彼を返して | 地球一蹴、ちゃりんこ世界一周の旅 ー Rio Cycling Around The Earth

地球一蹴、ちゃりんこ世界一周の旅 ー Rio Cycling Around The Earth

2007年3月9日より 約9年をかけて157ヶ国155,502kmを走る。
I am traveling around the world, over 157 countries on a bicycle from 2007 to 2016.

★☆★Around The World・・・2,264days                ★☆★
★☆★123countries   ・・・in Calgary,Canada         ★☆★
★☆★Distance      ・・・ 3,011km(Total Distance122,251km) ★☆★




My close friend past away...

I am sunk in grief.




「まただ・・・。やっぱり治ってないや・・・。」

全身が泥になったように、ゆっくりゆっくりまどろむ。

「過眠症」

正式な病名がついていると知ったのは、随分と随分と経ったときだった。


 14歳の梅雨は今まで生きてきて一番重い雨だった。

その頃読みあさった本は、「多重人格者」や「猟奇的殺人者」、「サイコパス」といった、この年頃の子が通る道を僕も歩いていた。

多感な時期の当時の僕は、深い螺旋階段を降りていってしまった。

部屋の隅に薄っぺらい影みたいなのに、存在感だけは驚異なものを住まわせてしまった。

あいつはじっとこっちを見ていて、ときおり話しかけてくる。

不気味な奴だった。

中学、高校と、あいつのせいで何度か病院に通った。

大人になるにつれ、あいつの存在が気にならなくなってきた。

決定的だったのは、「ビリーミリガン」ではなく、「アルジャーノ」に助けられたこと。

半年に1回ほどやってくるあいつは、1年に1回、2年に1回と存在感も薄くなっていった。

社会人になった頃、完全にあいつが出ていったと思ったとき、またあいつはやってきた。

決まって自分じゃ手に負えない何かがあったときだ。

自分の意志を全く無視して僕は泥のように眠ってしまう。

現実逃避の最たるものだろう。

実はあいつは僕を苦しめる存在ではなかった。

あいつは僕が創り出したスケープゴートだったんだ。

全部あいつに背負わせていたんだ。

あいつは僕の救世主だったんだ。

そしてあいつは今、僕を救いにまたやってきた・・・。

 
 昨日、僕の大切な友人が亡くなった。

いつも僕の前を照らしてくれるような存在だった。

自転車取材中に車が後ろから突っ込んできたらしい。

その場で昏倒。

その知らせを聞いた僕は、日本人らしく太陽信仰に頼った。

予定を変更して、その辺りで一番大きな山に登って、彼の命を救ってくれと神に懇願した。

そこに神はいなかった・・・。

立ち上げた会社もますます機動にのり、これからさらに躍進するところだった。

まだ若い彼は幼い子を残して逝ってしまった。

2日前まで彼とやり取りしたメールが、奇妙なものに思えて仕方がない。

信じられない。

現実感が全くない。

帰国も考えた。

再発した病魔が僕を襲う。

眠りに落ちるくせに、悪夢ばかりで夢と現実の区別もつかないくらいうなされる。

こんな時こそ自転車に乗って頭をスッキリさせたい。

彼のことを思いながらの黙走(想)。

だが、それすら出来ない。

「自転車に乗るのが怖い・・・。」

彼の命を簡単に奪っていった車が怖い。

これまで紙一重のところで生きてきたんだと思うと、今更になって震えがきた。

ハンドルがうまく握れない。

背後が怖い。

眠い。

眠い・・・。

今、こうして文章にすることで気持ちを落ち着かせようと努力してる。

客観的に自分のことを捉えることで、自分に「大丈夫」だと言い聞かせるために。

立ち止まることに怯えている。

あてもなく歩くことなんてもうできないよ・・・。





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