GN-001 ガンダムエクシア。主人公 刹那・F・セイエイの乗る作品世界を代表する主役機のひとつ。武装として7本の剣を持ち、ガンダムセブンソードの開発コードネームを持つ機体。一応両腕にGNバルカンや、GNソードにライフルモードを備えるなど、射撃による攻撃も行えるが、主としては剣による近接格闘戦を主眼に置いた設計。主役機なので作中の描写上最も活躍した機体となっているが、さてCBの武力介入における戦略的な存在価値はどれほどであったろうか?


CB保有のガンダムは、どの機種も基本的には汎用性が高く設計されている。というのも、1stシーズンにおけるCBの武力介入は、基本的に4機のガンダムという少数精鋭の限られた機体数のみで遂行される。たった4機で数々の状況に応じたミッションに対応しなくてはならない為、自ずと汎用性が要求されるのは明白。同じミッションに4機を同時に投入出来ない局面も想定される為、各機共にある程度は単独で一通りのことが可能なようにはなっているはず。つまり、格闘戦用のエクシアにも射撃用装備は用意されているし、長距離狙撃や支援を主眼に置いたデュナメスにもビームサーベルが装備されているのはその証だ。


しかし、ある程度の汎用性を確保しているとはいえ、それでも各機種に得手不得手があるのは事実だと思う。また、各機種のパイロットが専属であることも運用上の得手不得手を顕著にするはず。例えば、普段から格闘戦を主体として戦っている刹那は射撃がそんなには得意じゃない。元々得意じゃない上にエクシアは射撃戦に向いているとは言い難く、可能な限り射撃で雌雄を決する戦い方は避けようとする為、余計に刹那は射撃経験を積みにくいという循環になるはず。刹那とエクシアというパッケージは、戦力としてはどうしても近接格闘戦以外の面では大きな期待は寄せられない事になる。


事実、1stシーズンにおける初期の武力介入においてはエクシアは獅子奮迅の活躍を見せるが、その後擬似GNドライヴを搭載したGN-X部隊が敵の主力となるにつれて、エクシアの格闘戦は段々あまり役に立たなくなり始める。まず、エクシアは元々対空能力は高くない。GNドライヴによる質量軽減効果や重力制御、慣性制御により従来の航空機にはない柔軟で小回りの効く動きは可能だが、実は飛行速度そのものはイナクトやフラッグに比べても決して高速とは言えない。実際に第一話でのAEU ヘリオン部隊とエクシアの空中戦においても、ロックオン曰く「さすがの刹那でも手を焼くか」と言われてしまうほどで、旧型機相手でも1対複数での対空戦ではエクシアはあまり性能を生かせるとは言えない。


エクシアが最も縦横無尽に活躍出来た場面と言えば、アンフやティエレン等の動きの遅い敵機を相手にした地上での格闘戦だ。エクシアは各関節部の稼動が柔軟で広く、運動性においては他機を圧倒している。地上における移動速度は速く、姿勢制御も非常にバランスがいい。まさに人型兵器ならではの、鍛え上げられた人間同等の動きを再現出来ると言っていい。また、1対1でのガチンコ勝負にも強味を発揮する。相手が多少強敵であっても、1対1で敵を絞り込んで集中的に追い込むのに関しては、近接格闘戦用のエクシアは無類の強さを発揮すると思う。


ただ、そういった地上戦や1対1でのガチンコバトルは、ガンダム00の世界ではそう多い場面(戦場、局面)とは言えない気がする。当初の武力介入時では、国家間や民族間の紛争やテロリストが相手だった為にエクシアが本領を発揮出来るシーンは多かった。しかし三大国が手を結んでCBへの対抗を本格化し始めると、敵機には航空戦力が主力として投入されてくるし、戦闘は1対1には滅多にならず、1対多数の戦いになる。エクシアは高速で移動する敵機に囲まれて撹乱されると弱いと思う。刹那はGNダガーやブレイドによる投擲を得意としているが、その数は投げてしまうには少な過ぎる。バルカンは攻撃というよりも主に牽制用としての威力しかない。GNソードのライフルモードも、剣と一体となっている為取り回しはそんなに良いとも言えず、命中精度や威力、連射性能に関してもライフルとは名ばかりの“ピストル”程度の武装だと言える。空を飛び回る数多くの敵機相手に戦うにはエクシアは向いてないのだ。


1stシーズン後半から2ndシーズンにかけて、主戦場は宇宙空間へと移って行った。また、敵戦力も擬似GNドライヴ搭載型で機動力の高い敵機が数多く投入されるようになる。こうなるとエクシアタイプの設計思想のMSの得意場面はますます減ってくる。エクシアに装備された実体剣は、GNフィールドを持つアルバトーレ、アルバアロンとの一騎打ちでは本領を発揮したが、エクシアの戦略的・戦力的価値はその後を戦い続けるにはそろそろ優位性を失ってきていたと言えると思われる。事実上、エクシアの後継発展機という位置づけの主役機ダブルオーガンダムは、エクシア同様に実体剣装備ではあったものの、GNソードⅡ、Ⅲは武装としては射撃兵器寄りの機能を高めている。ダブルオーはエクシアのままの正常進化形というよりは、やや飛行能力と射撃戦を重視した設計に変更されているような気がしている。


特に、オーライザーとドッキングしたダブルオーライザーに至っては、既にその姿では地上での近接格闘戦には不向きだろう。むしろ戦闘機のような戦い方がダブルオーライザーの本懐に見える。エクシアのコンセプトは既に役目を終えていたと言えるだろう。