配慮不足のストレスRPG。「インフィニット アンディスカバリー」 | 逆転裁判合同ブログ1号店

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■360:「INFINITE UNDISCOVERY」 SQUARE ENIX/Microsoft/tri-Ace


「スターオーシャン」、「ヴァルキリープロファイル」など、
多くの傑作を世に送り出してきたtri-Ace(AAA)が手がける超大作RPG、
「インフィニット アンディスカバリー」が、遂にXbox360で発売された。

大地に突き立てられた巨大な鎖によって繋ぎ止められた『月』。
それにより、世界では様々な異変が発生するようになっていた。
その"鎖"を断ち切るため、立ち上がった英雄シグムントと、
何故か、それに付き合わされる破目なった旅芸人カペルの冒険を描く。



---[ 高い技術力を感じさせる贅沢と快適の融合 ]---

ゲームは大規模オンラインRPGを意識したような作りになっていて、
当初は、本当にMMORPGとして出す予定だったんじゃないかと思うほど、
至るところに、それらしい名残が見て取れる。
分かりやすい例を出すなら「ファイナルファンタジーXII」のような感じ。
ただし、戦闘はエンカウントなしのアクションバトルになっていて、
Rトリガーで抜刀することで戦闘モードに切り替わるようになっている。
なので、内容としてはLEVEL-5開発の「ローグギャラクシー」が近いか。

そのアクションバトルだが、弱攻撃と強攻撃を組み合わせてコンボを
積み重ねていく、よくあるタイプのものだが、さすがはTri-Ace。
操作感の気持ち良さも去ることながら、エフェクトも派手で爽快感抜群。
操作もシンプルで取っ付きやすく、本当に良く考えられている。
アクションが苦手な人への救済なのだろう、ボタン一つで回復行動を
取ってくれるのも、個人的にとても好印象。
大人数での混戦になっても、目立った処理落ちもなくキビキビ動く。
ただ、たまに音が消えてしまうことがあるのは、やはり、
相当な無理を強いている弊害なのだろうか。それとも本体の問題?

マップは呆れるほど広大。オブジェクトの描きこみも凄まじく、
これぞ次世代RPG!を猛烈にアピールする内容になっている。
しかも驚くのは、これだけ広大なマップを用意していながら、
読み込みなどに待たされる時間が皆無に等しいということだ。
HDDなどの内蔵ストレージにソフトを落としているならまだしも、
そうではないのだから、呆れるほどの快速ロードである。
地形の読み込みによる処理落ちも、まるで感じさせない。

また、取れない位置にある宝箱も、ターゲットすれば自動で
取りに行ってくれるのは地味に便利。DSのRPGでも採用すべきだ。

---[ ダルいだけで面白味のない移動シーン ]---

ただ、あまりに広大なため道に迷いやすく、方向も見失いがち。
画面右上に簡易マップを表示してフォローしているのは良いのだが、
マップの暗部が開く範囲が狭いせいで、全体を把握しようと思うと、
かなり丁寧な雑巾がけが必要になってくるため、かなりダルい。
そのくせ、次のエリアへ行くための道程が分かりづらいなど、
マップのデザインも意地悪で、わざと迷いやすくしといて、
プレイ時間を稼ごうとしてんじゃないかと邪推したくなるほど。

さすがに空気を読んだのか、中盤からは複数パーティを設定することで、
NPCが目的地まで先行してくれるようなフォローもあるにはあるが、
それも一部に限られ、基本的には足を棒にして目的地を探す必要がある。
僕自身も道が分からず、したくもないマッピング作業を何度もやらされた。
フィールドも描きこみこそ凄いが、徘徊する魔物の数も疎らだし、
街や集落も数えるほどしかないため、スカスカで面白味に欠ける。
街中の施設も目印がないため分かりにくいなど、配慮が足りない。

それに輪を掛けて酷いのがダンジョン設計で、構造の単調さはもちろん、
無駄に広く探索に時間が掛かる。それは別に構わないのだが、
致命的なのはセーブポイントの少なさと設置箇所の意地悪さで、
散々ダンジョンを探索させといて、ボス直前にセーブできないなんてザラ。
挙句、ボスにやられたり、急なミッションにしくじってやり直しさせられるのはキツい。
酷いときは、ボス前のイベント中にフリーズして強制終了なんてのもあった。
ミッション失敗はともかく、フリーズとか理不尽すぎて言葉もない。
全滅やミッション失敗にしても、せめてリトライさせてくれ。

フルートを使った順路探しも曲者で、説明不足な上に目印も分かりにくく、
「さぁ探せ」と言わんばかりの放任ぶり。初見だとまず詰まるのでは?

これも、さすがに失敗と気づいたのか、Disc.2以降はフルートの用途が変化。
姿の見えない特殊な魔物を実体化させることが出来るようになるのだが、
これはこれで、単にプレイヤーが戦闘に参加できないだけで意味がない。
つか、ド派手なアクションバトルがAAA作品の持ち味なはずなのに、
こんな地味な要素入れて誰が喜ぶんだ。確かに曲は良いんだが、
それだけに、音楽を聴かせたくて無理に捻じ込んだような印象を受ける。

不意打ちシステムなんかも、非常に面白い要素ではあると思うのだが、
移動にやたら時間を食ってしまうため、積極的に狙おうという気になれず、
もったいない。せめて、もう少しテンポ良く遊ばせてくれれば、
そういうのを楽しもうという気持ちにもなるというものなんだが・・・。
意味不明のトラップも多く、何がしたいのか良く分からない。

---[ 致命的とも言えるほど足りないボリューム ]---

ゲーム中の会話も、ボイスを入れるつもりで作っていたらしい場面に
声が入っていないため、遊んでいて非常に気持ちが悪い。
しかも、字幕が勝手に流れていくので最後まで読めないことも多く、
何故こんなことになっているのか意味不明。容量の問題だろうけど、
入れられないなら、せめて字幕は自分で送れるようにしといてくれ。

ゲームのボリュームも短く、ディスク2枚組で約20時間程度。
この手のゲームで無駄に長いのは勘弁だが、これはさすがに短すぎ。
しかも、移動に費やされる時間が多いため、密度が薄く物足りない。
サブイベントも用意されてはいるが、それらを積極的にクリアしても、
30時間はかからないんじゃないかと思う。

そのせいか、ゲーム序盤から展開がやたら駆け足で、
RPGの基本であるバトルすら満足に遊ばせてもらえないまま、
様々なシチュエーションで色んなことをやらされる。
そのため、ゲームに慣れるどころの騒ぎではなく、ただただ戸惑うばかり。
要求されるアクションも、序盤からやらされるには難度が高く、
面白さより取っつきにくさが先に立ってしまい、非常に印象が悪い。
これじゃあ、序盤だけ遊んで投げ出す人が現れてもおかしくない。
事実、ゲームの下手糞な僕は、いきなり心が折れそうになった。

全体的に難易度は低めで、EASYなら全編ゴリ押しで何とかなるのだが、
ゲーム冒頭を含め、たまに挿入されるイベントが妙にシビアで、
中には、何をしていいか分からず焦っているうちにGAME OVERなんてのもあり、
練りこみ不足を強く感じる。つか、全体的に説明不足が過ぎる。

ボリューム不足を誤魔化すためか、細かくイベントが挿入されている。
なんとかプレイタイムを伸ばそうと必死になっているのは分かるが、
正直、いずれも後付け感は否めず、無理をしている様子が伺える。
特に、Disc.1後半の某イベントなんか、完全に思いつきだもん。
目の前にあんなデカい都があるのに、野宿する必要ないし・・・・。
意味があるのかないのか、何度もパーティ編成やらされるしね。

シナリオに関しては、短いなりに無難な仕上がり。
あまり凝った内容ではないので、過度な期待は禁物だが、
後半はそれなりに盛り上がるので、それなりに楽しめる。

---[ 練りこみ不足のシステム周り ]---

仲間と連携して様々なアクションが起こせるコレクトシステムも、
変に回りくどい。単純に"キャラチェンジ"のほうが分かりやすいし、
それが無理なら、「あれ撃って」とか具体的な命令を表示して、
それを実行させる程度のもので良かった。
恐らく、アーヤのTPSもどきがやりたかっただけなんだろう、
実際、彼女のコレクト以外は、ほとんど使いどころがない。

というか、なんで命令を必殺技の名前で指示するのか意味不明。
技名も直感的じゃないから、それが何をするコマンドなのか、
メニューを開いて確認する必要があり、はっきり言って面倒臭い。
そのくせ、なにを意識しているのか、メニュー画面を開いても、
普通のRPGのようにポーズがかからないので、落ち着いて操作できない。
メニューアイコンも数が多く、しかも英語表記なので非常に見にくい。
せめて、選択されたアイコンが日本語に変わるくらいの配慮は欲しい。
画面上部に表示される解説を睨みながらメニュー選択したの初めてだ。

買い物画面のレイアウトも酷く、久々に不便な買い物を強いられた。
これだけ沢山の仲間がいて、この仕様はちょっとご無体じゃないか?
仲間の数も無駄に多く、そのくせ同行者という位置づけでパーティに
組み込めないキャラがいるなど、なにがしたいのか全く分からない。
こんな扱いするくらいなら、最初からメンバー固定している方がマシだ。

文字も全体的にボケてて読みにくい。コンポジット出力じゃ不服か。

---[ うまく畳めずグチャグチャになった風呂敷 ]---

身も蓋もないことを言うようで恐縮だけど、こうなってくると、
シンプルに普通のアクションRPGとして遊ばせて欲しかったかな。
Disc.1終盤で視点固定のエリアがあるのだが、ぶっちゃけた話、
こっちのほうが遊びやすかったりするから困ったものだ。
確かに、フル3Dで描かれた世界は臨場感も抜群だし、仲間と一緒に
冒険をしている感覚が味わえるというのは贅沢なことではある。
が、やはり本作に関して言えば、それによって犠牲になっている部分が
圧倒的に多く、贅沢が仇になっているとしか思えない。

戦闘に関しては掛け値なしに気持ちいいので、この部分を集中的に
楽しませるようなデザインにして、コレクトとかフルートとか、
どうでも良いようなものは削ってしまうほうがスッキリして良い。
システムも妙に回りくどいし、説明不足も甚だしく遊びにくい。
いい加減、プレイヤーの好意に甘えたゲーム作りは卒業して、
もっとシンプルに、気持ちよく遊ばせることに心を砕くべき。

ボリューム不足も致命的で、それを水増しするための施策が、
ゲームデザインそのものに大きな歪みを生じさせている。
広げた風呂敷が大きすぎて畳み方が分からず、グチャグチャのまま
発売されたことが容易に想像できる内容で、ちょっと厳しい。
最初から畳める大きさの風呂敷を用意しとけばいいのに・・・・。

---[ 少し長くなったので結論をスパっと ]---

少々辛辣なレビューになってしまったが、ちゃんと遊べるゲーム。
豪華なのは結構だが、詰め込みすぎて面白さがボヤけてしまってる。
作品の魅力をしっかり見据え、引き立てるのがデザインの基本。
面白さを単一に絞る必要はないけど、無駄に乱立させてもうるさいだけ。
ゲームってのは、シンプルなくらいが丁度いいと改めて感じる作品。

ボリュームに関しては、容量の問題が大いに影響しているのが、
素人目にも手に取るように分かる。RPGは容量の配分が難しい
ジャンルなだけに、今後もこういうゲームは出てくるだろうな。
それにしても、携帯機でも据置機でも容量に悩まされるのか。
RPGというのも因果なジャンルよのぅ・・・・。
そういう意味では、PS3で出すほうが悩みは少なくていいのかもね。

つまらないゲームではないので、中古か廉価版を待つが吉。

娯楽性:★★★☆☆ 戦闘は相変わらず面白い
快適性:★★☆☆☆ ストレス溜まる
総合点:★★★★★ [ 5点 ]

▼お世話になった攻略サイト
[ GAYM Games:インフィニット アンディスカバリー ]

(KAY.Sak)