GOOD THANG フェイズ・オー | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森-May28FazeO

◎GOOD THANG

▼グッド・サング

☆Faze-O

★フェイズ・オー

released in 1978

CD-0409 2013/5/24


 フェイズ・オーの2枚目のアルバム。


 AtlanticR&B1000円シリーズで気に入ったCDを取り上げるミニ企画。

 第4弾が出たのはひと月前ですが、その中から買ったいちばん気に入っているCDを今日は取り上げます。


 レア・グルーヴ Rare Groove

 最近よく目や耳にする言葉ですが、僕もよく知らなかったので、wikipediaから抜粋し引用者が一部手を加えた上で紹介します。


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 過去の音楽を現在の価値観で捉え直す際、当時には評価されなかった楽曲の価値が新たに見出される場合がある。

 その楽曲は、現在の音楽においては、音楽面において珍しいだけでなく音源の流通という側面においても非常に珍しい(希少価値がある)存在である。

 このように、現在の新たな価値観で「踊れる、のる事ができる」ものとして発掘され、再評価を受けた過去の楽曲の事を、「珍しいグルーヴ(を持つ音楽・楽曲)」として、レア・グルーヴと呼ぶ。

 主にヒップホップやクラブミュージックの分野で多用される用語である。

 元々は1985年にDJのノーマン・ジェイの番組を通して紹介された事で知られる。

 「過去の音楽」といっても広範かつ様々であるが、代表例として挙げられるのは1970年代にアメリカ各地で録音された、現在では比較的判り辛く見つけ難いファンク、ジャズ・ファンク、ソウル、ソウル・ジャズ、ジャズ・フュージョンなどである。

 無論、過去の音楽はこれらに止まらず、世界中の過去の音楽がレア・グルーヴとして見出される可能性を秘めている。

 通常ダンスミュージックとして見られていない音楽であっても、レア・グルーヴとして発掘され、ダンスミュージックとして再評価される事がある。

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 惜しくも最近死んだ天皇賞を勝った競走馬ではないのはお分かりでしょう、と、想定内の冗談でも入れて先に進みます(笑)。


 過去の音楽を再評価するというのは、堅苦しい表現だけど実は音楽が好きな人であれば日常的にやっていることではないでしょうか。

 僕のBLOGも、新譜も書くけれど、基本はその立場でいます。

 だから、好きじゃないものは、幾つかの例外を除いて取り上げません。


 今回お題のフェイズ・オーというバンドがそこに含まれるかどうかは分からないのですが、僕は、このバンド、今回CDを買うまで名前すら知りませんでした。

 だから、少なくとも僕にとってフェイズ・オーはレア・グルーヴということになります。

 僕はソウルを真面目に聴き始めてまだ年が浅く、ファンク系はさらにほとんど何も知らないので、僕が知らないだけの可能性はありますが。


 これがとっても気に入った。

 

 名前すら知らない過去のアーティストをこれだけ気に入ったのは、ほとんど初めてじゃないかな。

 その点も僕にとってはレアな体験ではあります(笑)。


 よく知らないアーティストだから、帯のたたき文句を書き出してみます。


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 アトランティック傘下の「SHE」レコードから発売された

 オハイオ出身ファンク・バンドのセカンドアルバム


 オハイオ・プレイヤーズの弟分で、同バンドのクラレンス・サッチェルが制作を担当したフェイズ・オーの第2弾。

 アルバム・タイトル曲〈グッド・サング〉は熱いヴォーカルが吠えるミッド・テンポ・ファンクで、R&Bチャート43位にくい込むヒットを記録。

 ムーグやシンセが近未来間を演出する〈スペース・ピープル〉、ベースが躍動するハイテンションの〈ファンキー・レイディ〉と、レベルの高いファンクが矢継ぎ早に繰り出される。

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 オハイオ・プレイヤーズの弟分というのは、エロティックなジャケットからも想像できますね。

 兄貴分ほどえげつないものではないけれど、お子さんには刺激的なのは間違いない。

 オハイオ・プレイヤーズはベスト盤を数年前に買ってかなり気に入りましたが、オリジナルアルバムとなるとそのジャケットに抵抗があってなかなか買う踏ん切りがつかず・・・


 ちなみに、このフェイズ・オーをジャケット買いしたのかと言われると、残念ながらNoとしておきます(笑)。


 レアかどうかという話をもう一度だけ蒸し返すと、これは一応ヒットチャートにくい込んだということは、レアというほどでもないのかな。


 でも、音的には上記「レア・グルーヴ」の流れにあるのは感じました。


 ただ、1978年というディスコ真っただ中の頃の割には、ディスコっぽさが薄かったのが意外でした。

 買って暫くはブックレットや帯などを見ずに聴いていましたが、これは最初のうちは、1973、4年くらいなのかなと思っていたくらい。

 まあ、帯くらい最初に読めよ、と言われればそうかもしれないけれど・・・


 しかし、年代的にディスコでかかった音楽の類であるのは間違いないでしょう。


 どうしてかと僕なりに考えたところ、この手のファンクは、ディスコが流行る前からのりの良さを追求してきたものであるから、ディスコが起こったところでその流れに乗る必要はなかったのではないかと。

 ファンクとしての矜持といえるかもしれない。


 ロジャーの記事で書いたように僕はファンク系はほとんど未開拓で、ファンクって大づかみにいえばロックとソウルの間くらいの音と今のところは認識しているのですが、まさにそんな感覚で今の僕にはすっと入ってきました。

 もっとも、今の僕はファンク系自体に反応しやすくなっているのですが、でもやっぱりこれ自体が素晴らしいに違いない。



 1曲目Good Thang

 ファンクって、つい最近真面目に聴くようになる前までは、勢いがあって跳ねた音楽というイメージでいました。

 ところがこれはそうではない。

 ミドルテンポでジャズ的なものを微妙に感じる。

 しかし、リズムの粘りは感じますね。

 きっとそれもファンクの重要な要素なのでしょう。

 コーラスが印象的で小ヒットしたのは頷ける佳曲。


 2曲目Who Loves You

 2曲目も同じようなテンポでリズム感覚、曲もよく似た感じ。

 「チャカチャッ」というギターのカッティングがリズムの粘つきを強調している。

 この人たちは、熱い、という感じがあまりしない、割と理路整然とやっている感じがして、「理性的なファンク」、と勝手に名づけさせていただきました。

 そういえばビリー・ジョエルのIt's Still Rock And Roll To Meの歌詞に"cool funk"とあるけれど、それはこうした音楽が念頭にあったのかな、と今更ながらにして思う。


 3曲目Space People

 『スター・ウォーズ』の当時は、よっぽど宇宙が流行っていたんですね。

 でも宇宙に飛びついたのはなぜか黒人音楽が多い。

 この曲はテンポが速めでキレ味鋭く押してくる、元々の僕のファンクのイメージに近いスタイル。

 Bメロの展開とラッパの音が70年代を強烈に感じ、聴いたこともないのになんだか無性に懐かしい響き。


 4曲目Party Time

 再びテンポを落として、この辺はファンクとソウルの中間的な、普通のヒットソング的な曲。

 やっぱりおとなしい人たちで、オハイオ・プレイヤーズの弟分というのがちょっと信じられないくらい。

 なんとなく、"Peace of mind"という言葉をファンク流に音で表したような穏やかさを感じ、パーティだからといって弾けてはいない。


 5曲目Love Me Girl

 ピアノで始まるソウルバラード。

 こうなるとソウルだかファンクだか分からないけれど、多分、やっている人たちも、基本はあまり気にしていないのではないかと・・・

 この人たちは、ファルセットもコーラスもラッパの音も派手にやりすぎない。

 この曲なんて、途中のトランペットをもっとあざとくやることもできたのではないかと。

 だから音楽市場ではいまいちつかみが弱くて売れなかったのかもしれない。

 しかし、そうした音楽は、時代と切り離されたところで良さが見えてくる、という例でしょうね。

 

 6曲目Funky Lady

 最後はラッパとリズムセクションの短い2音の後いきなり"Dance!"と勢いよく飛び込んできて曲が始まる。

 この最初の"Dance"がまた強烈に70年代後半を感じずにはいられない。

 アルバムの最後らしくすべてを総まとめしたという盛り上がりを見せ、ヴォーカルもそれなりに力んでいるし、ラッパを含め演奏も威勢がいい曲ではある。

 でも、やっぱり、どこか理性的であり、羽目は決して外さないといったクールさがあるのがいい。

 そうか、僕はそこが気に入ったのかな。

 アルバムとしても流れがいいし、連装CDプレイヤーでこのCDに回るとほとんど無意識でそのまま聴き続けているくらいに気に入りました。


 

 リットーミュージックから『レア・グルーヴAtoZ 完全版』という本が最近出ました。

 先日、タワーレコードに行った際にその本を見つけ、ぱらぱらとページをめくって見たところ、知っているバンドがほとんどない・・・

 最近ファンクを聴き始めた身には、とんでもなく奥深い巨大なブラックホールのように感じました(笑)。
 僕は本も好きだから、本としてそれを買おうかと思いつつ、やっぱり最初はなんだか恐れ多くて・・・
 
 AtlanticR&B1000円シリーズは、僕にまた新たな音楽体験をもたらしてくれました。

 CDが売れなくなったと言われて久しいけれど、こういう企画にはまだまだ可能性を感じます。

 この秋、また、第5弾、第6弾を期待したいものです。

 

 ところで最後に、今回これで、8枚も続いた1980年代の渦から漸く抜け出すことができました(笑)。