大相撲の野球賭博汚染は、根が深そうだ。
ほんの遊び心で野球賭博に手を染めてしまった何人かの力士を血祭りに挙げて、その背後に巣食っている巨悪を見逃してしまう、などということのないように、くれぐれもお願いしておきたい。
日本相撲協会が今回、弁護士を中心とする調査チームを立ち上げたのは正解である。
これまではどちらかと言うと検察官OB中心でこの種のチームを構成していたと思うが、何も検察官や裁判官の出身者だけが公益の代表者ではない。
事実関係の調査は弁護士の主要な職務の一つであり、中堅若手の弁護士チームをこういう場面で活用してもらうのは、ありがたいことだ。
7月4日までに調査を終え、7月4日の臨時理事会で処分を決める、ということであるが、関与力士の名前の公表はくれぐれも慎重に願いたい。
今の状況で名前を公表する、というのは、名前を明らかにされた一人ひとりの力士をマスコミの餌食にしてしまう、ということである。
ヤクザ、暴力団との付き合いをいわば公然と行っていた一部の幹部の責任を曖昧なままにして、若い力士の力士生命を奪うようなことはしてはならない。
調査チームの調査も多分本人からの事情聴取が主で、事実の裏付けとなる客観的証拠の入手は多分出来ないはずだ。
本人が白を切り続けると、強制捜査力が無い弁護士の調査チームでは白黒を付けることが難しくなる。
賭博罪等の犯罪行為を立証するための調査なら、ここは強制捜査権限がある警察の仕事であり、警察が捜査をしている最中に弁護士チームがすべての調査を終えることなどはおよそ不可能である。
中途半端な調査結果は、公表すべきではない。
勿論、世間の批判は相撲協会に集中するであろう。
それでも理事会としては、警察の捜査と処分が終わるまでは、理事会の責任で氏名の公表はしない、と言うべきである。
その一切の責任は、理事長はじめ相撲協会の役員全員が負うべきである。
理事全員の退任、名古屋場所の休場は、当然覚悟すべきである。
この際、大相撲の膿を徹底的に出し切ることが大事で、そのための新たな体制をどうやって作るか、を人任せにせず、相撲協会が今のうちから検討することが大事である。
何事も先手必勝。
人に言われてやるのでは、遅い。
それとも大相撲では、待った、が許されるとでも思っているのだろうか。