摂食・嚥下障害を考える研究交流会として、12月13日に開催された「第3回食介護研究会」では、主催した独立行政法人 国立健康・栄養研究所代表の手嶋登志子氏に続き、厚労省関係者による基調講演も行われた。

「口腔機能向上をめぐる介護保険制度の現状と課題」:福泉隆喜氏
(厚労省医政局歯科保健課 歯科保健医療調整官)

社会保障給付費の増大とともに要介護認定者も増加し、特に増加率が高い軽度者を対象とした新介護予防給付が2006年から創設された。その施策の1つとして口腔機能向上サービスが導入されたが、運動機能向上サービスなど他のサービスより利用度が低い。低調の原因について全国調査を行った結果、ケアプランに口腔機能向上サービスが取り入れられない理由として、「提供している事業所数が少ない」「対象者の把握が困難」といった声があがり、事業所からの未実施の理由では「人材確保が困難」「介護報酬が低い」などが指摘された。

例えばデイサービスでレクリエーションや創作活動の機能訓練を実施した際に加算されるアクティビティ加算は、有資格者の人員配置要件がないので簡単に取れるが、要件がある口腔機能向上加算は、取得が難しい。これらを踏まえ、2009年度介護報酬改定に合わせて、口腔機能向上マニュアルの暫定版を2008年12月に、確定版を2009年3月に公表する予定である。


「栄養ケア・マネジメントをめぐる介護保険制度の現状と課題」:須永将弘氏
(厚労省健康局総務課 生活習慣病対策室主査)

従来まで、介護保険施設における入所者の栄養管理は、集団的な栄養管理を基本としていたが、2005年10月の介護保険法改正により、個別の高齢者の栄養状態に着目した栄養管理を報酬上評価する「栄養ケア・マネジメント加算」が創設された。2006年の改正では、運動機能向上サービス、口腔機能向上サービスとともに栄養改善サービスが導入された。

2008年度4月審査分の介護給付費実態調査によると、現在、栄養管理体制加算は、管理栄養士と栄養士の配置加算を合わせて98.8%が算定されている。栄養ケア・マネジメント加算は、常勤の管理栄養士を配置し、関連職種が共同で栄養ケア計画を作成し、その計画に基づいて栄養管理を行うもので、約85%の施設で実施されている。

栄養改善サービスは、通所施設において低栄養状態の利用者に対し、管理栄養士が他職種と共同して栄養ケア計画を作成し、これに基づいてサービスを実施し定期的な評価と計画の見直しなどを行うものであるが、他サービスと比較して、その利用は低調である。

理由は口腔機能向上サービス同様に、「提供事業所が少数」「対象者の把握が困難」などがケアプランに取り入れられない要因とされ、事業所においても「人材確保が困難」「介護報酬が低い」などが理由に挙げられた。マニュアルについても、口腔機能向上マニュアル同様、暫定版を2008年12月に、確定版を2009年3月に公表する予定である。