司法と行政と立法と世論が協働する社会をネットが造ろうとしている | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

日本でも「オバマ」が誕生する素地が出来たようだ。


国籍法改正問題についての国民の関心があっという間に拡がった。

昨日の法務委員会の質疑は法務行政全般についての一般質疑だったが、国籍法改正問題を取り上げた赤池

議員の質問は明らかにネット社会の世論に呼応したもの。


最高裁の違憲判決に行政が対応しないのでは、三権分立の理念に背くことになる。

しかし、行政が対応できるのは基本的に当該事件で違憲とされ、無効と判断された行政処分をやり直すだけ。

違憲状態を解消するための立法は、あくまで国権の最高機関である国会の役割。


国会で直ちに違憲状態を解消するための法律案を作り成立させればいいが、現在の国会には憲法審議委員会みたいな組織がなく、違憲とされた法律そのものを見直す恒常的な機関がない。

縦割りの行政が続いてきたため、国会の委員会はそれぞれの省庁に対応するような形になっている。

特定の法律を所管する省庁ごとに国会の委員会がある、と考えた方がいい。


違憲判決が出されると、その法律を所管する役所がまずその対応を考えなければならない。

既存の法制を前提にしながら、最高裁の違憲判決に沿うためにどう現行法を改正したらいいか、と、頭をひねる。

様々な制約がある中でいくつかの案を国会議員に提示する。


さあ、どれがいいか選んで下さい。

そんな感じである。

問題の所在がよく分からないと、うーん、どれが一番お薦めなの、と聞くことになる。


立法府に本当の立案能力が備わっていないと、行政府が提示した案がそのまま立法府に回ることになる。

議院内閣制の場合は、この場合の立法府は、事実上自民党である。

自民党の部会が立法府の機能を果たすことになる。


部会では、一定の時期までに党として何らかの結論を出さなければならない案件については集中的な審議をするため、プロジェクトチームや小委員会を立ち上げる。

結局、プロジェクトチームの座長や小委員会の委員長の識見や能力といったものが結論を左右する。


勿論こういった部会には自民党の国会議員であれば誰でも出席して自分の意見を述べることが許されているのだが、こういった立法のプロセスを知らない人は部会に出ない。

貴方任せ、になっている。


まあ、誰かが自分の代わりに仕事をしてくれている。

ご苦労様。

ありがとう。


そんなところか。


部会で発言すれば、必ずそれに対して何らかの応答が残るはずだが、与党である自民党の国会議員だけに与えられているこうした大事な役割を果たさないで、ずっと地元に張り付いている議員が多い。


君たちの仕事は次の選挙に当選すること。

部会に出て発言するのは、まだ早い。


小沢一郎氏は自民党の幹部時代に自民党の若い国会議員にそう言ったそうだ。


それを真に受けて党の部会に出ない人が多い中で、きちんと部会に出て自分の責任を果たそうとする人がいる。

そういう人が自民党の政策作りを支えている。

今回の国籍法法改正問題について大事な情報を国民に発信した立役者は、馬渡議員であり、そのヒントを提供したのは戸井田議員。

法務委員会でネット社会の世論を紹介したのが、赤池議員。

そして稲田議員が、自民党を代表して18日の法務委員会質疑に立つ。


誰に国会での質疑のチャンスを与えるかを決めるのは、法務委員会の理事。

赤池議員や稲田議員がどんな質問をするか分かった上で質疑者を決めているのだから、結局、法務委員会の理事や自民党の国対がこういった流れを決めた、ということだろう。

下村博文国対副委員長がこの問題に関心を持った、というのも大きい。


ネット世論が問題の所在を的確に示したからこそ、こういう動きに結実した。

いよいよ国会会が機能し始めた。


これでなければならない。

最終的な結論はともかく、懸念事項を曖昧にしたまま、私はそんなこと知りませんでした、では済まない。


新聞、テレビよりもネット世論の方が正確で、動きが迅速。

ネットの情報は玉石混淆で、精査を要するものが多く鵜呑みには出来ないが、それでも目利きが見れば、何が正しく何が誤解か見分けがつく。


ネットが立法を動かす。

そういう時代が日本でも来たのか。

そういう驚きを感じている。


実は、この仕掛けは自民党のメディア情報局の局長を務めている河野議員が発案した。


自民党の「ブログ対決」がなければ、馬渡議員の存在を知ることもなかった。

戸井田氏や赤池議員の動向にも関心を払わなかっただろう。

勿論、牧原議員の意見も聞かないで終わったかも知れない。


ネットが立法に大きな影響を与える時代になった、ということだけは、皆さんにお知らせしたい。

ここで名前を上げた議員は、その時々の政策について意見を違えることがあっても、皆いい政治家ですよ。

そのことも、念のため。