地球に向かってくる超巨大サイズを含むELSの大群に対して、地球連邦軍はそれを迎え撃つ為の戦術を決定した。その内容は説明用の台詞があるのでとりあえずそれに任せる。↓


「全現有戦力を投入し、絶対防衛線を張り巡らせ、ELSの地球圏侵入を阻止します。最前衛に主力攻撃部隊として第一から第三の3艦隊を投入。中核に第五から第九の各艦隊を配置し、残る部隊は後衛として本営正面に展開させます」


「作戦司令官はカティ・マネキン准将。既に本作戦発動に向け、艦隊集結を進行中です。また、准将が視察中でした外宇宙航行艦は艤装を済ませ前線司令部として本作戦に参加します。作戦行動可能な全艦隊の絶対防衛線への集結は、8765に完了予定です」


ELSの進路に対して、こちらから出向いて行って地球から遠い所で迎え撃つという手もあるはずだが、戦力を整える時間が必要だったのだろう。ELSとの接触までの時間をギリギリまで延ばす為に、こちらから迎えには行かずに待ち構える方針にしたようだ。また、艦隊を長距離移動させた場合、現場に到着するまでにかなりの粒子を(エネルギーを)消費してしまう。消耗状態からの戦闘開始はなるべくなら避けたいというのもあるだろう。


そして、ELSの数は圧倒的で数え切れないほどである。それに対応するにはこちらも可能な限り数を揃える必要がある。その為、世代の新旧は問わずに使える戦力は艦船もモビルスーツもモビルアーマーも全て投入。恐らくは、MSの生産ラインもギリギリまでフル稼働で増産したのではないだろうか?もしかすると退役していた旧型機も、保管状態が良くて動くものならば、整備されて駆り出された可能性もある気がする。


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作戦司令官も、現連邦軍で最も経験豊富で有能な者を指名した。CBとの実戦においても十分な実績があり、先のアロウズ打倒の際にも活躍したカティ・マネキン准将。階級的には准将の上に何人もお偉いさんはいただろうが、現場での指揮経験豊富な最適任者は、彼女をおいて他にいなかったのだろう。CBから接収した外宇宙航行母艦ソレスタルビーイングに搭載されている巨大ビーム砲も有力な戦力だ。この際使えるものは何でも使うのだ。連邦軍の保有する全てを投入し、ELSとの全面的な直接対決を行う。言葉も通じず交渉の余地のない問答無用なELSには、もうこれしか手がないと踏み切ったわけだ。


「これで打てる手は全て打ったことになります」…と、連邦政府の議員は言った。これ以上は本当にどうしようもない。これで負けたら人類の命運はそれまでだ。


「ELSが進路を変え、絶対防衛線を回避した場合は?」

「地球は壊滅的な被害を受けます」


一応ELSが地球に到達する進路を予測して、それを阻止する位置に絶対防衛線を張っているはずだ。しかし、ELSにはかなりの高速で移動する能力がある。それがもしも急に進路を変更して、艦隊の待ち構えている場所を迂回するような事があったら、全艦隊がそれに即座に追従するのは難しいのだろう。また、一方向から接近して来ずに、ELSが分散して地球を包囲しながら包囲網を狭めるように接近して来たとしたら、この場合も現有戦力数では地球の全方位をカバーし切れない。戦力を広範囲に展開し過ぎたら、各所は全て非常に手薄になってしまうだろう。ELSは一団となって同じ方向から真っ直ぐ地球に向かって来る…それを前提に賭けて艦隊を布陣している。そのアテが外れてしまったら、体制を整え直すのはもう間に合わないのだ。


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ELSが進路を変えずに真っ直ぐ向かって来てくれるかどうか?そもそも連邦の絶対防衛線がELSを相手に持ち堪えられるのか?それは誰にもわからない。思いつく限りのやるべき事はやった。現時点で出来る事は全てやった。それでも、それが相手に通用するかどうかはやってみなければわからない。これまでにもELSとの交戦経験は多少はあるが、それはここまでの大群ではなかったし、あれほどの超巨大ELSは含まれていなかった。今の時点でも物量の上では明らかに不利である。後は連邦軍の奮闘に期待するしかない。もしくは…


「神に祈るしかないわけか…」と、半ば諦め気味に言いたくなる者もいた。でも、全人類のリーダーの座にいる大統領が、神に祈るような無策ぶりを認めるわけにはいかない。「神ではなく、私達がやるのです。生き残り、未来を切り開く為に。例え他者を傷付ける結果になったとしても」…そう、最早やるしかないのだ。祈って生き残れるほど簡単は話はない。刹那の台詞じゃないけれど、この世界にそんなに都合の良い神はいない。