厚生労働省は10月31日に開かれた社会保障審議会介護保険部会(部会長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)に、所得が高い利用者による利用負担を増やすことを提案した。政府・与党が6月にまとめた社会保障・税一体改革の成案を踏まえたもので、年収320万円か383万円(単身世帯)で区切る案を提示。一方で、負担能力がないと認められる低所得者に対しては、保険料を現在よりも軽減する措置を検討する。

 同省はほかに、▽第2号保険料への総報酬割の導入▽予防給付サービスやケアマネジメントに対する利用者の負担増▽多床室に対する室料の給付の見直し▽補足給付における資産などの勘案―などの案を示した。いずれも同部会で昨年も話し合った内容で、一体改革の方向性を踏まえ改めて提案した。同省では、これらをすぐに結論を出す必要があるものと長期的な検討課題とに今後、区分けする。

 同部会が昨年11月に取りまとめた介護保険制度の見直しに関する意見書では、一定以上の所得がある場合の利用者負担を2割に引き上げる案を盛り込んでいた。年収320万円で区切った場合には、同省では1号被保険者の14.6%が対象になるとみている。
 一方、医療保険では、「年収383万円以上」の高齢者(単身世帯)を現役並み所得者に位置付けており、介護保険をこれに合わせると1号被保険者の9.8%が負担増の対象に該当する。今後はこの2案を軸に検討する。

 一方、補足給付は所得が低い介護施設入所者による居住費の負担を軽減する仕組みで、特別養護老人ホームでは入所者の約4分の3が受給しているが、これらの入所者が高額の資産を保有しているケースがある。このため、同部会は昨年にまとめた意見書の中で、これらの資産を把握した上で補足給付の支給を判断すべきだと提案していたが、資産の具体的な把握が困難との指摘がある。

 厚労省は31日、米国の低所得者向け医療保険「メディケイド」に導入されている受給者の遺産から費用を徴収する仕組みを例示した。意見交換で葛原茂樹委員(鈴鹿医療科学大特任教授)は、「若い人に負担を掛けず、利用する人が限界までやりくりするようにしないと制度の持続性を担保できない」などと述べ、資産を把握するための仕組みの具体化を求めた。(CBニュース)