リボンズと刹那の直接対決は、それぞれに相応しい高性能機同士の戦いとなった。


リボーンズガンダムとダブルオーライザーはどちらの性能が上か?(どっちが強いか?)…みたいな議論をネット上でよく見かけたが、これを本当の意味で単純比較出来るデータはないし、そもそも何を持って上下優劣を断定するかの定義や根拠自体が曖昧だと思う。


単純に武装の豊富さを比較すれば、明らかにリボーンズガンダムの方に分がある。GNバスターライフルは威力と速射性と命中精度の全てを高次元にバランスさせた強力な粒子ビーム砲だし、大型のGNビームサーベル×2本は、熱量、切断力、有効範囲いずれも最強の格闘兵器だと言える。大小のフィンファングは縦横無尽に飛び交いながらビームを撃つことも、ビーム刃を形成して敵を切り裂くことも出来る。また、キャノン形態に変形すれば、大型フィンファングはそのまま4連ビームキャノンとして機能し、MSとしては最大クラスの火力を誇る。また、これまでやたらに命中率が高くてガンダムを苦しめた電撃兵器エグナーウィップも装備している。様々な種類の攻撃を多彩に繰り出し、しかもそのひとつひとつがどれも威力が高いという意味では、リボーンズガンダムの方が戦力的に上だと言えるかも知れない。


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これに対してダブルオーライザーは、3連ビームライフルと実体ソードを兼ね備えたGNソードⅢに、通常サイズのGNビームサーベル×2本。そして、オーライザー側にGNバルカンとGNビームマシンガン、GNマイクロミサイルを持っているのみ。勿論。これでも不十分と言うつもりはないのだけど、ダブルオーライザーとして合体時には、オーライザー側の武器は殆ど使用しない(刹那だけの時は使用しづらい)ので、実質的にはGNソードⅢを中心としたシンプルな攻撃展開になっている。


ダブルオーライザーには“ライザーソード”というずば抜けて長大なビームサーベルも実装されている。これはリボーンズガンダム側にはない超強力な武器ではある。でも、この使用にはオーライザー側にもオペレータを要するし、ライザーシステムによる粒子同調率の調整に時間がかかる。また、粒子消費量も多過ぎる為、取り回しが軽快とは言えないライザーソードは、MS同士の一騎打ちには使用が難し過ぎる。避けられてしまう可能性が高い割に、使用後は粒子残量が厳しくなって、自分の足を引っ張ることに繋がりやすいからだ。MS同士のドッグファイトで、使い物になるような兵器ではない。


では、武装の豊富なリボーンズガンダムの方が断然有利で強いのかというと、実はそうとも言い切れない。ダブルオーライザーの武装がシンプルなのは、その方がバランスが良いと考えてわざとやってることだからだ。武装てんこ盛りで色んな攻撃を繰り出すことを狙うのも戦闘力アップのひとつのやり方。しかし、数少ない武器に全てを集中させ、一撃一撃の必殺力を上げるのもひとつのやり方なのだ。ダブルオーライザーは機体バランスの完成度が高い為、アレコレと色々積み込むと、却ってそれが足手まといになる可能性がある。色んな武器を使いこなすよりも、近接格闘にも射撃戦にも対応出来る最新技術を盛り込んだGNソードⅢ一本に絞った方が良いと判断されたのだろう。遠くから撃ち、近くでは斬る。それだけで十分だというコンセプトなのだと思う。刹那というパイロットの性格から言っても、この方が向いているということだ。


逆に、リボーンズガンダムは総合的な完成度やバランスという面では疑問が残る。元々別の機体だった1ガンダムとGNキャノンを二個イチにして、変形機構を盛り込むだけでも設計的には複雑になる。その上、過去の戦闘データで有効だったとはいえ、ファングやエグナーウィップなどの武装を欲張り過ぎている。また、アニューが盗み出したデータを元に、急増でトランザムとツインドライヴを搭載もした。これによってカタログスペック的には現役最高クラスの高性能化を実現したとは思うが、機体の熟成度や信頼性、全体最適化のバランス取りという面では、十分とは言えなかったのでは?


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勿論、ヴェーダによる設計支援やこれまでのガンダム開発のノウハウもあり、ヴェーダ上での高精度なシミュレーションも出来るので問題は少ないのかも知れない。事実上ぶっつけ本番で実戦投入された割には、リボーンズガンダムには目立ったトラブルもなく、十分に機能はしていたと思う。しかし、数々の実戦を潜り抜けながら、経験豊富な熟練メカニックであるイアンの職人的な整備や細かい改良を重ねたダブルオーライザーに比べると、スペックには現れにくい微妙な面での“性能発揮度”ともいうべき点に違いはあったのでは?なんて思ってみたりして。


リボーンズガンダムは、搭乗しているパイロットのリボンズ・アルマークと同様に“万能”な機体なのだと思う。アレも出来る、コレも出来るという多機能機であり、現存する全ての技術やアイデアを惜しみなく注ぎ込んで最強を目指した機体なのだろう。そして、どの性能面においてもそつがなく、才色兼備的に何でも持っているというリボンズ好みの機体なのだろう。唯一の欠点は、GNドライヴがオリジナルではなく擬似であること。刹那の乗るダブルオーライザーと比較して、それ以外に劣る点は何一つない…とリボンズは思っていたのではないだろうか。しかし、その唯一の点こそが非常に気に食わない。オリジナルGNドライヴによる恩恵だけで、自分と張り合おうという刹那が気に入らない。


イオリア計画の象徴的存在のひとつであり、計画の要のひとつでもあるオリジナルのGNドライヴ。その存在にリボンズは固執し始めていた。いや、当初はそれほどでもなかったのかも知れない。擬似GNドライブでも十分な性能がある。擬似GNドライヴならいくらでも短期間で量産出来る。自分の能力とヴェーダさえあったならば、擬似GNドライヴでも十分だと最初は考えていたように思う。しかし、トランザムのみならず、ツインドライヴという自分に知らされてなかったシステムを目の当たりにして、リボンズは苛立ちを感じていた。その性能が優れていればいるほどに。意識共有や量子化などの未知の力を発揮すればするほどに。ましてやオリジナルGNドライヴの発する粒子に、純粋種のイノベイターを覚醒させるファクターまで含まれているとなれば、それを他者が保有していることは、自分の地位を脅かすものだと危機感を覚えたのではないだろうか。


逆の考え方をするならば、自分がオリジナルGNドライヴを手に入れれば、自分という存在の優位性は確固として不動のものとなる。オリジナルGNドライヴによるツインドライヴシステムさえあれば、もう自分は誰にも負けはしない…何者にも優る最上位の存在となる…そのようにリボンズは考えていたと思う。


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例え刹那・F・セイエイが純粋種のイノベイターとして覚醒しようとも、自分の能力が劣るはずがない、むしろ自分の方が全ての面で優れているはず。リボンズはそう信じようとしていたに違いない。そして、ツインドライヴを搭載したダブルオーライザーがどれほどの性能であろうと、自分が考え得る全てを注ぎ込んで開発したリボーンズガンダムの機能や性能が劣るはずがない。リボンズはそう信じようとしていたに違いない。オリジナルGNドライヴの恩恵がなければ、刹那もダブルオーも取るに足らない存在に過ぎない。だから、目の前にいる刹那とダブルオーを我が手で倒して、オリジナルGNドライヴを手に入れる。もしも手に入れるのが無理であれば完全破壊する。そうすれば自分の優位を脅かすモノは存在しなくなるとリボンズは考えていたのだろう。


でもリボンズのその考えは、大きく間違ってはいないかも知れないが、完全に正しくもない気がする。刹那とダブルオーライザーの強さの理由は、オリジナルGNドライヴだけのせいではないから。リボンズが思い込んでいるほどには、オリジナルGNドライヴと擬似GNドライヴに性能差はない。勿論、オリジナルには半永久稼動や量子化などの優位性・特異性は存在する。しかし、MSの動力源としての性能には、もうそんなに大した差はないはず。それと、刹那が純粋種イノベイターに覚醒したといっても、急にヴェーダのバックアップがついたわけでもないし、超人的な超能力を得たわけでもない。実質的な(表面的な)変化といえば、単に脳量子波能力の向上による反射速度アップや、細胞組織の変革により身体能力(筋力やスタミナ等)の強化程度の話だと思う。リボンズが思い込んでいるほどには、イノベイター化で刹那の性能アップが画期的に成されたわけでもない。


ダブルオーライザーとリボーンズガンダムは、戦闘能力を別のアプローチから高めた違いがあるだけで、性能的に明らかな(単純に)優劣を言える差はなかった気がする。リボンズと刹那の能力も、物理的にはそんなに大差はないと思う。ただ、実力が拮抗した状況だからこそ、僅かな違いが勝敗を決する場合もある。