量子型演算処理システム ヴェーダといえば、1stシーズン後半にリボンズとアレハンドロが訪れて掌握を行った月裏側の地下にあった施設や、2ndシーズンや劇場版で見られた外宇宙航行艦ソレスタルビーイング内にあった黒い目玉のような装置を思い浮かべるものだと思う。あれは確かに、ある意味ではヴェーダ本体だと言えなくもないし、中枢を担うメインターミナルであることは間違いない。


しかしヴェーダは世界に一台のみの大型コンピュータというわけではないようだ。現に、あの目玉も月の裏側から外宇宙航行艦に物理的に移設されたわけではない。あれはハードウェア的には似ているけれど別の装置だ。移設されたわけではなく、両方にあの装置は存在していた。月面の装置から航行艦内の装置の方へホストコンピュータとしての機能を切り替え、月面の方はデータを消去してスイッチを切っただけなのだ。では、ヴェーダは二台ないし数台の予備機だけで構成されているシステムなのかと言うとそれも違うらしい。ヴェーダは人知れず世界中のコンピュータとネットワークで繋がっている。しかも、単にインターネットの端っこにコッソリ繋がっているだけではなく、ヴェーダの小型端末が世界中に散らばっているような状況なのだ。


ある意味では、世界中のコンピュータネットワーク全体がヴェーダの正体だと言っても良いくらいに。CB、イオリア計画の活動は、200年以上にも及ぶ長大なものだ。しかも、ガンダムやトレミーを有する武力介入の実動部隊こそ少数精鋭でこじんまりとして見えるが、本来のCB組織全体やバックヤードにいる間接的なスタッフや支援者は世界中に散らばっている。大手有力企業や政界、財界にも多くのCB支援者が潜んでいる。CBは末端まで含む全体像としては、一般に知られていないだけで、国家規模、世界規模の大掛かりな組織なのだ。CBの構成員は大手家電やPC等のメーカーの開発技術者にも経営陣にもいたに違いない。そして、数十年数百年の月日を掛けて、密かに世界中の情報機器の中に、ヴェーダの小型端末ともなり得る機能を持つチップ等を内蔵させ、普及させて行ったとも考えられる。


ヴェーダはそれらを積極的に作動させて、各家庭や企業等でユーザーに悪さを仕掛けることはないだろうが、普段からネットワークに接続されているそれらの端末からも、情報を吸い上げていたかも知れない。また、必要に応じてハッキングをかけて情報操作や流出してはまずいデータの消去等を行ったりはしたように思う。勿論、ヴェーダが世界中のネットワークそのものを本体とする分散型コンピュータだからといって、全てのヴェーダの機能やデータが世界中のどこからでも取り出せるはずはない。太陽炉やガンダム、マイスター等に関する極秘情報は、メインターミナル内にしか存在せず、厳重にアクセス制限がかけられているはずだ。


しかし、ヴェーダは世界中の情報を収集し続けており、その情報量は膨大でしかも保管管理すべきデータは常に増え続けていて減る事はない。ヴェーダにとっては、昔の情報だから消去して忘れて良いというものではなく、常に新しい情報は入手して蓄積し続けなければならないのだから、物凄い大容量のデータバンクが必要となる。それをいくら数百年進んだ技術による高性能な装置とはいえ、ヴェーダのメインターミナル一台で賄おうとするのは非合理的だ。ネットワーク全体の情報を監視して管理はすれど、世界のネットワーク上に元々在るデータは、世界のネットワーク上のどこかにそのまま置いといて、必要に応じて取り出した方が効率的だ。


ヴェーダはいちいち世界のネットワークに潜り込んでデータ収集するのではなく、恐らくネットワークそのものを自分自身として密かに全体を統括しているようなイメージの存在なのだと思う。世界中のメモリ/ストレージ容量がヴェーダの容量とも言える。世界中の様々な電子機器にヴェーダの端末としての最低限の機能が実装されている。それとは気付かずに世界中の人々は機器を使っている。世界中のどこにでもヴェーダの目があり耳があり、淡々と情報を集めているのではないかと思う。