臓器移植法改正による臓器移植の親族間優先提供制度が医療の現場ではこんな風に悪用されることがある、ということを端的に教えるようなおぞましい事件が明るみに出た。
私たちの知らないところで臓器売買が行われていた、ということである。
かつてサラ金に多額の借財がある多重債務者のところに取り立てに行った消費者金融会社の社員が、払えないなら腎臓を売れ、などと暴言を吐いたという事件が大きな社会問題として取り上げられたことがあった。
まさか、と思っていたが、そんなとんでもないやり取りが通用するような世界が既に当時あったという証拠である。
今回の事件は、もっと根が深いようである。
臓器売買が既にアンダーグラウンドでは立派なビジネスとして成り立っていると一部のマスコミは報道している。
腎臓移植待機中の医師が腎臓移植の対価として現実に1000万円を暴力団関係者に支払った、といううニュースには驚いた。
暴力団関係者がさらに1000万円の支払いを要求したため破談となり、結局その暴力団関係者からの腎臓移植は行われなかったが、当該医師は破談になったその直後に他の若い男性との間に養子縁組を行い腎臓移植を受けていたというから、またまたビックリである。
何か蛇の道はヘビみたいな話である。
非合法の世界では、お金になることなら何でもやる。
法の抜け穴を探し出して、何でも商売にしてしまう。
親族間の臓器の優先提供を認めると、こんな風に養子縁組が利用されてしまうということだ。
この問題の背景には様々な問題がありそうだ。
捜査当局による徹底的な真相解明を求めたい。
(参考記事)
破談直後、別に養子縁組=逮捕の院長、腎移植受ける―宇和島徳洲会病院が会見
時事通信 6月23日(木)23時0分配信
東京都江戸川区のクリニック院長堀内利信容疑者(55)による臓器売買事件で、同容疑者は、指定暴力団住吉会系暴力団組員の滝野和久容疑者(50)らとの腎臓売買が破談となった直後、別に20代男性と養子縁組し、この男性からの提供により、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で生体腎移植手術を受けていた。
徳洲会の能宗克行専務理事が23日夜、同病院で開いた会見で手術の経緯を明らかにし、「(臓器提供で)金銭の支払いがないとの同意書もあった。移植と養子縁組は関係なく、追及のしようがなかった」と語った。
能宗専務理事によると、2010年6月初め、関東にある徳洲会系の病院から、「慢性腎不全で人工透析中」との堀内容疑者を紹介され、同中旬に受診した。
しかし、堀内容疑者がドナーの20代男性と養子縁組したのは、同下旬だった。このため、病院は翌7月22、23両日に倫理委員会を開催。堀内容疑者は「男性とは5年前に知り合い、かねて養子にしたいと思っていた」と説明し、金銭のやりとりがないとの同意書も提出されたことなどから、移植手術が承認されたという。
手術は万波誠医師が執刀し、同29日に行われた。
堀内容疑者の移植手術は当初、同年6月に予定されながら、滝野容疑者側と金銭トラブルになり、同5月に破談になっていたが、同専務理事は「6月の手術予定は聞いていなかった」とした。
同専務理事は「養子がドナーとなる移植手術はあっても年1回程度」とし、「万波医師は手を差し伸べただけで、最善を尽くした」と話した。