本当はおかしなことだけど | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

なるほどこんなやり方もあるんだ、ということを知った。


6月1日の改正道交法施行で75歳以上のドライバーに高齢者マーク(もみじマーク)の表示が義務づけられるのを前に、警察庁は20日、少なくとも1年間は違反者の摘発を見送り、始動にとどめるよう、全国の都道府県警察に通達を出した。


そう、埼玉新聞が書いていた。


改正道交法は違反者には行政処分の点数1点と反則金4000円を科すと定めている。警察庁は1年間の指導でもみじマークの表示を徹底させ、その後の取り締まりについては表示率を考慮してあらためて判断するとした。

また、改正により義務化される自動車の後部座席のシートベルト着用についても、今秋の全国交通安全運動終了時までは悪質なケースを除いて摘発を見送るよう指示した。


そうも書いている。


法で新しい規制を導入した場合の、実際の法の運用のあり方をこんな風に決めている。


確かに、いくら法律で禁止しても、十分周知していなければ、違反者が絶えないだろう。

こんな場合に、いきなりペナルティーを課すような乱暴はしてはならない。

警察は、こんな風にして法の運用の適正さを確保しようとしているのか。

さすがに現場を良く知っているな。

こうでなければならない。


そう思った方が多いのではないか。


しかし、法律が決めたことを、法を執行する警察が裁量でその運用を変える、ということである。

本当はおかしなことである。

なぜ、法律でそこまでちゃんと規定しなかったのか。

中身は良さそうだが、立法のあり方としてそれで良かったのか。


立法府にある者として内心忸怩たるものがある。


実はこんなことは日常茶飯事だと言って良いのかも知れない。

法律の条文の吟味は重要だが、実は、政令や省令に具体的にどう書かれているかをチェックしなければならない。

各省庁が発出する通達がどんな風になっているか、をフォローしないと、本当には実際の法の運用が分からない、ということが言われてきた。


上記のことは、その一つの証左である。


国会が法律を作る。

それが建前であるが、実際は行政が法を作り、運用している、というのが実態だ、と(多分自嘲気味に)指摘されたことがある。


警察が摘発を1年間見送る、という運用がありうる、ということを知った。

現在、児童ポルノ禁止法の見直しと改正の流れの中で、児童ポルノ単純所持禁止というたな規制の導入が検討されている。

実に多くの方から反対意見を頂戴した。


このブログを読んで頂いた読者には、既に問題の所在が明確になったと思う。

これから与党プロジェクトチームの審議に臨む立場にある者として具体的なコメントは差し控えざるを得ないが、もっと早くからこういった議論が良かったなあ、それが私の率直な感想である。


与党プロジェクトチームは、与党のそれぞれの党内手続を経て提案された意見のすりあわせの場であり、何らかの成案を得るための作業部会という性質(あるいは、限界)がある。

今日、具体的な法文の形で改正法案が示されることになっているが、その草案の作成作業に関与していないため、どんな案文になっているかが心配だ。


こういうときに座長とか、事務局長という立場にいる人は原案の作成に関与してるから、原案に自分の意見を反映しやすい。

その他のただの平委員は、基本的に原案を承認するか、原案に対して多少の修正を求めるだけに終わらざるを得なくなる。


私としては、定義規定について何らの検討がなされていないようであれば、まずそのことを指摘しなければならない。

さらに、単純所持禁止の違反について、構成要件のさらなる明確化、限定化がなされていないようであれば、反対の意見を述べることにもなろう。

勿論、罰則の適用までに一定の周知期間や経過規定を置くことは、当然である。


しかし、それまでに積み重ねられてきた議論を一気に覆すような、新たな視点からの問題提起はなかなか認められないのが実情である。

こういうことを是非ご理解頂きたい。


既に公党が取りまとめた結論に真正面から反対する意見は、「個人的なご意見として、一応お聞きしておきます」という扱いになる、ということも覚悟しておかなければならない。

それでも、法律の専門家としての立場からの発言には意味がある、と私は思っている。


昨日は、厚生労働部会・臓器移植調査会の合同会議で臓器移植法の改正法案について、B案の提案者の一人として、多くの国会議員が賛意を表明しているA案の問題点について説明した。


大事な法案の審議に際して、例え大きな政治の流れに抗するように見えてもあくまで法律の専門家としての立場から発言を続けることが、私に求められている役割なのかも知れない。



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