ガンダム00世界における、強化人間的というかニュータイプ的というか、人類の進化革新におけるひとつのキーワードが『脳量子波』だ。脳が送受信を行う量子波。脳量子波を使う者は周囲の状況察知能力が増したり反射速度の向上が見られたりする。また、ある種のテレパシーにも似た精神感応(意思疎通)能力を手に入れることもある。この脳量子波を使いし者として、超兵、イノベイド、イノベイターなどが存在する(後の劇場版に登場するELSも脳量子波を使える存在だが)。


しかし実は、ガンダム00世界の設定の中では、脳量子波を持つ者は別に超兵等の特殊な措置を施された人間だけじゃないことになっている。自覚こそしていないが、人は誰でも微弱ながらも脳量子波を生まれつき備えているという設定だ。超兵やイノベイド達は、その脳量子波を遺伝子操作やナノマシン投与により実効・実用レベルにまで強化拡大したものと思われる。ただ、超兵、イノベイド、イノベイターは、それぞれ脳量子波能力のレベルや獲得手段等に違いはある。


【超兵の場合】

そもそも超兵とは何か?超兵とは人革連の超人機関技術研究所によって生み出された強化兵士のこと。その研究過程には数々の非人道的なモノも含む人体実験が行われてきたと思われる。


例えば被験体E-57こと、アレルヤの場合、戦災孤児であったアレルヤに記憶消去等の措置を施した上で、人体改造手術を行って兵士としての肉体強化を行ったり、脳手術やナノマシン投与、薬物投与等でグリア細胞の強化を行い脳量子波を使えるようにしたりしているようだ。またマリー・パファシー(ソーマ・ピーリス)に関しては、受精卵に遺伝子操作を加えて生み出したデザインベイビーらしい。その後やはり後天的に脳改造手術や投薬等を行い、脳量子波の実験体にされていた。当初は強力な脳量子波を持つ代わりに、五感を失い身動きすら取れない状態だったが、後に別人格を上書きされ、五感の復元を施されて、超兵1号として初の実戦投入事例となる。


何故マリーの五感が麻痺していたのかはわからないが、もしかすると超人機関の研究者によりわざと五感を失わされていたのかも知れない。視聴覚等の五感を全て失う事で、より一層第六感とも言える脳量子波を研ぎ澄ます実験だったのかも知れない。事実、マリーとアレルヤの初対面は、偶然を装いながらも実は研究者によって終始監視されていたような描写があるし。そう考えれば、その後別人格のソーマピーリスを仕立てた際に、五感を完全に復元出来た理由も納得いくような気がしている。


超兵の脳量子波能力は、改造手術や投薬等による強制的なグリア細胞の強化によるもので、ソレスタルビーイングの持つイノベイドの技術よりは技術レベルは低く遅れていると思われる。その為一般人よりは遥かに高い能力ではあるが、イノベイドに比べると不完全で弱いと思われる。イノベイドやイノベイターが脳量子波を使用している際の描写に目の虹彩が金色に輝くという表現があるが、ハレルヤやマリーは目の色こそ金色だが、イノベ特有の光を放つ描写はない。また、GN粒子の存在とは無関係な技術にて生み出されていることから、超兵の脳量子波にはGN粒子は直接は関係がない。


【イノベイドの場合】

イノベイドはイオリア計画の遂行の下に、CBの保有する独自技術で生み出された人造人間である。生きてる人間を改造した存在ではなく、人間の遺伝子を用いて人工的に培養されたクローンに近い存在だと思われる。その為、オリジナルの遺伝子提供者がいて、その人物に容姿等が似ているらしい。イノベイドは最初から脳量子波を使えるようにヴェーダにより遺伝子設計をされて生み出されるものと思われる。その設計により、通常の人間にはない特殊能力を付与される場合もある。さらに体内に特殊なナノマシンが仕込まれていて、これにより体力強化や体調維持(宇宙環境への適応等)、老化の抑制等がなされているようだ。


脳量子波に関しては、リジェネのセリフによると「GN粒子を触媒とした脳量子波領域での感応能力」とのことで、意識を伝達する原初粒子=GN粒子の応用技術により作り出された能力である事が垣間見れる。イノベイドはイノベイド同士での意思疎通や、ヴェーダとのリンクを脳量子波によって行う。脳量子波を使用中には、その瞳は金色に輝きを見せる。


【ネーナ・トリニティの場合】

トリニティ三兄妹は、アレハンドロによってチーム・トリニティのガンダムマイスターとなるべく生み出されたデザインベイビーである。後に劇場版でネーナと容姿がそっくりなミーナ・カーマインという女性が登場したことにより、トリニティ三兄妹にも、ベースとなる遺伝子提供者(ミーナ本人ではなく同じ家系の人間)がいたことが明らかとなった。


トリニティ三兄妹に関しては、三人ともデザインベイビーだとは思われるが、三人とも脳量子波が使えたかどうかは定かではない。確実なのはネーナにはイノベイド同様の脳量子波があり、目が金色に光ったり、ヴェーダとのリンク能力が確認されている。チームトリニティの捨て駒的用途からすると、無闇に全員がヴェーダとリンクされても困るので、もしかするとネーナだけに与えられた能力かも?


トリニティは、アレハンドロによってリボンズの細胞を分析したデータにより得た技術で作られたらしく、恐らくネーナの脳量子波能力に関しては、イノベイドと殆ど同等だと思われる。ただ、ネーナを見る限り1stから2ndシーズンまでの4、5年で明らかに容姿に変化(成長)が見られる為、イノベイドと同等の老化抑制は施されていない可能性が高い。また、アレハンドロやリボンズの道具として利用されていたネーナなので、脳量子波レベルでは同等でも、ヴェーダへのアクセス権に関しては同等ではなかったのでは?と推察する。要は見られても構わんところにしかアクセス出来ないようにリボンズが統制してただろうと。


【純粋種イノベイターの場合】

刹那やデカルト・シャーマンの例を見ればわかるとおり、純粋種のイノベイターへの覚醒は脳改造手術やナノマシンや投薬による遺伝子操作などではない。高純度高濃度なGN粒子の影響を受けることによって、細胞自身が自然に(?)進化・変革を遂げてイノベイターへの覚醒が起こる。脳量子波が使えるようになり、老化の抑制や長寿命な人類に生まれ変わる。こちらもイノベイド同様にGN粒子が関与しているせいか、脳量子波使用時には目が金色に輝く。


ヴェーダの生態端末としてヴェーダ自身に作られたイノベイドとは異なるので、イノベイターとして覚醒し脳量子波が使えるようになったからといって、いきなりヴェーダへのアクセス権を取得してヴェーダとのリンクが出来るようになるわけじゃない。ヒト自身の能力が進化して高まり、宇宙環境にも適応可能な強靭、長寿命な人類となるのだろう。そして、脳量子波の送受信能力を得ることで、超兵のような能力強化と共に、同じく脳量子波を持つ者同士での意思疎通能力が高まるものと思われる。


まぁある意味これも“ニュータイプ”っちゅう気もするが。



※番外

【ルイス・ハレヴィの場合】
ルイスも時々目が金色に光り、脳量子波を使えるようになっていた思われる。しかし、彼女の場合は上記いずれとも異なり、リボンズによって与えられた錠剤の服用により少しずつ体質変化を来たしたと思われる。ルイスは以前ネーナの気まぐれな憂さ晴らし攻撃により、擬似GNドライヴの粒子を受けて細胞の代謝障害を患うようになってしまった。建前上、リボンズから与えられている錠剤は、この細胞障害の抑止ないし治療薬として服用されているのだろう。まぁ恐らくは、それ自体も全くの嘘ではなく、細胞障害の進行を抑えて、体調改善には役に立っていたように思う。


しかしこの錠剤には、他にもルイスをイノベイターへと徐々に変革させる為のナノマシンも含まれていたと思われる。これは別にリボンズが親切心からルイスを進化させて、上位種へと導いて救おうとしたわけじゃなかろう。恐らくは今後の人類支配・統制の為の人体実験だろう。また、ルイスの心の中に巣食うガンダムへの復讐という愚かな感情を面白がって、自分の手駒として利用する意図も窺える。ルイスを筆頭に今後人類をイノベイターとして進化させる理由は、イオリアの計画とは似て非なるモノだと思う。恐らくルイスにも行ったとおり人類をリボンズの脳量子波によって意のままに操れるように仕立てる為では?


リボンズはルイスの事も、アニューを初めとする他のイノベイドの事も、その思考をヴェーダと脳量子波を使って読み取ったり、乗っ取ったりしていた。それを全人類に行えるようになれば、リボンズの野望はたやすいものとなる。