THE SAGA CONTINUES... ロジャー | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

自然と音楽の森-April18Roger


◎THE SAGA CONTINUES...

▼サーガ

☆Roger

★ロジャー

released in 1984

CD-0393 2013/4/18


 ロジャーのアルバムを今日は取り上げます。


 これがいい!

 ここ1年くらいに買ったCDのうち、ほとんど聴いたことがない人のもので、1回聴いてここまで気に入ったCDはなかったんじゃないかなあというくらい。


 買ったきっかけは、ごめんなさい。

 弟がタワーレコードのサイトでたまたまこのCDを見つけて、ネットを見るのに使っているKindleの画面を、「なんだこのジャケットは」と笑いながら見せてくれたこと。

 確かに・・・(笑)・・・

 ショートアフロとでもいうのでしょうか、短くてもアフロはアフロでいいのかな、申し訳ない、くすっと笑ってしまった。

 

 でも、ロジャーは聴いてみたい人だったので、すぐに欲しくなり、ネットで在庫を調べると札幌のPIVOT店に在庫僅少とあって、急いで翌日買いに行きました。

 ワーナー・ミュージック・ジャパンにはタワーレコード限定で再発しているカタログがあり、これもその中のひとつ、2012年リマスターとなっています。


 ロジャーといえば僕の世代では何といっても、♪あぁ~ぃうぁなびよぉぅまぇん (あわ~なびぃよぉまぇん)、1987年のI Want To Be Your Manの大ヒットで語られる人でしょう。

 それ以前から、それ以降も好きな方に言わせれば違うとなるのでしょうけど、ヒット曲は時代の指標でもあるから。

 僕も当時その曲は結構(かなり)気に入り、割とすぐ後に中古CDを買いましたが、でもそこから先には進んでいませんでした。


 その曲はボコーダーが使われていますが、当時ですら時代遅れになりかけていたその声がかえって強烈な印象を残しました。

 僕の中では、ボコーダーを使った曲といえばそれとホワイトスネイクのDay Tripperが双璧をなしていますが、今回このCDを聴いたことを弟に話すと、弟は開口一番「やっぱりボコーダー使っているのか」と言われたくらいに(笑)。


 さて、ロジャーはほとんど初めてに近いので、先ずはWikipediaで人となりを簡単に調べてみます。

 

 ***

 ロジャー・トラウトマン Roger Troutoman

 オハイオ州ハミルトン生まれ。

 自身の兄弟等とザップを結成、ブーツィー・コリンズらP-Funk勢の助けを得てデビュー。

 ロジャーは後にソロ活動や他のアーティストのプロデュースも行う。

 1999年に射殺体で発見される。

 兄弟のラリー・トラウトマンによって殺害されたと伝えられている。

 ***

 

 亡くなったことはネットの記事で見た記憶がありますが、もう14年も前のことだったか。

 それにしても"Troutoman"、「鱒男」ですか、インパクトが大きな名字だなと。

 思わずキャプテン・ビーフハートの「複製鱒仮面」のジャケット写真を連想し、頭の中でシューベルト弦楽五重奏曲「鱒」が鳴り出します(笑)。


 なんて余談はもういい。 

 だいたいどんな音楽の傾向かは上記の短い文章からもなんとなくつかめるかと思いますが、今度は、今回のCDの帯の文句を全文ママで引用します(改行は引用者が施しています)。


 ***

 ザップの3作目以降、ニュー・ホライズンズ、ディック・スミス、ボビー・グローヴァー、ヒューマン・ボディなどを次々とシーンに送り出し、かつてのPファンク王国に匹敵するファンク王国を 築いたロジャー。

 そのロジャー王国の多彩な才能が大集結したソロ名義2作目。

 十八番のトーク・ボックス・ヴォーカルはもちろんソロ名義ならではのブルージーなギタープレイも満載!

 ***


 そうか、ボコーダーではなくトーク・ボックス・ヴォーカルというんだ。

 今回の記事は僕自身も勉強しながら書いていますので、そこはどうか見捨てずにお付き合いいただければ幸いです。

 

 今回、このアルバムを聴いてイメージとしては、大ブレイクする前のプリンスに近い音だなあと感じました。

 すいません、今日は謝ってばかりですが、どうしてもプリンスを引き合いに出してしまうことは、僕に音楽知識及び語彙力が足りないことに免じてどうかお許しいただきたいと思うしだいです。

 この手の音楽を僕は、プリンスとキャメオ Cameoのベスト盤くらいしかCDを買って聴いたことはなく、1980年代にはこういう音楽が流行っていたという記憶はあるけれど、それくらいのもの。

 だからまずもってこの音楽が新鮮でした。


 プリンスの特徴である穢れを浄化しようという部分が感じられない、ロジャーは元々きれいな人なんだろうなと、というのが僕が感じたプリンスとの違いかな。

 ジャケット写真を見ると無垢で素直そうな人だなとは思うし。


 ただ、1984年といえばプリンスはかのPURPLE RAINでもっとロックぽさを増した頃であり、こちらは、そのプリンスほどまでは飛び出していない純粋なファンク路線ではあります。


 一聴すると時代を感じる軽いブラコンだけど、音のリアルさ、確かさなどから、本質的な黒さを失っていないことが感じられます。

 正直、僕はまだ10代だった当時、この手の音楽がどう評価されていたのか分からなかったのですが、それはきっと、ひとつには、白人におもねっていない純粋な黒さだと思いました。

 全体の流れがそうなっていたからといって、純粋な黒さを持った音楽は決して消えることがなくつながっていたということなのでしょうね。

 ソウルを聴くようになってそれが分かってきました。

 そして今は、そんな音楽がひたすらクールで大好きな自分にも気づきました。



 1曲目In The Mix

 おもむろにキーボードで始まるのは80年代らしいところか。

 ハンドクラップに乗って曲が進むのは気持ちが高揚する。

 間奏のギターが面白くてすごい。

 ペリペリぱりぱりとした音色。

 エレクトリックギターを弾く人はたいていやったことがあるのではないかな、アンプのBassとMiddleをゼロにしてTrebleはいっぱい、ギターはストラトならリアのピックアップだけにして弾くとこんな感じの音になる、そうして遊んだことを懐かしく思い出す。

 ギターは、トレイ裏写真ではGibsonSG(アーム付き)を持っているので、それを使っているのかな、このペナペナした音はそんな感じがする。

 おまけにバカテクといっていい速弾き。

 ああ、「バカテク」はほとんど死語であるのは承知で、80年代らしさを出すのに敢えて使いました(笑)。


 2曲目Play Your Guitar, Brother Roger

 ソウルからラップやヒップホップに至るまで、黒人の音楽には"brother"に象徴される仲間意識が強いことを感じますよね。

 1曲目でギターが炸裂していたところ、こちらはギターはファンクのカッティングと少しの装飾音が入っているだけ、だから「ギターを聴かせて」なのかもしれない。

 この曲はいちばん時代を感じますね。 

 コーラスというか歌メロの感じ、ディスコは通っているけれどディスコではないところなどなど。

 3曲目The Break Song

 リズムに少しためが出てきた。

 またまた引き合いに出すけれど、この音楽はプリンスほどビートが強くないかな。

 逆に"brother"的なコーラスが厚い。

 それにしても、ファンクは癖になるとよく言うけれど、この年にしてそれを初めて体験し、頭ではなく体で分かった気がしました。


 4曲目I Keep Trying
 ミドルテンポに落としたソウルっぽい趣きの曲。

 喋るように鳴り続けるキーボードが印象的。

 なんて冷静に書いてないで、はい、これ、強烈に80年代が懐かしい。

 深夜のMTV番組を見て、テレビ放送が終わり、仕方なく勉強して(一応)、窓の外を見ると白み始めた、そんなことを思い出しました。

 北海道は夏は日の出が早いのです、念のため(笑)。


 5曲目Midnight Hour (Featuring The Mighty Clouds of Joy)

 今回、決定的に打ちのめされたのはこの曲。

 おなじみウィルソン・ピケットのカヴァー、これが素晴らしい。

 男の匂いが盤面からも伝わってくるような勢いがあるウィルソン・ピケットのオリジナルから、ソフトでマイルドで素軽い世界を引き出している。

 ウィルソン・ピケットが勢いで聴かせてしまうことで見過ごされがちだったけど、そもそも歌メロが素晴らしい、それもよく分かる。

 しかもその歌メロを、ボコーダー、じゃないトーク・ボックス・ヴォーカルで歌うもんだから、こんなにもまろやかな曲だったかって「錯覚」してしまう。

 キーボードがファンクのカッティングのギターを真似ているような音を出していて面白い。

 最後に向けてのコーラスもいいし、有名な曲でもこれだけやれるんだ。

 僕が今まで聴いた(それほど多くはない)ソウルのカヴァーでも、とりわけ秀逸な出来と言ってしまいたい。


 6曲目Bucket Of Blood

 曲自体は70年代を通り越して60年代モータウンといった趣きのひたすら楽しい曲。

 超低音コーラスも入って、意表を突かれるほどにオーソドックスな曲を、音色だけ80年代風に焼き直してみたといった雰囲気だけど、古い音楽への敬意を感じられる曲は無条件で好きになる。


 7曲目T C Song

 ミドルテンポの粘つくファンク。

 コーラスやスキャットそれに叫び声などが入っているのでインストゥロメンタル曲とはいわないのかもしれないけれど、歌詞がないので歌ではない、人の声も楽器の一部としてサウンドで聴かせる曲。

 あれっ、でもタイトルが"Song"になっているぞ・・・

 自分で歌詞をイメージして歌ってくれ、ということかな。

 そういえばポール・マッカートニーのSingalong Junkも歌が入っていないヴァージョンだったっけ。

 ともかく、なんかこう、聴いていてにやけてしまいそうな曲。

 風呂上がりに聴くといいかも(笑)。


 8曲目Girl, Cut It Out (Featuring Wanda Rash)

 これはまずいことになったな・・・

 この音楽、中毒性が高いですね。

 いやあ、ほんと、くどいようだけど癖になる、癖になるからくどいこと書いてます(笑)。

 当たり前のことなんだろうけど、サビの歌メロが極めてシンプル、それがハンドクラップに乗って繰り出されてくると、頭にこびりつかないはずがない。

 いやあ、楽しい。

 そして全体に温かさ、人間味があふれているように感じられるのがまたいい。

 音楽としてはスタジオで機械を駆使しているタイプだけど、根っこの部分には生身の人間臭さを感じます。 

 

 ザップはまだ聴いたことがないので、これは買って聴かないと。


 さらには、I Wanna Be Your Manが入ったこの次のアルバムも、ワーナーであれば今のCDは音が良くなっている可能性があるから、買い直してよく聴き込みたい。

 ほぼ聴いたことがないに等しい音楽を「発見」するのは楽しいですね。

 しかし結局、まだ80年代の渦から抜け出せていない・・・

 今回のは80年代にリアルタイムでは聴いていなかったものであるにしても。

 間違いなく、僕の体には80年代音楽が染みついているんだな(笑)。