国連PKO 4部門の基礎知識の無さが悲しい | 群青

国連PKO 4部門の基礎知識の無さが悲しい

SNS上の議論で、国連PKOへの自衛隊参加について、基礎知識がないままに色々と述べている方がいらっしゃいました。
そこら辺のおっさんならともかく、それが、民進党強烈支持のサポーターないしは党員に近い方なので、オッソロシイ。
仮にこの方をAさんとします。
以下、簡単ながらやりとりをご紹介致します。


【Aさん】1

私は現憲法でも警察権を否定していません。特別に交戦権を否定する必要はないと思います。
PKOも警察権による治安維持活動で説明がつきます
これをおかしく解釈するので、話がまとまらないのです。

憲法に手を入れなければならない緊急性はありませんが、議論することを否定するものではありません。


【当方】1
国連PKOは4つの部門があります。
このうちの
PKF(軍事部門)が、自衛隊が配属されている部門で、文民保護任務のため交戦権を有する部門です。軍隊です。軍隊とはご存知のように敵兵を殺しても国際法上罪にならない権利を持っていて、警察権ではありませんよ
国連PKOの中には、
文民警察部門、非武装軍事監視団というのもあります。前者には、かってのカンボジアPKOに日本国の警視庁から派遣し、お一人が殺害された経過もあります。
ご説であれば文民警察部門に警視庁から派遣したら良いでしょう。これですと、日本国憲法九条に抵触いたしません
もう一つの非武装軍事監視団は、PKF、あらゆる軍隊、武装部族の武力行使を監視する文民組織であり、国連PKOの中にある「中立」組織です。自衛隊員が、
一旦身分を文民に切り替えて、丸腰で参加すれば、憲法九条に抵触致しません
基礎知識で、あいすみません。


【Aさん】2
「自衛隊員が、一旦身分を文民に切り替えて、丸腰で参加すれば、憲法九条に抵触致しません。」(上記の当方コメントのことです)
隊員の安全確保は重要です。安全確保するに充分な準備をしていっても憲法に抵触はしません
それよりも、
丸腰で参加しろなどとは参加する隊員の生命を軽視することです。
呆れます人間としての基本ができていない人のコメントはこの程度でしょう。
憲法をしっかりと読んで下さい。憲法読みの憲法知らずはどこにでもいますが・・・。

それと以前コメントしたとおり、憲法読みの憲法知らずの目に余る粗末さに、
海外派遣のとき外務省・あるいは法務・総務に身分を移していくことを私は提案しています。

【Aさん】3
それと誤読があります。
ウィキペディアより
「国際連合平和維持活動(こくさいれんごうへいわいじかつどう、英: United Nations Peacekeeping Operations)は、国連憲章でうたわれた集団安全保障を実現し、紛争において平和的解決の基盤を築くことにより、紛争当事者に間接的に平和的解決を促す国際連合の活動である。日本ではPKO(ぴーけいおー)と略されることが多い。
PKOに基づき派遣される各国軍部隊を、国際連合平和維持軍(こくさいれんごうへいわいじぐん、United Nations Peacekeeping Force)という。日本ではPKF(ぴーけいえふ)とも略されるという。」

 

【当方】2

国連PKOの内部構成(部門)は、下図です。国連非武装軍事監視団の武装解除部長(日本政府代表)であった伊勢崎賢治さん作成による図です。

 



 

つまり、誤読ではなくて、ウィキペディアの方が間違っています。ウィキペディアは時として粗すぎて間違うことがありますので、注意致しましょう。
※ 伊勢崎賢治さんの国連PKOについての解説は、インターネット上で、幾つもあります。この1年でだいぶ知られるまで至りました。
精緻なところを、自分も実は1年程前に、伊勢崎賢治さんご講演で学びました。伊勢崎さんは、菅直人事務所主催の安保法制勉強会にも講師で呼ばれて、200名弱の菅さんご支持の方々が勉強されました。

(Aさんのために、下記をリンクしておきました)

■「国際平和支援」の最前線。報ステ「緊迫のコンゴPKO密着」摘録  excite.しゅくらむさんブログ 2015年4月27日

 

続いて、excite.ブログです。報道ステーション特集動画を写真に分解しているもので、報道動画はYouTubeには既にありません。
こちらは報道ステーションがコンゴPKO「
非武装軍事監視団」が武装部族のところへ、丸腰で赴いて、撤退するよう交渉している事実です。眼鏡をかけた兄ちゃん刈りの男性伊勢崎賢治さんご本人
読んで頂ければ、
相手に「敵では無い」ということを証明するために武器を身に付けないで赴く訳です。ですから、この報道時点で監視要員のうち三人が殺害されたのも事実です。
ただし
頃合いを見計って説得に出て行くので、割合から言うと、武装しているPKFの戦闘員の方の戦死率が大きいのが事実です。常時交戦にスタンバイする戦闘要員ではないからです。お気持ちは分かりますが、観念的な仕分けではなく事実としてそうなっているということです
ただし、一般人が相手から捕獲されレイプを受けたり殺される場面では救出のため武器を使用します。ブログでもその訓練場面が出てきますのでご覧下さると、有り難いです。


派遣自衛隊を例えば
外務省や総務省に身分切り替えして派遣することは、かなり良いアイデアだと思います
つまり、即ち
「文民」としての派遣ですよね。
で、
言い換えると武器・装備・自衛隊戦闘服を着用しないというものですよね。Aさんのご提案を、そう解釈して宜しいでしょうか。
国際法上、
軍隊は、身分を表す国旗のついた戦闘服を着用するとなっています。敵味方を明確にするようにとのことです。
もし、
ご提案をそう解釈して良ければ、派遣先の部署は国連PKO軍事部門(PKF)とはなりませんよね
結果として、自分がご説明した警視庁警察官の「文民警察」的であろうと思います
なお、
カンポジア国連PKO(第一次派遣)の際は警視庁警察官がお一人殉職されました。戦場へ行くんですから、全く安全だという訳にはいかないと思いますが、「PKF」の主たる任務「文民の保護」のため、自分が襲われなくとも、交戦権をまともに実行するPKFよりかは安全だということでした。
以上、お答えしておきます。

 

●感想として
Aさんの基礎知識に、上の「4つの部門」についての基礎知識が無く、Wikipediaの粗さに惑わされていらっしゃるのが、限界の理由かな~と感じました。
Wikipediaは、時として、間違いますし、間違いでは無くとも誤解され易いところがあるので。


ただ結果的なイメージについては、Aさんご提案の「外務省・あるいは法務・総務に身分を移」して海外へ送る・・・という内容は、自分は賛成です。
しかし、身分を切り替えると、PKF(国連PKO軍事部門)への配属とはならないです。
つまり、Aさんイメージは、自分が伊勢崎さんが示す「文民警察部門」ないしは「文民行政部門」配属のように推測できます。
しかし、Aさんご理解では、日本国内省庁所属を移しながらも、自己保身(正当防衛)のため、自衛隊の武器・装備装着で制服のまま行かせるイメージでいらっしゃるご様子。
残念ながら、警察権行使の部署と交戦権行使の部署とをごちゃごちやにされています。
というか・・・「交戦権」を「警察権行使の際の正当防衛」とを同一視されているようでもあります。
「交戦権」は即ち軍隊の武力行使。国際法のこの殺しても罪にならない権利のことについて、情け無い程ご理解をもたれていません。
それと、PKFの任務は「文民の保護」。
そのためには、自衛隊が襲われていなくとも積極的に「文民」の生命を守るために交戦するのが任務であり、自衛隊が「いや、自分達は自分の正当防衛しかやりたくありません」と上告しても、現地統括部が指令することに背くことは出来ない・・・という最もツボのところを、全く見落としていらっしゃいます。

それにまた、それだと、戦場現地では誰が見ても軍隊。
敵兵が、外務省や法務省等から来た人達だなんていちいち聞いてから、射撃してくれるのか??と・・・・、笑い話にもなりません。
政治にお詳しい情熱家さんでSNS上では影響力の大きな方が、こんなことでした。
しかし同時に、真面目によくお考えなんだな~と、サポートしたい感じもあります。
まだまだこつこつと、SNS上のおかしな誤解と無知には投入をしなければならないのか・・・と、出来る範囲でとは思いながら、溜息です。

 

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