ELSとの対話を行う為、クアンタムバーストをフルパワーで発動したダブルオークアンタ。機体各所の装甲を思い切りよくパージして、GN粒子コンデンサが各部からせり出す。膨大な高濃度粒子を放出して緑色に輝く様は、機動戦士ガンダム00という物語のクライマックスとしては相応しい描写だと言える迫力があった。神々しいまでの光を放ち、異形の姿を見せるクアンタは、神秘的な印象すらあったと思う…。

が!、あの一場面の映像描写としては良いのだけど、ダブルオークアンタという機体の本来の機能を考えると、アレってどうなのよ?と思う面もあったりする。

「イノベイター専用機」「戦いをやめさせる為の機体」「刹那の望んだガンダム」などと呼ばれ、エクシアやダブルオーライザーの流れを継承しながら、新たなコンセプトを盛り込んだ最新鋭機、GNT-0000 ダブルオークアンタ。この機体は、何もELSとの対話だけを最初から想定した、一発使い切りの機体ではないはず。というか、元々はイオリア計画としてもELSなどの外宇宙の異種との対話は、まだまだ数世紀先のことだと予想されていたので、西暦2314年時点のクアンタの使途は、人類同士の戦争をやめさせる為の機体だったはず。

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超高濃度粒子領域を展開し、人々の意思を繋げて誤解や偏見などによる争いを調停するのがクアンタのコンセプトだとしても、実際の戦場では何があるかわからない。迂闊に手ぶらで戦場にノコノコと出動し、戦闘に巻き込まれて呆気なく撃墜されてはミッション達成もままならないので、クアンタには自衛の為の武装も施されている。積極的にこちらから攻撃を加えることはなくても、相手が敵対行動をやめなければ、敵の攻撃から身を守ることも必要だし、場合によっては従来のように武力介入や制圧が必要になる場面もあるだろうからだ。

しかし、ひと度クアンタムバーストをフルパワーで発動させてしまうと、どうもクアンタは全身各所の装甲をパージしてしまう。これって、粒子放出率を格段に上げる為なのかも知れないが、あまりにも無防備過ぎて危険じゃないだろうか?クアンタムバーストでの意識共有でうまいこと即座に停戦に漕ぎ着けられれば良いのだろうが、中には明らかな悪意のある相手だっているだろう。同じ人間同士の争いでも、意志が通じ合えば無条件に100%わかり合えるというほど楽観的なもんじゃない。相手が敵意や害意を失わず、装甲パージ後も攻撃を続けてきたらどうするつもりだったのか?

まぁ、クアンタのGNソードビットがあれば、装甲がなくてもGNフィールドを瞬時に展開して防御可能だし、ソードビットによる反撃も可能ではあるが、だからといって骸骨剥き出しみたいなフレーム露出状態になるのが良いというもんじゃないだろ?装甲をすぐに自力では戻せなくなるパージ(切り離し)を行うのではなく、開閉可能な展開状態にするとか、装甲各所にスリットを設けてそこから粒子放出を行うなどの手はなかったのだろうか?粒子コンデンサ周りだけ、せり出しが可能なように余裕を持たせとけばいいじゃん。

戦場でクアンタムバーストする度に、切り離して撒き散らした装甲を後で拾い集めるの大変だぞ?もしくは拾い集めずに使い捨てだとしたら、今のCBの限られた予算には無駄遣いの負担となるし、地球環境的にもゴミを増やすのは良くないぞ。クアンタムバースト発動後、現場で装甲類を元通りに修復出来ないとなると、一旦帰還して整備し直さないと、次の戦場にも丸裸で出動する羽目になる。折角の半永久機関オリジナルGNドライヴ搭載機なのだから、なるべくメンテナンスフリーで長期間活動出来るような(一度の出撃で複数ミッションこなせるような)設計にすべきだろ?イアンよ。

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しかも、装甲はまだしも、クアンタは足首まで切り離している。これじゃ、クアンタムバースト後は着地して自立出来ない。ずっと浮きっぱなしでいるか、フレーム剥き出しの両足で座り込むか(膝立ちしようにも膝の装甲もないので、無防備なメカ部が直接地面に着くし)。トレミーに帰還した場合の自立着艦も、足がないのでやりにくいはずだ。粒子放出を優先するにしても、足首まで切り離す必要ホントにあったのか?後先考えない設計ミスでは?

装甲をパージしてフレームが剥き出しになる姿は、ある意味では鎧を脱ぎ捨てて自らの身を相手に晒すことを意味する行為ではある。心を開いて壁を排除し裸になることで、自分の心の内を見せるような姿にも見える。無防備な自分を晒すことで、相手に対する悪意や攻撃の意志がないことを示し、我が身を潔く相手に委ねるような印象も与える。そして、いつもとは違った異形のガンダムを見せることで、一種の神秘性のようなものを演出する効果はあったかと思う。とりあえずインパクトだけはあったのは確か。

だが、元々はELSとの対話一発のみの為に作られたわけでもないクアンタが、このような仕様に設計されている事は、CBのガンダムとしてのリアリティには欠けて感じてしまう。そういえば、クアンタの設計を行ったメカニックのイアンは、カッコ良くないメカは勝てないという持論を持っていて、性能だけじゃなく見た目のデザインにも異様に凝る主義だったはず。それにしちゃ、装甲をパージしたクアンタは、正直言って貧相でカッコ悪いぞ?設計思想としてそれでいいのか?

え?クアンタは戦闘を止める機体だから勝たなくていい=カッコ悪くていいって?