9月5日、厚生労働省は第79回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。
この日は議題の一つに「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する基礎調査について」が挙がっており、厚労省担当者から今年3月に行った「ケアマネジメント実態調査」の結果が報告された。

同調査は、現在行われているケアマネジメントの現状を明らかにするとともに、ケアマネジメントの質と、ケアマネジャーの資質を比較・分析できる基礎データを収集することを目的としたもの。

居宅介護支援事業所8,927ヶ所、介護予防支援事業所1,101ヶ所の合計10,028事業所に調査票を送り、1事業所あたり管理者1名、ケアマネジャー3名に回答してもらった。有効回答数は、管理者票1,864件(有効回収率18.6%)、介護支援専門員票3,284件(同10.9%)、個別ケース票8,425件(同9.3%)。

厚労省担当者から結果の中身について報告を受け、フリーディスカッションに移ると、委員からは次々と厳しい意見が飛び出した。

口火を切った池田省三委員(地域ケア政策ネットワーク研究主幹)は、「完璧に“家族依存型”のケアマネだとわかった」と述べた上で、「1割程度の回収率ではデータとしてバイアスがかかり、ほとんど役に立たない。回答したのはあまり問題のない人だろう」と調査結果の精度について一刀両断。さらに、「個人的には、ケアマネが今置かれている状態はリセットも含めて極めて危機的な状況だと思う。にもかかわらず、9割が回答しないということは、危機感がないのだろう」と、ケアマネジャーに対して警鐘を鳴らした。

これを受けて、厚労省担当者は「(震災直後という)調査のタイミングが大きかったのと、調査もかなり細かい内容なので」と回収率の低さについて弁明。日本介護支援専門員協会会長の木村隆次委員は、「普及、啓発を(日本介護支援専門員協会)会員にしたものの、個人の会員なのですべての事業所をカバーできていなかった」と反省の意を述べた。

また、武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、「ケアマネに関する問題はここ(同分科会)でもたくさん出ている。介護支援専門員の組織率、専門性は担保されているのか。震災の影響なのか、いつ調査をしても変わらないのか…。あるいは、“御用聞き”どまりだとわかるのが恐いのか…」「ケアマネは介護保険のキーパーソンなのに、家族の言いなりになっていないか」と厳しい一言。

さらに調査では、ケアマネジャーの保有資格別にケアプランの作成状況を分析しているものの、明確な差は見られなかったことについて、「医療系ケアマネ、介護系ケアマネでケアプランに明らかに差が出ているのに、こういうアンケートをとると表に出てこない」と疑問を投げかけた。

このほか、大島伸一委員(国立長寿医療研究センター総長)が「調査を行った日本総合研究所とはどのような契約を?」と質問し、厚労省担当者が「委託研究として、調査だけではなく詳細な分析も合わせて2,000万円で…」と答える場面もあった。

回収率の低さから、結果内容を参考にすることはできないという声が相次ぎ、この議題については、「もう一度調査の目的を明確にしてもらうとして、今日はこの話は打ち止め」という大森分科会長の一声で、打ち切られ、最後、木村委員から「(ケアマネジャー)個人のスキルだけで語るのではなく、環境も考慮してほしい」と、保有資格による違いばかりに焦点がいきがちな議論について注意を促した。(ケアマネジメントオンライン)