保坂展人氏がいない国会で児童ポルノ所持処罰法を審議することに反対 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

私は、基本的に構成要件が甘い処罰法の制定には批判的な立場を取ってきた。
特に表現の自由や報道の自由を制約するような法律の制定には、法律実務家の立場から異議を述べてきたつもりだ。

もっとも、大抵の法律実務家は、法律の運用の段階ではじめて法律を勉強することが多く、立法時には直接の立法に携わる国会議員や所管の官庁の担当者と比較して問題の所在に気がつかないことが多い。
これが現実である。

事件になってから、はじめて処罰法の構成要件が曖昧だということに気がつく。
その道の専門家が問題提起するまでぼんやりしている。
ずいぶん迂闊なものである。
正直言うと、そういう意味では私も迂闊な人間の一人であった。

衆議院議員の当時、こういうことに実に敏感な国会議員がいることを知った。
社民党の保坂展人氏である。

独特の嗅覚があるのだろう、ずいぶん細かい問題を熱心に取上げていた。
法務委員会での質疑を聞きながら、私も勉強させてもらったものだ。

法律の条文がこんな風に解釈される虞があるのか、と思ったこともある。
々な場面で警察等と激しい攻防戦を戦ってこられたからのかも知れないが、取締法規の一人歩きを警戒されていた。

私は与党の国会議員であったから、内閣提出の法案の成立をバックアップするのが役目みたいなところがあり、原案作りの段階では色々意見は言えても、党内手続きを終えて閣議決定された法案について問題点の指摘をするようなことは基本的にしない。
もっぱら野党の国会議員が問題点の指摘をしてくれるのを待つ、という風があった。
野党の国会議員が本当の問題点を的確に指摘してくれると、内心拍手していたよいうなものである。

今、国会には保坂展人氏はいない。
保坂氏がいてくれるといいのに、と思うが、残念ながらいない。

今の民主党の国会議員は保坂氏ほどには勉強しておらず、感覚もずいぶん鈍磨している。
柴山昌彦衆議院議員や森雅子参議院議員を除くと、自民党にも法律の専門家、法律実務家が決定的に不足している。
この通常国会で児童ポルノ所持処罰法案が審議されるようだが、こういう状況でこの難しい法案が大した審議もされないで成立に到るのは心配である。

出来れば、児童ポルノの定義規定の見直しを行い、多義的な解釈の余地をなくすほどに構成要件の厳格化をやってもらいたい。
さらに、単純所持については、直ちに刑罰の対象にしないで、まずは罰則なしの禁止規定ぐらいにとどめてもらいたい。

私のブログの読者にはこの問題について造詣の深い方が多い。
皆さんの新たな意見表明の場にするために、今日この一文を書いておく。