九日目  プロフェッショナル 時天空 | 行司のブログ

行司のブログ

次に生まれたら行司になりたい、大相撲好きの
大相撲観戦ブログ

平成26年初場所九日目 





激しくぶつかり合う土俵上。






次々とまわしを解く、力士がいる。




その力士にかかると、いとも簡単にまわし解き、



『まわし待った』になると言う。





体全身で、ぶつかり合う土俵上。



そんな魔法のような技を持つ力士が、大相撲界にはいる。






その男の彼の名は。







時天空





プロフェッショナル

仕事の流儀


NO13

『まわし待ったで挑み続ける男』

時天空慶晃34歳 力士





彼の壮大で繊細な土俵の技に密着する。







時天空の15日間は、重く、長い。




角界に異彩を放つ力士だが、


成績そのものは、


パッとしない。






今日も時天空慶晃は鯖のような目で、土俵を見つめていた。



精神統一などをする力士が目立つ中、彼の目は何も見ていない。



彼は言う。



「土俵に上がるまでに全てが決まる。ボンヤリ待つのが一番だ」と。




しかしその表情は、土俵へ上がると一変する。





険しく苦々しい顔つき。



それまでの鯖の目は、仁王像のような目に変わった。






時天空の立ち合いは平凡だ。


するどく当たれない。




しかし


「だからこそ研ぎ澄まされた神経が指先に集まるのだ」、と彼は言う。



一見理屈に合わない理論も、その一瞬にかけて戦う彼の中では


偉大な相撲哲学となっていた。




時天空は、その哲学をまさに目に見える形で


私達の前に現してくれた。




初場所九日目の翔天狼戦。




深く入った時天空の両腕。




素人目には攻めあぐねているように見えるこの相撲。


だが、彼の手はこの時、勝負に出ていた。






身体を動かしながら、自然とまわしを緩ませてゆく時天空の手。




遠くの結び目を手先の勘だけで、いとも簡単に解いて見せた時天空。


相手の攻撃にも十分注意しながら、行うこの熟練の技。



身体の動きと手先の動きが滑らかに連携され、


そこには不自然さは微塵もない。





彼はこの技を自分の手に覚えこませるために、


血の滲むような努力を重ねた。



土俵での稽古が終わると、固く結んだ紐をを解く練習を


テレビを見ながら、横になりながら、ぼんやりしながら、酒を飲みながら、ありとあらゆる時に


『ながら練習』を続けた。


彼は言う、


「人がゆっくりしている時は、自分もゆっくりしながら、小さな努力を積み重ねてきた。

今はテレビを見ながらでも、手元を見ることなく結んだ紐を解くことができる。熟練の技は一朝一夕には身に付かない」




この熟練のまわし解きが、相撲を大きく動かす。



解けたまわしをみて、行司があわてて『まわし待った』をかける。






その時、再び時天空は勝負に出る。





行司の静止を振り切って、手を解くのだ。




『一度動きを静止して、再び相撲をとる』



とても非効率な戦い方だが、『取りなおし』よりもリスクが少ない、


大相撲のルールを最大限活用した彼にしか出来ない戦い方だ。




行司が緩んだまわしを締めなおした、次の瞬間。


その後の再開にあわせて、


理想の組み手にジワリと変えた。





このとき時天空ならではの、ルールがあった。





プロフェッショナルルール


◆組み方は変えすぎないが、自分有利にすること。


◆審判に嫌われないようにすること。



今場所中は、2回・2度ずつもまわしを解く時天空は、


周囲への配慮を欠かさない。




時天空は言う。


「相撲は一人では取れない。特にこの技は多くの人の力が必要になる。

常に姿勢は低く、お辞儀は深く。この技を決めるのにもっとも大切なことだ。」



もちろん審判長への配慮の姿勢を欠かさない。




周囲への配慮、指先への神経・・・。


ありとあらゆる神経を研ぎ澄ませながら、時天空は相撲を有利に動かしてゆく。




取り組みは長い時間をかけ、ついに。




なんと、脚で決める。






そして、



かろやかに舞った。








こうして、小躍りを挟むことで、緊迫した空気は一気に緩み観客の緊張も解かれる事を時天空はよく知っ

ている。


普通の取り組みの数倍の時間、体力・根気を必要とするこの戦い方は


利き腕の消耗も激しく、





また、身体の水分も激しく奪い去る。





34歳のベテランの彼には、酷な戦い方だと感じた。





なぜこんな戦い方を選ぶのか?



彼は言った。




「私が選んだのではない・・・。

一瞬の時を止めて、自在に操ることができる『まわし待った』に、私が選ばれた。

そう、私は時天空だから。」






―― 時空を越え、解かれたまわしが天を舞った ――







最後に時天空に聞いた。



時天空にとってのプロフェッショナルとは?






未設定

「勝てそうな相手に、そこそこに勝って行くこと」







時天空慶晃34歳の戦いは、明日も続く。





〈エンディングソング  シカ・スガオ〉