しかめっ面をしていた中年の男性が破顔一笑。
地下鉄車両の私の前の席に二人の幼児を連れた女性が乗り込んだ。
その女性の母親と思しき女性が一人の手を引き、その女性は負ぶさっていた幼児を降ろし、前に抱きかかえた。
お祖母ちゃんに手を引かれていた子は、お祖母ちゃんの膝で早速、熟睡状態。
母親に抱きかかえられた幼児は、目を覚まし、母親のブラウスをたくし上げようとする。
今度は、隣のお祖母ちゃんに手を伸ばす。
まだ眠そうだ。
そして、今度は、右隣の中年の男性に手を伸ばす。
ネクタイにでも触ろうとしているのか。
如何にも謹厳実直そうな中年男性の様子が突然変わった。
ベロベロ・バー。
その幼児に向かって出来る限りの愛想を振りまく。
イナイイナイ、バー。
その幸せそうな親子連れとその隣に座った中年男性の様子に、釘付けになってしまった。
私もつい、にっこり。
幼児は、周りの人を幸せにする天才である。