水谷建設の元社長や幹部社員が大久保秘書に対して接待攻勢をかけていた事実は比較的容易に立証されると思う。
どんなに隠しても裏金の存在を示す物証はどこかにあるものである。
大抵の場合は見つけられないが、徹底的な税務調査があったり、捜査当局による捜索押収等の強制捜査があると税務当局や捜査当局の押収資料の中にそういう類の物証が混じり込んでいることがある。
会社の関係者は自分からは何も言わない。
動かぬ証拠を突きつけられて、渋々事実を認めるようになる。
ホワイトカラーの人たちは一度崩れたら脆い。
本当のことを供述するようになる。
接待の事実は、接待場所の料亭などを調べれば分かる。
会社の幹部が関わっていれば、会社の自動車の運行日誌や運転手の日記などを見れば大体幹部の行動が把握できるものだ。
現金の授受そのものを立証する客観的証拠はないのが普通だが、会社の裏帳簿や裏金管理用の銀行口座の入出金記録を見ればある程度のことが把握できる。
受け取った人がその受け取った金をどうしたかが問題になるが、克明に調べていくと不自然な金の動きが銀行口座に出てくる。
こうした一連の外形的事実の存在を証明すると、接待をしたとされている側の関係者の供述の信用性が一段と高まってくる。
よほど説得的な説明をしないと、接待を受けたといわれている人の側の弁明は通用しない。
さてこういう状況の中で、検察は冒頭陳述で、大久保秘書が水谷建設に1億円の献金を要求した、と述べている。
このことは重大である。
公共工事を巡る談合の存在や公共工事への政治家の介入を示唆するような重大な事実である。
さて、検察はこの極めて重要な事実をどのようにして立証するのだろうか。
すべては、水谷建設側の供述に係っている。
水谷建設側から、大久保秘書から1億円の要求がありましたという証言が出てくれば、これで立証を尽くしたことになる。
この証言を覆すことは殆ど不可能だ。
検察側の冒頭陳述で接待の事実や1億円の献金の話が詳しく述べられている、というのは、おそらくその趣旨の供述調書が既に検察官の手中にあるという証拠である。
冒頭陳述では、およそ検察官が法廷で立証できそうもないことは述べないものだからである。
かくして、当分の間は検察官側のペースで立証が続くことになる。
検察官が申請した証人が検察官の主張に反することを証言することは殆どない。
昨日、小沢氏に対して4億円の融資をしたという銀行の支店長などの証人尋問が行われたようだ。
この段階で石川被告に関する裁判の帰趨を占うのは尚早であるが、弁護側の反対尋問が成功したとか弁護側に有利な証言が飛び出した、という感触は伝わってこない。