超大型ELSが、粒子ビーム砲の攻撃を弾き返す対処法を学習したのは、当然の事ながら自分の身に穴を開けられたくなかったからだろう。そんなELSにグラハムの特攻&自爆は強制的に穴を開けた。この行為はELSとしては歓迎すべき出来事じゃなかったはず。そして、その望まずして開けられた穴を通って内部への侵入を果たしたダブルオークアンタも、本来ならELSにとってはウェルカム♪とは言えない侵入者であり異物だったはずだ。

しかし、その割には、超大型ELS内に侵入したクアンタに対して、これを排除しようというELS側の動きは見受けられなかった。いわゆる人間のカラダで言えば、白血球とか免疫抗体のような役目をする、異物侵入に対する対抗機能がELS内では働いていなかった。ELS内部に侵入したは良いが、そこからも激しい抵抗を受けて刹那達はなかなか中枢部に辿り着けない!…等という展開を少し期待していただけに、随分アッサリしてるなと映画を観たときは思ったものだった。

これは極単純に、ELSは人間などの地球上の生命体とは異なるので、そういう機能が体内に備わっていなかったという考え方もあるかも知れない。もしも金属生命体であるELSには、これまで異種との接触による感染等で被害を受けたことがなかったとしたら、それに対処する免疫機能は発達しないだろうし。そもそもELSは異種・異物との接触融合こそが日常茶飯の活動なのだとしたら、相手を取り込んで自ら変貌する事で対応してしまうので、感染されて死ぬような目には遭ってないのかも知れない。また、感染じゃなくても、内部に侵入されて内部から破壊的な攻撃をされた経験も殆どなかったのかも知れない。なので、内部は手薄だったと考えることも出来る。

もしくは、ELSは刹那に内部へ侵入された時点で、既に刹那の表層的な意志を脳量子波で読み取っていたという可能性もある。ELSは外部よりも内部の方が感知能力が鋭敏な可能性はあるだろう。本格的な意識共有はまだだったが、ある程度クアンタからは敵意・害意が発せられてないことは察知していたのかも知れない。敵意があれば排除行動を起こすつもりだったが、それがないので侵入を許して様子を窺っていたのかも?

クアンタがELSの中枢部と思われるところに到着した際にも、ELS内部にはあまり警戒した様子は見られなかった気がしている。強制的に穴を開けて押し入ってきた侵入者にも関わらず、既にELS側は受け入れ姿勢で対話する気満々だったように思えた。しかも、これまでの他のELS軍団のように、有無を言わさず接触・融合しようと飛びついてくるような性急さもなかった。

さすがは超大型ELSならではの、中小型のELSとは異なる大物ぶりとでもいうか。大型のELSになればなるほど、より高度の知性を持っており、より上位の判断権限を持っているのかも知れない。クアンタに乗る刹那を穏やかに迎え入れて、刹那の発動したクアンタムバーストの光を包み込むように受け入れた。人類との対話を行う為に。