刹那とリボンズの最後の戦い…エクシアR2と0ガンダムの対決場面のバックには、マリナの台詞と子供達の歌声がBGMとして流された。ゴロゴロソングこと『Tomorrow』と、刹那に宛てて書かれた手紙の朗読。以下は、その手紙の全文…のはず。


「この手紙をあなたが読むことがなくても、それでもあなたへの思いを綴らせて下さい。クルジスの少年兵として戦いを強要され、戦場の中でしか生きることが出来なくなったあなた。平和を求める気持ちは、私もあなたも同じなのに…わかり合っているのに、どうして私とあなたの道は交わらないのでしょうか?」


「あなたは武力を行使して、世界から争いをなくそうとしている。もしそれが実現出来たとしても、あなたの幸せはどこにあるのでしょう?罪を背負い傷付いて、それでも戦い続ける…。そんなあなたの生き方が、どうしようもなく悲しく思えるのです。」


「自分の中にある幸せを他者と共有し、その輪を広げていくことが、本当の平和に繋がると私は考えています。だから、どうかあなたも、あなたの幸せを掴んで下さい。刹那…あなたに幸せが訪れることを、私は祈っています。」


3ブロックに分けたのは、別に意味ないけど。


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この場面の演出には賛否両論がある。いや、もしかすると…どちらかというと、否定・批判の方が多いのかな?


0ガンダムとエクシアR2の戦闘シーンの映像自体はそれなりに評価が高い気もする。メカの描写はギミックの活かし方が細かいし、動きは重厚感と迫力がある。飛び道具にばかり頼らずに、地上戦的な格闘戦を描いたのが最終決戦に相応しいアクションシーンだったと。


しかし、映像はともかく、この最後の戦闘自体が蛇足だったという捉え方もある。刹那とリボンズの決着は、ダブルオーライザーとリボーンズガンダムでつけるべきだったのに、無駄に付け足しで戦闘シーンを増やしたと。また、折角のカッコイイ戦闘シーンなのに、BGMが盛り上がりに欠けるゴロゴロソングで、マリナの手紙読みが重なるのも邪魔なだけだと。クライマックスはもっとハードでアップテンポでテンションの上がる曲で、緊張感高めて盛り上げるべきだったと。


まぁ、そのキモチも確かにわからんでもない。カッコイイ音楽にカッコイイ戦闘シーン。その組合わせはロボットアニメでは是非とも観たいシーンのひとつだから。戦闘シーンといえばこういう盛り上がる曲!(例えばロック調の)…という決まったイメージを持っている人も多い。その意味では最後の戦闘シーンは視聴者の喜ぶセオリーからは外れており、その意味で期待外れでガッカリという感想を抱かせる面も多いのだろうね。その為、TV放映のモノよりも、BGMを変えたスペシャル・エディションの方が、この場面は好きだという人も多い気がする。


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でも自分個人的には、マリナと子供達による歌…『Tomorrow』を流す方が、物語のメッセージ的には合っているように思う。刹那とリボンズの最後の戦いは、盛り上がってテンションを上げるべき場面ではない気がするから。勧善懲悪的に「もっとやれやれ!刹那!リボンズをやっつけろ!」という場面じゃない。本当はアレはカッコ良くてワクワクすべき戦いじゃない。テンション上がる戦闘シーンは、ダブルオーとリボガンが役割を担って終わってる。


見ようによっては、あの最後の戦闘が蛇足に見えるのも道理なのだと思う。物語的には、あれは「まだ戦う気なのか?」と感じさせる蛇足を敢えて表現するシーンのようにも思うから。本当に二人は戦うしかないのだろうか?もうこれ以上戦わなくても良いのではないか?殺し合う以外に結論を出す手段はないのだろうか?どちらかが命を落とすまで戦わなくても、本当は既に何らかの決着がついているのではないか?…等々と、感じさせる為の“虚しい戦い”を最後に演出したようにも思える。だから、アップテンポの曲で盛り上がってる場合じゃないのだ。


勿論、リボンズと刹那は簡単に話し合いで結論の出せる状況ではないし、既に完全に決裂しているとも言える。現実的には戦うしかない場面も間違いなくある。今さら止められない戦いだったとも思う。それでも、この戦いが悲しいモノだったことに変わりはない。カッコイイ戦闘シーンにカッコイイBGMが流れるという、当たり前の展開ではないことに意味がある。穏やかで素朴な歌声と迫力ある戦闘がマッチせず、ギャップがあればあるほど如実になるものがある。見ていてノリノリになれないこと。聴いていてほのぼの出来ないこと。違和感あればこそ、虚しさが伝わってくる。


マリナの願いとは裏腹に、まだこの期に及んでも戦いに身を投じる刹那の悲しさ切なさ。リボンズとの決着をつける行為が、決して歓喜にも興奮にも祝杯にも栄光にも繋がらないこと。それを表現するのにマリナの語りと子供達の歌声は、演出上効果的なものだったと個人的には思う。