マネキン准将の…というか、地球連邦軍の戦術としては、以下のような想定だったと思われる。


【1】

まずは大量の粒子ミサイルを一斉発射してELSの大群に撃ち込む。そのミサイルはELSに取り込まれぬように近接信管にセットし、広範囲でミサイルを一斉に爆発させて、その爆圧と衝撃波でELSの前衛の数を減らす。


【2】

その後、ソレスタルビーイングの大型粒子ビーム砲を撃ち込んで、その射線上にあるELS群を焼き払って消滅させつつ、超巨大ELSに直撃させて大ダメージを与える。(月と同等のサイズなので、さすがに一撃で破壊出来るとは思っていない)


【3】

大型粒子砲は威力は大きいが連射が出来ない。そこで次弾発射までのチャージを行う間に、各艦隊によるミサイル及び砲撃と、モビルスーツ部隊による攻撃を敢行。可能な限りELSを撃破して数を減らしていく。艦はGNフィールドを展開出来ない為、ELSとの接近は避けて遠距離からの砲撃・雷撃でELSに対処する。MSもなるべく接近戦は避けたいところだが、ELSが至近距離に来て接触を図って来た場合にも対処出来るよう、各機にGNフィールドの使用を指示。


【4】

各部隊がELSに最終防衛線を突破されぬよう時間を稼いで持ち堪えてくれれば、大型粒子砲のチャージが再び完了し、その火力でまた一気に敵数を減らしていく。その繰り返しで数発の粒子ビームを超大型ELSに撃ち込んで、それを撃破出来れば後は各個を叩いて掃討する。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


しかし、最初のミサイル一斉反射・爆破の段階で、大型のELSは破壊し切れず、想定ほどの数減らしが出来なかった。激しい爆発光にかなりの戦果を期待したはずだが、結果的に爆発が収まった後の報告は、「ELS健在です!」「何らかのフィールドを展開した模様!」というものだった。だが、すかさずマネキンは次の指示を出す。「大型粒子砲発射準備!モビルスーツ隊で近接戦闘を仕掛ける!」と。まずは粒子砲を撃つ前にMS部隊を発進させた。「全モビルスーツ発進準備!ELSに取り込まれぬよう、各機はフィールドを展開して使用せよ!」というオペレーターからの指示も出された。


MS部隊が展開し待機する中で、大型粒子ビーム砲のチャージは進む。「チャージ100%!」の報告とともに「掃射開始!」。この一撃はさすがに十分な効果があった。極太のビームは射線上やその周辺のELSを消滅させただろうし、ビームの直撃を受けた超大型ELSは、貫通されて命中した箇所の反対側(裏側)からも爆煙を上げた。その光景は連邦軍の人間達を「これがあれば勝てるのでは?」と勇気付けたことだろう。もしもこの状態のまま大型粒子ビームを連射出来たなら、戦局は全く異なる様相を見せたかも知れない。しかし、擬似GNドライヴを数十基もエネルギーカートリッジとして必要とするこの主砲は、連射どころか次の発射の為のチャージにかなりの時間を要する。このビーム砲で一気にたたみかける事は出来ないのだった。


「艦隊、粒子砲で攻撃しつつ、モビルスーツ隊も同時攻撃!掃討作戦に移る!」…というマネキンの指示に従い、艦隊とMSによる個別攻撃が開始された。だが、ELS側も艦やMSに擬態して反撃に転じると、連邦軍は次第に苦戦に陥る。ELSが擬態したGN-Xの方が数が多いというのもあるだろうが、ELSは連邦のMSと同等の戦力を持つ上に、接近すれば自在に形を変えて触手を伸ばして接触して来たりもする。接触すれば物質的な同化をする分、ELSの方が有利であり、触れられたら致命傷を負う連邦軍は不利だ。


途中からソルブレイブス隊やCBのトレミーやガンダムが合流し加勢してくれはしたが、戦局をガラリと変えるほどの戦力とはなり得ない。押され気味の状況を打破する為に、堪え切れずに(?)完全チャージを待たずに出力半分で主砲(大型粒子ビーム砲)を撃ち、再度超巨大ELSに打撃を与えるべく攻撃を行った。が、今度は粒子ビームは超大型ELSを貫通することなく、表面で屈折させられて拡散して消えた。連邦軍の最大火力はたった一発しか通用しなかったのだ。二発目にはもうELSに対処を学習されてしまい、期待したほどの戦果を上げられなくなっていた。


連邦軍の打つ手は次第に効力を失い封じられて、徐々にジリ貧状態へと追い込まれていった。