世界的にも高名なユニオンの技術者レイフ・エイフマン。ビリーとクジョウ(スメラギ)にとっては、学生時代の恩師でもあったようで“教授”とも呼ばれていた科学者、研究者。材料工学や機械工学の権威でもあり、専門分野の知識のみならず、優れた洞察力や見識も見せており、かなり有能な人物だったと思われる。ある意味、イオリア・シュヘンベルグの才能や思考に、最も近いレベルで肉薄出来る能力を持つ人間だったようにも思える。対ガンダム調査隊(仮名)の技術主任となり、グラハムの駆るフラッグのカスタマイズ(高性能化)などを行う。


GN粒子及びGNドライヴに対する独自の分析、研究を進めており、既にある程度の核心に迫る仮説も立てていたようである。1stシーズン中盤の第11話「アレルヤ」の段階で、既にGN粒子が多様性変異フォトンであることを解明。ガンダムの航続距離や作戦行動時間の長さから、ガンダムは機関部(つまりGNドライヴ)でその特殊粒子そのものを製造していると推測していた。


そして第17話「スローネ強襲」では、ガンダムのエネルギー発生機関がトロポジカルディフェクト(※)を利用しているなら、ガンダムの機体数が少ない理由も200年以上の準備期間を要した事も全て辻褄が合うとまで読み、GNドライヴの製造が可能な環境が木星であることまで気付いてしまった。約120年前にあった有人木星探査計画がガンダムの(正確にはGNドライヴの)開発に関わっていた可能性にまで辿り着いて…そしてその直後に核心に迫り過ぎてスローネからの襲撃を受けて殺害されてしまうのだが。恐らくはリボンズないしアレハンドロが、GNドライヴの秘密がユニオンに知られるのは時期尚早とみて口止めの為に暗殺を謀ったんだと思われるが。


(※)トロポジカルディフェクトは本来はトポロジカルディフェクト(位相欠陥)ではないかという話もある。


絹江・クロスロードの場合と同様に、このまま行けばGNドライヴやガンダムの謎を解明してくれるのではないかという期待が膨らむ存在だっただけに、早々に舞台から引きずりおろされてしまったのが非常に残念、無念な人物である。当初はガンダムに対抗出来るモビルスーツを開発するのもエイフマン教授に違いない!と感じさせられていただけに、教授の死によって解明されつつあった謎が再び闇に埋もれてしまうのが惜しくて仕方なかった。もしも、教授がこの後にも活躍し続けていたらどうなっていただろう?とワクワクさせられるに十分な知力を持ち合わせた人材だっただけに、非常に勿体無いように今でも思う。


エイフマンはGNドライヴ等の技術的な面だけでなく、CB=イオリア計画の真の目的にも鋭い洞察をめぐらせ肉薄していたようだ。


第7話「報われぬ魂」の時点でCBの武力介入は「悲しいな、どんな華やかな勝利を得ようと、ソレスタルビーイングは世界から除外される運命にある」「まるで、それを(滅びの道を)求めているかのような行動じゃ」と言い、今行われている武力介入の行く末が、CB自身にとってそんなに華々しい末路ではない事を予見。事実、ガンダムマイスターには自らが世界共通の敵となって各国を一つにまとめる狙いがあり、計画の選択肢の一つには、CBが世界の標的となって滅びる事も視野に入っていたようなので、教授の読みは決して外れていない。


また、第11話「アレルヤ」の時点で、CBの目的に関して「紛争の火種を抱えたまま宇宙に進出する人類への警告…そうわしはみておるがな」とまで予見していた。これはまさに、紛争をなくし世界統一を図った上で、人類は外宇宙進出による来るべき対話に備えるべしというイオリア計画の主旨に合致することであり、ある意味この時点(ガンダム00全50話中11話の段階)で、エイフマンはイオリア計画のネタバレまでして見せちゃったという状態で。げに恐ろしきはイオリア以上にエイフマンという感じだ。エイフマン暗殺は、実は早期のネタバレを恐れた脚本家か監督の差し金か?なんて(嘘)。


第17話「スローネ強襲」において、120年前にあった有人木星探査計画がガンダムの開発に関係していたとすればの話で、「だとすれば、やはりイオリア・シュヘンベルグの真の目的は、戦争根絶ではなく…」なんて言っちゃうし。そこでセリフは途切れるわけだけど続きが気になる!!エイフマンはその後何を言おうとしていたのか?やっぱ全てお見通しだったのか?ただ、有人探査計画に引っ掛けて真の目的を推測しようとしても、それが“戦争根絶ではなく”別の目的であると、直接結び付けられるモノが今になっても思いつかないんだけど…。戦争根絶はイオリア計画の中でも決してダミーや建前上の目的ではない。ただ、そこが最終目的ではないだけだ。


そして、戦争根絶の先に設定されていた目的と言えば、世界の統一、そして人類のイノベイターへの進化革新、外宇宙への進出、来るべき対話=地球外生命体との良好な関係構築。そのどれもが「有人木星探査計画」とは特別には結びつかない。木星に行かなければならない理由は、GNドライヴの製造の為…以外には特になさそうな気がするのだけれど。エイフマンもGN粒子が意志の伝達の媒体となることやイノベイターへの進化を促す点などまではさすがに言及していないし。何を言いたかったのかがイマイチわからんなぁ。


そう言えば!後に擬似GNドライヴでのトランザムをビリー・カタギリが実現するが、そのヒントとなったものはエイフマン教授が自宅に遺した手書きメモだという。どこまで先見の明のある天才なんだ!と驚きたいところだが、これは少々リアリティに欠ける無理な筋書きで脚本的にやり過ぎだと思う。何故ならば、エイフマンは死の間際までGNドライヴの本当に基礎的な原理についてアレコレ考察している段階だった。トランザムどころか、GNドライヴ自体の入手も開発も出来ておらず、当のガンダムがトランザムを使用する姿さえも生きてる時には見ていない。つまり、エイフマンの知る範囲においてはガンダム自身でさえトランザムシステムを実装しているかどうか知る由もない状態だった。その時点でのトランザムの予見というのは、少々やり過ぎだと言わざるを得ないと思う。


オリジナルのGNドライヴ+ガンダムを既に開発・運用していたトレミーの優秀な技術者イアンでさえ、トランザムの存在を知らなかったのに。