さて、シリーズ国語指導の基礎。今回は第3回(最終回)です。前回、前々回の記事を読んでいない方は、まずこれらを読むことをオススメします。
第1回:指示語の意味を捉えよう
第2回:接続詞を利用して、文章構造を理解しよう
第3回の今回は、「択一問題の答えを論理的に導こう」というテーマでお届けします。
択一問題の答えを論理的に導こう
1.択一問題はあてずっぽうで解く問題ではない
択一問題では、何となく読んで答えの記号を書けば、まぐれ当たりで得点ができることがあります。しかし、このような場当たり的で直感に頼った答え方では、ある一定のレベルを超えることはできません。そこで、まず忘れて欲しくないのは、「国語は論理の教科」だということです。論理の教科と言うことは、文章構造を理解しながら正しく読めさえすれば、論理的に答えを必ず導くことができます。択一問題を勘で解くのは最終手段です。はじめは、必ず論理的に解くことを心がけてください
2.設問を正確に読む
本文を読むことはもちろん大切ですが、本文をせっかく丁寧に読んだのに、設問を適当に読んだため答えを間違えるということがよくあります。典型例としては、「最も適当でないものを選べ」と聞かれているのに、「最も適当なものを選べ」と読み間違えることがあります。このようなことを回避するために、次のポイントをふまえて設問の該当箇所に傍線をひかせてください。
(1) 「正しいもの(適当なもの)」を選ぶのか、それとも「まちがっているもの(不適当なもの)」を選ぶのかを確認する
(2) 「いくつ選ぶのか」を確認する。「最も」とあれば1つ。「3つ選びなさい」なら3つ、2つでも×、4つでも×です。「あるだけ」と言われれば、基本的には複数個(いやらしい出題者は1つってことも)。
3.設問を論理的に選択する
さて、いよいよ本題です。上記のポイントも気をつけながら設問を論理的に選択していきましょう。ここでは、実例があった方が分かりやすいので、例題を使って説明していきます。例題はちょっと長いので、頑張って読んでくださいね。
秋の体育祭と文化祭が終わると、急に空が高くなる。空気の匂いが変わる。香ばしさが風にかすかに混じり、住宅地の中を抜けて行くだけなのに、みのりの季節が近づいているのがわかる。ようやく穏やかな日々が戻ってくる。体育祭や文化祭の賑々しさが私は苦手だ。今さら走ったり、踊ったり、新鮮味のない模擬店を出したり、そういうことをさせられるのが億劫でたまらない。終わってほっとした。退屈な日常でも、喧噪よりはいい。
それなのに、まただ。ホームルームの最後に、そろそろ合唱コンクールの準備を、と佐々木さんがいったのだった。何がそろそろだ。文化祭が終わったばかりじゃないの。ひとつ終えるとまたひとつ、秋は行事のペースが速くなるらしい。
「まだ少し先のことですけど、早めに準備して、いい結果を残せるといいなと思っています。」
クラス委員の佐々木さんはそう締めくくった。合唱コンクールなんて興味もないけれど、それでも、いい結果を残せるといい、というのはちょっと違うだろうと思ってしまう。結果を残すためにうたうんじゃない。結果の前に原因がある。あるいは、課程。そっちのほうが大事なんじゃないのか。
--ついそんなことをを考えてしまってから、関係ないなと思う。私にはどうでもいいことだ。そしてたぶん、クラスのみんなにとっても。
毎年、秋の終わりにクラス対抗の校内合唱コンクールがある。仲間と力を合わせ、声を合わせよう。そう書かれたポスターを去年も見ている。力を合わせるために声を合わせるのか、声を合わせるために力を合わせるのか。どちらが正しいというものでもないだろうけど、私はポスターの前で立ちどまった。クラスの団結が目的で、合唱は手段になってしまっている。歌を利用していることへの軽い憤りを、どうでもいいじゃないそんなこと、と声に出してかき消した。
(宮下奈都「よろこびの歌」による)
<設問>
本文中に、歌を利用していることへの軽い憤りとあるが、なぜ私は憤りを感じたのか。その理由として最も適当なものを、次のアからエまでの中から選び、記号で答えよ。
ア.合唱コンクールのポスターの言葉の裏側に、生徒たちを望ましい方向へ誘導しようとするひそかな意図を感じたから。
イ.歌うことそのものを大切にしたいと心のどこかで感じており、歌を何かの役立てようという発想に反発を覚えたから。
ウ.合唱コンクールのスローガンが、それほど盛り上がっていない学校行事の実態とかけ離れていて不愉快に思ったから。
エ.気持ちを合わせて歌うことができれば、自然にクラスの全員が仲良くなるという考え方自体に賛成できなかったから。
では、設問一つ一つを見ていきましょう。設問を見ていくときのポイントは、以下の通りです。
(1) 読点(、)に着目して、各設問を要素分解します。読点ごとに書かれていることが直接書いてあるかそう解釈できるのなら○、正しいかどうかが判断できないなら△、明らかに間違っていたら×をつけます。
(2) 「よくわからないなぁ」とおもったら、取りあえず△をつけます
(3) 「明らかに違う」も「絶対に書いていない」と思ったら×をつけます
(4) 「すべて」「全部」など全肯定や全否定は×であることが多いです
あ、そうそう、解説を見る前に、上記方法を活用して、自力で解答を選んでくださいね
選択肢アについて、全文、文意に即している気がしますが、断言するほど自信はないので、ここでは△としておきます。選択肢イについて、「歌うことそのものを大切にしたいと心のどこかで感じている」とは読み取れないので×、「反発を覚える」ほどではないので、こちらも×。選択肢ウについて、「スローガンが学校の実態とかけ離れて」はいるんだろうけど、それに対して「不愉快」と感じているとは読み取れないので、×。選択肢エについて、「気持ちを合わせて歌うことができれば、自然にクラスが仲良くなる」という考え方に対して、肯定も否定もしていないので×。選択肢イ~エは、ふさわしくないので、△にしておいた選択肢アが正解となります。
自力で答えた解答は合っていましたでしょうか?このようにして、選択肢に○、△、×をつけることで、選択問題を論理的に解くことができるようになります。選択肢の横に記号をつけていきましょう。「最も適当なもの」と言われていて、一つでも選択肢に×が付けば、その選択肢は正解ではなくなりますこうやって論理的に解答を導いてください
是非、先生もいろんな問題で練習してみてください。高校時代に国語が苦手と思っていた方でも、こういう風に考えて取り組んでみると意外に解けることが実感できると思います。実際、私がそうでした
3回にわたってお送りした国語の指導法基礎、いかがでしたか?一つでも指導の役に立つと思ったら、是非取り入れて、次回指導より実践してみてください