諸君、ご壮健かな。
さて、私は。
小金井にいた。
ここには「江戸東京たてもの園」がある。
家屋の建物の展示をしている、珍しい園だ。
もともと、この建物は皇居の前にあったらしい。
なんでも昭和十五年に行われた、紀元二千六百年式典の仮設の会場として造られたようだ。
紀元二千六百年とは、初代・神武天皇が即位してから2600年目!
長い歴史があるものだ。
それが小金井大緑地に移設され、国民練成所として利用されたり。
今の天皇陛下が皇太子時代に勉強したりした場所。
なんと由緒正しい建物!
私ごとき庶民が足を踏み入れていいのか。
思わず立ちすくむ・・・。
わけではなく、入場。
おお、やっている。
ジブリの世界といえば。
子供向けに、トトロとか顔なしとか。
キャラクターからの展示会は多かったが。
今回は。
建物からの視点。
建物は人間に最も近いはずの場所なのに。
画一化されてぬくもりが最もなくなっている。
土とともに共生していた時代。
木のぬくもりがあった時代。
公団住宅になりながら人が温かかった時代。
それを描くために。
宮崎駿が何を見たか。
その答えが、ここにはある。
古い町並みが再現されている。
これは千と千尋の神隠しのモデルになったところ。
それがここ、江戸東京たてもの園にはあるのだ。
見覚えあるだろう。
見覚えあるだろう。
観て懐かしいと思える建物。
それが本来の生活空間なのだ。
なんと、ふさわしい場所で展覧会をしたものだ。
そして、ここには。
高橋是清亭がある。
あのアベノミクスの原型となった財政をした政治家。
その八十を超えた終の棲家に、無粋な青年将校が刀を持って押しかけてきた二・二六事件。
恐慌で疲弊した経済を立て直そうと懸命な翁は。
天皇中心の軍隊を強化しようとする青年たちに邪魔者でしかなかったのか。
きっと深夜に正座して襲撃犯を迎えた是清もみた風景。
老いても志は持てる。
そう実感しながら。
是清の最期を哀しく思うのだ。
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