入れたい』との意見が出て、採用した」などが報告された。(ケアマネジメントオンライン)