島田紳助氏の突然の芸能界引退劇について多くの方が関心を持っておられることはいいことだと思う。反社会的勢力との付き合い方はどうあるべきか、島田氏はどこで間違えたのか、どうすればよかったのか、などのことを学ぶいい機会にしたいものだと思う。
私は昨日のブログで島田氏の出処進退の潔さを評価したが、今朝のテレビ局は芸能界を引退した島田氏にわざわざ追い討ちをかけるようなことをやっている。
水に落ちた犬に石をぶつけるような真似は、止めるべきである。
些細な記憶違いや失念程度のことを嘘を吐いた、嘘を吐いたなどと囃し立てるものではない。
島田氏は所属事務所からマネージメント契約を打ち切られるような状況になったので、自分の判断の誤りを認めて潔く芸能界引退を決めたのである。
「セーフだと思っていたら、アウトだった。」という島田氏のコメントにすべてが現れている。
普通の芸能人がこの程度の付き合いだったら問題にならないはず、と思い込んできたことが、実は大問題で許されないことだった、という驚きがこの言葉の中に含まれている。
大丈夫、大丈夫、と言ってきたことが実は大丈夫ではなかったということだ。
所属事務所の弁護士らが何ヶ月もかけて事実調査を進めていたことが分かってきた。
その上での結論が、マネジメント契約解除である。
当初はセーフだと思っていたことが第三者からアウトと判定されたということが分かる。
私のブログの読者の方から、島田氏が自分の抱えている解決できないトラブルを暴力団に解決してもらわざるを得なかったことに問題の根本がある、島田氏の今回の事件は暴力団のいい宣伝材料になるのではないか、というコメントが寄せられた。
そういう風にこの一件を捉える人がいる、ということが大問題である。
そういう風に間違った方向に考えを進める人が外にもおられるかも知れないで、この一文を書いておく。
相談する相手を間違えると大変なことになることがある、ということだ。
島田氏には当時適当な相談相手がいなかったのかも知れない。
自分が本当に困ったときに、本当に適切な助言が出来る人が傍にいなかったということだ。
日ごろから気心の知れている仲間には何でも相談するが、その仲間の人が間違った解決方法しか知らない人だったら、結局間違った解決方法を選んでしまう。
元ボクシングの世界チャンピオンだった相談相手は、暴力団との親和性が高かったようだ。
当時自らが暴力団の構成員になっていたかどうかは分からないが、右翼と称される相手との揉め事の解決を暴力団の幹部に頼んでしまう。
暴力団と付き合うな、暴力団に金を渡すな、暴力団の暴力に屈するな、とよく言われるが、もう一つ大事なことがある。
暴力団を利用するな、ということだ。
暴力団を利用した人は最後は暴力団にしゃぶり尽くされる、というのが私のこれまでの弁護士生活から得た一つの知見である。
暴力団を利用して自分の恥部を暴力団に握られた人は、じわじわと暴力団の食い物になっていく。
財産も地位も名誉もない人にはこういうことは関係ないことが多いが、暴力団を利用しようとする人は大体が財産や地位や名誉を何としても守りたい人。
つい暴力団を利用して陥穽に嵌ってしまう。
それでは、どうすればよかったのか。
この点についての解がないと、多くの人は間違った解決に走ってしまうだろう。
私は弁護士になってまもなく東京弁護士会の法律扶助委員会や民事介入暴力対策委員会の副委員長などを務め、弁護士会の中ではこの種の事件に取り組んできたハシリの弁護士の一人だが、民事介入暴力と戦うことを厭わない強い弁護士に相談することである。
相手が右翼だろうが暴力団だろうが、不法な威嚇攻撃を繰り返す相手は法廷に引き出すに限る。
まずは、相手の街宣活動を停止させる仮処分をかけることである。
仮処分命令が出されると警察の取締りが容易になる。
法廷に引き出されることになると、相手がどんな非合法集団、反社会的集団であっても弁護士を依頼せざるを得なくなる。
相手方に節度ある行動をさせるために、あえて相手が弁護士をつけざるを得なくなるような状況を作る、というのがこの種の事件の最上の対処方法である。
こういうことが分かっている人は少ない。
分からない人たちが分からないで闇夜でワイワイ騒ぎ、結果的に道を踏み外してしまう。
島田事件は是非、そういう目で見ていただきたい。
同じような間違いをしないように、是非多くの教訓をこの事件から学んでいただきたい。
私のこの話は聞いて損はない。
政治家は嘘を吐くが、弁護士は嘘を吐かない・・・。
まあ、必ずしもそうとばかりは言えないが。