★☆★Around The World・・・1,298days ★☆★
★☆★43countries- in Wien,Austria ★☆★
★☆★Distance・・・525km(Total Distance81,260km) ★☆★

「こんなときに泣くやつあるか~・・・」
これから世界一の大都市ニューヨークに行くやつに、泣いてる余裕なんてないんだ。
だから泣くなよ!
言えなかったなー・・・。
こっちも涙こらえるのでいっぱいだったからなー・・・。

出会いは4ヵ月前のトルコはイスタンブールだった。
イスタンブールの名物日本人宿「Tree of life」だった。
ファーストインプレッションは、「今風のオシャレな好青年」だった。
ただ付け加えれば、「どこにでもいる~」好青年かな。
ハンサムな顔立ちに合ったジェントルでスマートな彼。
「世間に渡る鬼はなし」で育ってきたに違いない。
それはゲストハウスでの彼を見れば、そう思わずにはいられなかった。
誰しもが彼に好印象。
女性陣にはハンサムな顔立ちの上に女性っぽさが受けていた。
いわゆる「草食系」か、「乙メン」なのだろう。
旅人には珍しく襟付きシャツとジャケットを着ていて、外では日傘をさしていた。
男性陣で彼を嫌いになるとすれば、イケメン嫌いだろう。
低姿勢で物腰の柔らかさと、バスケで学んだ上下関係と礼節をわきまえていれば、普通の男は彼を嫌いになる理由はいないだろう。
その立ち振る舞いは、海外旅が初めてという以上に、親元を離れたのが初めてというところからきていたと思う。
もちろんボクは彼のことを気にいった。
というか、すぐに受け入れた。
特に好きだったのが、旅人になると忘れてしまう礼節。
社交辞令と言ってしまうと、陳腐なものになってしまうが、意外にこれが大切だと思う。
旅をすればするほど日本人らしさを失い、すれていってしまう。
半年旅した彼だったが、全くすれていない感じがした。
ボクと彼の決定的な違いを言えば、この「純潔さ」だと思う。
すでにボクは旅を3年10ヵ月している。
ボクが取り返そうにも取り返せないもの。
「若さ」にも似たものだ。
彼の良さ、純潔さは素直さだ。
スポンジのように何でも吸収したい盛り。
トルコでトレッキングツアーを企画した時、彼は迷いはあっても答えは決まっていたかのように参加してくれた。
その旅で彼に感じたもの。
「若い時のボクにどこか似ている」
ボクは彼のようなハンサムにはなりたくてもなれないし、キャラが違うし、ガラじゃない。
でも彼の中にボクと同じ、「ストイックでハングリー」な部分を見た。
だから彼を自転車旅に誘ってみた。
彼の脳が口の筋肉を動かし、声帯を震わすより前に、すでにキラキラな目が返事をしていた。
「やりますっ!」
かくして彼とのショートツーリングが始まった。
出発はイタリアのミラノ。
冬のスイスアルプスを越え、リヒテンシュタイン、ドイツの森を抜け、オーストリアはウィーンまで1200kmを16日間で走行した。
極感の寒さに耐えてのキャンプ。
スイスアルプスで失った膝のバネ。
セミプロレベルと自己陶酔するボクのスピードに根性だけでついてきたために、ボロボロになった体。
それでも魂だけは失なわなかった。
「電車を使おう」という提案をガンとして受け入れなかった。
ボクは何度も判断に迷った。
ボクの経験上、これ以上走れば彼は旅を中断せざるえなくなる。
でもボクは彼を止めることはできなかった。
あんなにキレイな目をしてたら、ナポレオンを撤退させた冬将軍だって、彼を止められない。
「わ~キャプテン、ボクね、こんな経験したことないっすよ~。旅して良かった。青春ってこの歳になっても出来るとは思わなかったな~。あ~生きててほんと良かった。」
ふとボクは昔会った、初心者サイクリスト「雨島」を思い出した。
「ね~キャプ、ボクらすごいことしてますね!一体、世界中のどれくらいの人が生きるってどんなに素晴らしいかって気づいているんでしょうね~☆ボク、人生で今が一番楽しいです♪」
ボクは失った自分を彼の中に見た。
もっともっと彼を見たくなった。
ボクの失った自分をもっと見たくなった。
「満身創痍」、ゴールしたときの彼と自転車の相棒「トニー」にもっとも相応しい言葉だった。
膝は完全に崩壊して、ペダルを回すたびに激痛が走る。
自転車は泥除けが飛び、前輪のディスクブレーキが飛んだ。
ゴール地点の500mは、押しがけという、なんとも彼らしいものだったと思う。
まさに精神力だけで辿り着いた。
サイクリングトリップのダメージは思った以上に大きかった。
彼はいたるところに支障をきたしていた。
完治するまでに1カ月以上を要した。
ボクの友達のフッキーの家に泊めてもらって、かくして奇妙な3人での生活が始まった。
赤の他人とここまで長く過ごしたことはなかった。
彼とは旅立ちまでの計90日間を共に過ごした。
最初は旅人同士、サイクリスト同志、気があった。
でも所詮は赤の他人だ。
幼少期を一緒に過ごした竹馬の友でなければ、付け焼刃はすぐに剥がれる。
お互いがギクシャクしだした。
特にボクは彼に嫉妬していた。
自分に似ていれば似ているほど。
彼はボクが失ったものをたくさん持っていた。
「純粋さ」、それと「スポンジのような吸収力」。
彼の顔は出会ったときとは別人のように精悍な顔つきになっていたから。
そんなささくれだった日々も別れの日が決まったあたりから氷解した。
いまだにうまく言葉に出来ないのだが、彼を旅のベストパートナーと認めたときから、心が変わった。
そこからは氷解した氷河が滝となって海へと流れ出すのは早かった。
こころは大海原だ。
このわだかまりがあったから、よりボクらの関係は強固なものになった。
出発前夜、彼は2カ月ぶりに一人になる。
ソワソワして声がかすっていた。
何度も「しっかりしろっ!落ち着け!」
と言ってあげたが、彼のソワソワ感はおさまらない。
それどころか同じ旅人同志の持つ臭いがボクにも届いた。
ボクも出発したくてウズウズしてきた。
ボクの場合は武者震いだったが、お互いがソワソワウズウズがおさまらない。
そこで二人でラストナイトに見納めウィーンの街を夜歩きした。
気温-15℃の凛とした空気がボクらの心と頭を冷やしてくれた。

夜空にはこれでもかというくらい美しい満月。
これまでの彼との想い出がトリップしてきた。
それが、お見送りのバス亭で弾けた。

「おーキャプテン、おーキャプテン!」
たっくんがボクのことを「キャップっ」って呼んでくれるの好きだったよ。
ボクの好きな映画「今を生きる」のキーティングに憧れていたから。
今のボクはほんの少しだけ、キーティングに近づけたのかな。
「たっくん、キャプテンとして人前で泣くわけにはいかないんだ~!!!でも泣いちゃったよ。たっくんの涙は素晴らしかった。キミのように心のままに行動できることが今でも羨ましい。キャプから言えることとしたら、たっくんのその「ピュア」な心をいつまでも大切にして欲しい。いくつになっても心のままに。キミはラストナイトの満月のように輝いている。これからももっともっと夢に煌めけ!!!同じ空の下、どこまで行ってもボクらは繋がっている。ずっとずっと応援してるから。次会った時、たっくんの成長を楽しみにしてるから。また会おう、同じ地球の上のどこかで☆ボクのベストパートナーよ☆彡」
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