最高裁が違憲と判断した法律の改正に真正面から反対する自民党の国会議員が相当数いる、というのは実に困った事態である。
自民党の良識派とされる国会議員の発言力が自民党の中で格段に弱くなっているという証拠である。
私が国会議員でないことがつくづく悔やまれてならないのは、こういう時に身体を張って反対派の自民党の国会議員を説得に回る良識派の自民党の国会議員の数が総体的に少なくなっており、またその力が格段に弱くなっていることだ。
加藤紘一氏や与謝野馨氏などの自民党きっての政策通や古賀誠氏などの実力者が控えていれば、おそらくこんな見苦しい状態にはならなかったと思う。
現在の自民党の弱点は、絶対安定多数議席を占めながら国民の中庸的な意見を反映するようなバランスのいい議員構成になっていないことだ。
声の大きな、伝統的家族観の持ち主である一部の国会議員の意見で自民党の大事な政策が左右されるようになると、出来上がった法案は国民の大多数の期待とはかけ離れたものになっていく。
自民党は、難しいところに来ているようである。
自民党は最高裁の違憲判決も無視するゴリゴリの守旧派が支配する政党だという印象が出始めている。
自民党から良識派、リベラル派を排除してしまえば自民党はただの右翼政党になってしまい、国民の支持を失う。
最後は官邸が出てきてほどほどの調整をするだろうとは思っているが、かなり印象は悪い。
丁度2か月前に書いた記事があるので、ここに再掲して改めて関係者の注意を促しておきたい。
「最高裁の違憲判決が確定した場合の違憲とされた法律の是正方法を考える視点
早川 忠孝
立法は誰が行うのか、という基本に関わることである。
非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民放の規定が憲法14条に違反するという最高裁大法廷の判決が今日言い渡された。
社会情勢の変化や国民の意識の変化を汲み取った極めて妥当な判決だと思う。
この最高裁の判決がどこまでの射程距離を持つのか、どこまで遡及するのか等については判決文を読んでこれから検討しなければならないが、いずれにしても違憲と判断された民法の規定は速やかに改正される必要がある。
私は最高裁が特定の法律を違憲だと裁定したら速やかに国会が違憲の法律の是正作業を始めるものだと思っていたが、国籍法の改正のときに実に不思議な経験をした。
法務省が最高裁によって違憲とされた国籍法の改正法案を立案し、内閣が国籍法の改正法案を国会に提出しないと実際には国籍法の改正作業が進まないのである。
あれ、国権の最高機関とされている国会は自ら違憲の法律の改正作業をしないで、行政府である法務省の担当者が改正案を提出するまで待っているんだ。
国会に立法権があると思っていたら、実際は行政府、内閣に実質的な立法権があるという運用になっているんだ。
ちょっとおかしくないかな。
そう、思ったものだ。
もっとも、国会に本当の法律案策定能力を持った国会議員がどの程度いるか疑問だったので、従来の慣行に従って国籍法の改正提案を法務当局がすることに異議を述べなかったが、いつまでもこのままでいいとは思えない。
やはり最高裁が違憲立法審査権を行使して特定の法律を違憲と判断したのなら、国会で速やかに違憲の法律の改正作業を始めるのが、筋であろう。
さて、どうするか。
衆参合同の特別委員会を発足させ、有識者を専門委員に委嘱する等して国会が自ら違憲の法律の改正作業を速やかに行えるようにするのがいい。
国会には、改善を要することが実は沢山ある。
そのことに気が付いている人はまだ少ないようだが、是非国会議員の皆さんはこうしたことにも関心を持っていただきたい。」