・・・[黒田博クラス]からの続き




一昨々日、白寿ホールで二期会オペラ研修所第60期マスタークラス[大野徹也クラス]修了試演会を聴いて参りました。
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【ソプラノ】阿部祥子、新井英梨、
今状華乃子、内田稚菜、
斉藤真歩、酒井菜摘、砂村 郁、高原史乃、
高山美帆、内藤淳美、畑中紫甫、花岡 薫、矢野敦子
【メゾソプラノ】中川香里
【テノール】市川浩平、岡田淳志、澤井佑介、下村将太
【バリトン】田中 眞、寺西一真、的場正剛

主任:大野徹也
副主任:平井香織
指揮:佐藤宏充
圓具指導:飯塚励生
演出助手:横山洸
声楽講師:橋爪ゆか、山下牧子、久保和範
ピアノ:高木由雅、朴令鈴、森裕子
原語指導:鎌田直純(フランス語)

字幕アシスタント:升本美波
賛助出演:小林秀史(バリトン)、野村光洋(バリトン)、清水宏樹(バリトン)
 音譜~プログラム~
1.ヴェルディ作曲 歌劇《シモン・ボッカネグラ》第1幕より
  アメリア:花岡 薫(Sop)
  シモン:的場正剛(Br)
  ガブルエーレ:岡田淳志(Ten)
  フィエスコ:清水宏樹(助演/Br)
  パオロ:寺西一真(Br)
2.ヴェルディ作曲 歌劇《リゴレット》第2幕より
  ジルダ:砂村郁(Sop)
  リゴレット:野村光洋(助演/Br)
  モンテローネ伯爵:寺西一真(Br)
  牢番:田中眞(Br)
3.ヴェルディ作曲 歌劇《仮面舞踏会》第2幕より
  アメーリア:高原史乃(Sop)
  リッカルド:内川浩平(Ten)
4.ビゼー作曲 歌劇《真珠採り》第3幕より
  レイラ:新井英梨(Sop)
  ズルガ:田中眞(Br)
5.ドニゼッティ作曲 歌劇《連隊の娘》第2幕より
  マリー:酒井菜摘(Sop)
  ベルケンフィールド侯爵夫人:中川香里(Ms)
  シュルピス:寺西一貫(Bas)
6.ドニゼッティ作曲 歌劇《愛の妙薬》第1幕より
ネモリーノ:澤井佑介(Ten)
  ドゥルカマーラ:小林秀史(助演/Br)
7.マスネ作曲 歌劇《マノン》第3幕より
  マノン:今状華乃子(Sop)
  デ・グリュー:岡田淳志(Ten)
8.マスネ作曲 歌劇《マノン》第5幕より
  マノン:阿部祥子(Sop)
  デ・グリュー:下村将太(Ten)
 ~休憩~
9.ドニゼッティ作曲 歌劇《ドン・パスクワーレ》第1幕より
  ノリーナ:高山美帆(Sop)
  マラテスタ:田中眞(Br)
10.ベッリーニ作曲 歌劇《清教徒》第1幕より
  エルヴィラ:畑中紫甫(Sop)
  ジョルジオ卿:清水宏樹(助演/Br)
11.R.シュトラウス 歌劇《アラベラ》第2幕より
アラベラ:矢野敦子(Sop)
  マンドリーカ:寺西一真(Ten)
  エレメール伯爵:澤井祐介(Ten)
  ドミニク伯爵:的場正剛(Br)
  ラルモール伯爵:田中眞(Br)
12.グノー作曲 歌劇《ファウスト》第3幕より
  マルグリート:斉藤真歩(Sop)
  ファウスト:下村将太(Ten)
  メフィストフェレス:小林秀史(助演/Br)
13.ヴェルディ作曲 歌劇《イル・トロヴァトーレ》第4幕より
  レオノーラ:内藤稚菜(Sop)
  ルーナ伯爵:野村光洋(助演/Br)
14.ドニゼッティ作曲 歌劇《ランメルモールのルチア》 第2部 第1幕より
  ルチア:内藤淳美(Sop)
  エンリーコ:的場正剛(Br)
15.マスネ作曲 歌劇《ウェルテル》第4幕より
  ウェルテル:市川浩平(Ten)
  シャルロット:中川香里(Ms)

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[黒田博クラス]と同じく、昨年11月の北とぴあ さくらホールでの第93回二期会オペラ研修所コンサートに出てらした方たちが多く含まれております。

斉藤さんには結構ご縁があり、2014年2月のヤマハエレクトーンシティー渋谷Oggioia!オペラ公演《椿姫》の合唱が初聴きで、今回が4度目。

中川さんは、2015年10月の国立音楽大学大学院オペラ公演《コジ・ファン・トゥッテ》ドラベッラ役が初聴きで、今回が4度目。

市川さんは、2016年10月のミューゼシード・イン・ムジカーザオペラ《魔笛》タミーノ役が初聴きで、今回が3度目。

賛助出演の野村さんは昨年5月、カワイ表参道「パウゼ」の日本ヴェルディ協会主催“若手歌手の協演”<出演:小玉友里花さん、種谷典子さん、杉山由紀さん、又吉秀樹さん、堺 裕馬さん、野村光洋さん、構成・賛助出演:井上雅人さん、ピアノ:井上紘奈さん、泉 翔士さん>以来。

賛助出演の清水さんは先日東京文化会館 大ホールの二期会公演《トスカ》看守役<出演:木下美穂子さん、樋口達哉さん、今井俊輔さん、長谷川寛さん、米谷毅彦さん、坂本貴輝さん、増原英也さん、清水宏樹さん、指揮:ダニエーレ・ルスティオーニ、演出:アレッサンドロ・タレヴィ、合唱:二期会合唱団、管弦楽:東京都交響楽団 他>に続いて。

指揮の佐藤さんは今年1月、足利市山辺公民館・別館ホールの『足利オペラ・リリカ』の公演<出演:大隅智佳子さん、田崎尚美さん、内山信吾さん、又吉秀樹さん、石塚幹信さん、小田知希さん、小林昭裕さん、斉木健詞さん、指揮:佐藤宏充さん、演奏:清水綾さん&足利オペラ・リリカ・アンサンブル>に続いてです。

試演会の会場、白寿ホールは良く響くホールという印象です...というか響き過ぎると言った方がいいくらいです。

今回たまたまお隣の席に、昨秋の北とぴあホールでもお会いした方がお座りになってらしたので、休憩時に北とぴあのコンサートと今回の公演の印象をお話しました...

「あの時は、声量に関して精々一人二人目立っていただけといった印象でしたが…」<私>

「全く同感です、あれが全研修生の中の選りすぐりとはとても思えませんでした。今回は皆さん見違えるようです」<その方>

(北とぴあ つつじホールは、響かないことで有名なようで)さくらホールの響きも悪かったのでしょうか...<自問>

私は今回賛助出演の皆さんも結構色々な会場で聴いて参りましたが、これまで声量という部分で特に印象に残ってこなかった方も、この度はほぼ全員かなりの声量を発揮しておられたという印象です(逆に調子を落としてらした方がおいでのようにも思いましたが)

素人の私がこんなことを言うのも何ですが、このホールでは声量に関して真水部分というのを考慮すべきかなという気がいたします。

誰も読んでないでしょうから、調子こいて続けます。[黒田明クラス]から出演順に、出来が良かったと感じた研修生を挙げさせていただきます。

明瞭な歌唱の村山さん。熱演熱唱された高橋さん、今回汚れ役でしたが、この方は癖のない歌い振りで今後の伸びしろが期待出来ます。張りのあるお声と豊かな声量の相山さん。お声がよく響いてらした一條さん。立体感のある素晴らしい音色で、将来が大いに期待される髙品さん。深い低音をお持ちの金子さん。伸びやかな歌い振りの吉田(愼)さん。弱音を上手に生かしておられた中野さん、美声で豊麗な歌唱が印象的だった田浦さん。とても厚みのある音質で歌唱の安定性、完成度ともナンバーワンだったと言える郷家さん。

[大野徹也クラス]に関しては、重厚で朗々たる歌唱の的場さん。豊かな声量が光ってらした高原さん。お声に張りがあり聴く者の耳に心地良く響いてきた市川さん。安定感のある矢野さん。丁寧な歌い振り、透明性のあるお声で魅了した斉藤さん。力感あふれる内田さん。明瞭な歌唱の内藤さん。厚みのあるお声がよく出てらした中川さん。

以上、敢えて挙げれば...といった感もあり、出演者全員が素晴らしかったです。

私のは単に素人の印象ですが、評価というのは、ふつう人がします(猫やカエルがしたという話は未だ聞いたことがありません)。そしてそれとは別に「自己評価」というものがあります。

あるスポーツ競技で、チームを何度も日本一に導いた経験のある監督さんが、優勝のかかった大一番を前に、部員たちに目を閉じさせこう問うたそうです「君たちのなかで、自分は最善の努力を尽くしてきた、と胸を張って言える人は手を上げなさい」

何処からも手が上がらなかったそうです。目指す処が高い者ほど、自分に対して厳しくなります。

世間でよく聞かれる「これまで全力を尽くして参りましたが…」といったフレーズは、高みを求めるスポーツ選手の口からは滅多に聞かれません。それは、もっと努力できた筈「もっと、もっと」という想いが、自分に厳しいベクトルを向けさせているからだと思います。

思想家のルソーが、いい言葉をのこしてくれてます「人と比較するな、昨日の自分と比較せよ」

自分に甘えない姿勢、つねに自己と厳しく向き合う覚悟が出来てさえいれば、他所様の評価は必要以上に気にすることはありません...そんなことを思いながら、会場をあとにしました。


《清教徒》第1幕で、採り上げられると思っていたニコ<いとしい乙女よ、あなたに愛を>も、やっぱ演奏されませんでした。

注目は中盤、ローレンス・ブラウンリーのハイCis(彼はこのオペラの第3幕ではハイFを出したそうです、もちろん胸声で)。


~余談その①~
こちらの画像は、先日の二期会公演《トスカ》のとき、文化大ホール5階席から撮ったものです。


この画像を貼ったのには理由がありまして、《トスカ》第3幕で死刑囚カヴァラドッシから差し出された袖の下の指輪を受け取らずに、最後の手紙を書くことを許した看守役の清水さんが、今回賛助出演されていたからです。

試演会終了後、清水さんご本人に「あのシーンは後味が良かったです」とお伝えすることが出来て、嬉しゅうございました。

ご承知のように《トスカ》では、あのあとカヴァラドッシが銃で処刑される訳なんですが、銃を構えた7人の兵士から人の命を断つという行為の重み、緊迫感といったものが何故か伝わってこず、清水さんの演技が余計に心に残っています。


~余談その②~
(文化大ホール5階席の)画像からだと角度の深さはあんま感じないかも知れませんが、実際は谷底を覗き込むような感覚です。私共も時どき最上階からオペラを聴くことがございます。気楽ですし、チケットは安いですし、オケや指揮者の様子が分かって楽しいです。

そして何より、歌手の声量の多寡やオケの音が、上からだとよく判ります。時にオケや合唱に埋没しソリストの声が最上階まで届いてこないことがあります。声量が全てとは申しませんが、大きな会場では声量がなければ全てがありません。

思わぬ光景に出くわすこともあります。昨秋の神奈川県民ホールの《フィガロの結婚》第2幕、ケルビーノが女性の服に着替えるシーンで、舞台の衝立の向こうで着替える女性歌手の裸の背中が、大して角度のない2階席からでも丸見えでした↓


2年前Hさんと一緒に観に行ったNHKホールの来日オペラでは、全裸の歌手が登場したようですから(後ろ姿だったようで私は見逃してしまいました)、《フィガロ...》のシーンもサービスショットだったかも知れません。何れもお堅い日本のオペラでは考えられないことです。


~余談その③~
こちらは頂き物で、私の大好物「土佐文旦」です。


文旦と言えば、忘れられない思い出が5年前のHさんたちとの大垣珍道中後にも先にもあんな楽しかった旅行はありません。

私は音友が出来る2011年頃まで、演奏会は一人で聴きに行ってました。当初、音楽を通じて人さまと交流するということは全く考えていませんでした。

それが後に、男に飢えまくってらしたご婦人方の毒牙にかかり、女子会にペットとして飼われてしまう事態になろうとは...今思うと、お誘いに乗ってしまった私の脇も甘うございました。が...

最初のうちはご婦人方も敬語で大変丁寧だったんですヨ。それが段々エスカレートしていって、実は「長いあいだ空き家状態になっている私らのお相手をして頂戴(何のお相手なんだか)とは申しませんが、女子会の(マチネであっても最終電車まで延々と付き合わされる)お誘いを断ったら、どうなるか分かってるでしょうね!夜の東京湾に浮かぶことになってよ!」 オーマイガー という強迫メールが送られてきていたのです、ありていに申せば。

「私も背負ってるものが大きいから、それだけはご勘弁を…」とご返信申し上げたのですが「背負ってるものが大きいとはとても思えない」と即、返信されました。


さて、、、余談も大概にした方が良さそうですね、おあとがよろしいようで。。。


次回のブログ更新はメモ今月中旬(髙木竜馬さん、金木博幸さんのミニコンサートのレポ)を予定しております。


マタネ