小野さんという経済学者が菅総理のブレーンだそうだが、この人の話はあくまでマクロの話として理解しておいた方が良さそうだ。
政府の所得再分配機能を重視しすぎている。
増税した部分を全額、国民に還流するから、国家経済としてプラスマイナスゼロ。
国民に還流させる方法として、いわゆる無駄な事業には支出しないで、雇用を増やし、国民の所得を増やす事業に支出するから、経済が成長する。
そういう論理だと思う。
これは基本的に計画経済、社会主義経済の路線ではなかろうか。
政府というものに対しての無条件の信頼を前提としており、大きな政府に繋がり易い。
経済成長と両立させる、と言いながら、現実には政府の財源不足を補うためだけの増税に終わってしまう可能性が高い。
政府が増税路線に転換するための単なる説明理論の一つでしかないように見える。
小野理論を実際に適用するときに問題となるのは、まず各年度の財政支出の財源不足分をどうやって補うのか、という具体論。
財源の不足分はすべて赤字国債を増発して賄い、一方増税分はすべて雇用創出対策費に充当する、という理屈になると、その雇用創出対策費の支出がどの程度国民の所得を増大させ、かつ、税金の増収にどの程度役に立つのか、を計算する必要がある。
国の赤字体質の歳出構造に手を付けないで、増税分はすべて雇用創出対策事業に充当する、などと言われても、そんなこと、財務省として本当に出来るの?ということになる。
何か危うい財政学の講義を聴いているような気がしてならない。
私は、一時的には増税が必要であり、所得税の累進税率の見直しもいずれはしていかなければならないが、増税で経済成長が出来る、といった説明はしない方がいい、と考えている。
成長戦略を徹底的に実施し、経済成長を実現して国民の所得を増やす。
そのための具体的な目標とスケジュールを明確化し、そのための財源をどのようにして確保するかの知恵を絞る。
財政再建は暫し棚上げしても、まず経済成長を実現するための国家戦略を確定し、そのために必要であれば増税を国民にお願いする。
この方が正直ではないかと思っている。
まずは、デフレ経済を脱却することから始める。
不動産の価値を上げる方策を実施する。
企業や個人の投資マインドを呼び起こすような魅力ある国家戦略を作り上げる。
若者の夢を育てるような、そういう活力に溢れた国づくりを目指す。
大事なことは、そういう国づくりを政府が主体として担うのではなく、国民が、すなわち民間企業や個人が担うようにする、ということである。
政府は小さな政府でなければならない、というのが、私の基本的な考えである。
小野理論は、どうも私にはなじめない。