アレハンドロ・コーナーは表向きにはユニオンの国連大使という職に就いているが、裏ではソレスタル・ビーイングの創設にも関わり、その後も代々「監視者」を努めてきたコーナー家の末裔である。CBの創設は200年ほど前であろうと思われるので、アレハンドロは少なくとも、コーナー家がCBと関わり始めて数代目となる党首だろう。


アレハンドロはこの度のCBに対する謀反というか、計画の乗っ取りを「コーナー一族の悲願」と称していた(1st第25話「刹那」にて)。この言い方からしても、アレハンドロが一代単独で企てたことではなく、数世代前から一族上げて画策してきたであろうことが窺える。その意味ではCBも腹黒くて厄介な存在をメンバーに選んで抱え込んでしまったという事になる。こんなヤツラを引き入れちゃって、監視者・支援者の選考基準はどうなってるんだ!?ヴェーダかイオリアの選考ミスか?


もっとも、コーナー家も最初から悪だくみしていたとは限らんのだけど。もしかしたらCB創設当初のコーナーさんは、もっと志高く本気でイオリアの平和への願いに賛同して参加したのかも知れない。しかし、世襲的に代々監視者の座を受け継ぐ内に、初代の志は次代へと完全には受け継がれずに薄れ、徐々に本懐から外れて野心や欲望だけが膨らんでいったのかも?しかも、アレハンは年齢的に生前のイオリアとは直接の接点ないであろうに(直接イオリアに何かされたワケでもないだろ?)、やたらとイオリアへの敵対心を露にしているのがスゴイ。イオリア亡き後(コールドスリープ後)にまで、延々と恨み嫉み妬みを代々言い伝えてきたのかコーナー家よ?粘着質だのう。


【アレハンドロのイオリアへの憎悪を表す言動】

コールドスリープ中の死体同然のイオリアに拳銃を全弾打ち込み、弾切れになってもなお嬉々として引金を引き続け高笑い。イオリアを「神を気取る不遜な理想主義者」と呼び、マイスター(刹那)を「忌々しいイオリア・シュヘンベルグの亡霊共め!」とまで言う。


思うに、イオリア本人がコーナー家に対して、そんなに恨みを買うような酷い仕打ちをしたとは考えにくい気がする。あり得るとすればコーナー家をもっとCBの重要な地位につけろと要求したのを、イオリアやヴェーダから淡々と却下された事などへの逆恨みか?CB創設時に資金面等で十分な貢献をしたというのに、それに見合う見返りや待遇が得られなかったことへの不満を募らせて来たとか?監視者という立場はCBの中では特殊な権限を持っていて、唯一CBの活動やヴェーダの判断への拒否権を行使出来る存在だ。ただし、それは監視者全員の総意がなければならない。コーナー家はこれに関しても不服だったのではなかろうか。何よりも、CBの中であらゆる面で本物の高みに君臨する絶対的な地位(理念の象徴)に立つイオリアへの、嫉妬とコンプレックスが大きな根源のような気がするけど。


もっとコーナー家の意向を計画に反映させる権限を求めていた。いや、あわよくば計画そのものの主導権をコーナー家が握って、世界への影響力(支配力)を欲しがっていたのだろう。これこそが、恐らくはコーナー家が代々抱き続けてきた野望なのだと思う。まぁ「悲願」というほどの悲壮で切ない思いとは言えん気がするが。代々の資産家が財力の次に特権的な権力を欲しがる、勘違いの選民主義的と俗物的な欲望・野心に過ぎないように思う。


ただ、その野心にかける熱意だけはコーナー家は凄いモノがある。なにしろ、第17話「スローネ強襲」にもあるように、80年前のアレハンドロのご先祖の代に、6年間もかけて木星軌道上の有人探査船エウロパ(GNドライヴ製造完了後破棄された製造施設)にまで、遠路遥々わざわざ行くんだから。その目的は勿論、イオリア計画の要の一つとなる、GNドライヴに関する何らかの手がかりを得る為だろうが、確実に情報入手出来る保証もない(むしろ可能性は低い)のに、ここまでするのは相当な執念だ。そのお陰で運良く紫ハロを入手出来たのだけど…CBの証拠隠滅操作も結構甘いもんだ。


また、いくら運良くデータを入手出来たとは言え、CB本体に隠し通したままで擬似太陽炉やその搭載モビルスーツを開発するのも、相当な資金、施設、人材等々が必要なはず。ある意味CBが行ってきた事と同様のことを、小規模ながらも独自にやってのけたと言っても過言ではない。同じ監視者のラグナ・ハーヴェイの協力があったり、リボンズ・アルマークというイノベイドの誘導が後押ししたとしても、その行動力や実現力、資金力は並ではない。動機は邪だし、人間としての器量は小さくて成金趣味で胡散臭いコーナー家(金ピカ好きはアレハンドロだけかも知れんが)ではあるが、その野望に対する執念は大したもんだと思う。