5月22日、ハスカップセミナー「主治医意見書ってなに?」が東京都千代田区のしごとセンターで開催された。ゲストは栃木県小山市の医療法人アスムス理事長で医師の太田秀樹さん。


みずからケアマネジャーでもあり、地元の介護認定審査会会長を務めるなど、介護保険に精通した医師として知られる太田さんは、今年度から、介護認定の一次判定調査項目が減らされ、その分より重要視されることになった主治医意見書について、さまざまな問題点を明らかにした。


実際に主治医意見書の実例を示しながら、まずその内容が貧弱なことを指摘。そして具体的に「医師の手書きの文字が汚くて読めない、一般人に理解できない専門用語や略語が多すぎる、提出期限が守られない、調査員の認定調査票との矛盾(医師は自分の誤記を認めない)、区分変更申請の制度を知らない」など、意見書を書く医師側の欠点を挙げると、介護認定審査員やケアマネジャーらの参加者が多い会場からはおもわず失笑がもれた。


なぜこのような意見書がまかりとおるのかについて、「臓器はみるが、人間はみない」専門医が多く、総合医(家庭医)がいないのが原因だと太田さんは語る。意見書には生活暦そのものをよく観察し、特記事項に書くべきなのに、ほとんどの医師は医学的な疾病概念は理解できるが、生活障害が理解できないという。


そして、多くの医師は介護保険には必須であるはずのチームケアが行えない(情報共有は医師にとっては義務ではない)、リハビリテーション医学への理解が乏しいなどのネガティブ要素を挙げ、「そもそも、介護保険を知らない、興味がない、介護は医療より格下だと思っている医師が多すぎる」と一刀両断。普段、医師とのコミュニケーションがスムーズにいかず、悩んでいるケアマネジャーら介護保険関係者らが「そうだそうだ」とうなずく姿があちこちに見られた。


問題だらけの主治医意見書だが、医師側だけに問題があるわけではなく、そもそも主治医を決めるのは患者なのに、患者は自分の主治医意見書の記載内容すら知らない、ケアマネジャーは閲覧可能なのに医療専門知識が欠如しているため見ようとしない、行政は医師会に遠慮しすぎている、など三者三様の立場での問題点も指摘した。(ケアマネジメントオンライン)