(参考:N088「エボ・モラレス、ティプニス先住民と対話」)


ボリビアのベニ県、コチャバンバ県300キロ余りをつなぐ自動車道路の建設が、アマゾン地域の先住民が居住する、イシボロ・セクレ国立公園先住民居住区(TIPNIS)を縦断し、自然環境を破壊すると反対するアマゾン先住民は、8月中旬から首都ラ・パスをめざし行進してきた。その数約1,000人。


ラパスにいたるまでには、ジュクモ共同体があり、ここはエボ・モラレス大統領を支持する農民が居住している。ジュクモ農民は、自動車道路の建設に賛成しており、アマゾン先住民のラパスへの行進を阻止するために待ち構えている。塹壕をほり、タイヤを燃やしている。警察部隊は直接衝突を回避するためにこの一週間、阻止線を張っていた。それはラパスから327キロ北東のチャパリナであった。


モラレス政府から行進団にたいして、対話を交渉する代表として派遣されたのが、ダビド・チョケウアンカ外相、セサル・ナバロ社会運動調整省副大臣らである。チョケウアンカの交渉は不調に終わったのみか、拉致され、ともに行進するように強要され、「盾」として、警察の阻止線を突破することになる。チョケウアンカが歩くことを強要されたのは4時間である。押されもみくちゃにされたとはいえ、けがはないという。


その後、チョケウアンカらは解放される。ナバロ副大臣は混乱のとき、アドルフォ・チャベスなどボリビア東部先住民会議(CIDOB)のおもな指導者がいなかったことを事件の要因としてあげた。しかしサチャ・ジョレンティ内務相は、9月26日にはワシントンの国際人権委員会(CIDH)に、外務大臣拉致について、先住民を告発するとしている。


チョケウアンカ自身は、「このような険悪な事態にもかかわらず、対話による解決をめざし努力する。対話のみが唯一の道なのだ」と語った。具体的にラパスの北とベニの西のあいだにあるキキベイでの対話などを提案している。ジュクモ農民とアマゾン先住民との衝突を避けるための努力がおこなわれている。(N094)



ラテンアメリカの政治経済


追記:9月25日、警察部隊は行進隊の排除行動をおこない、大きな衝突となった。9月26日、これに抗議して国防大臣が辞任、9月26日には、エボ・モラレス大統領は、道路建設の中断を決定した。9月27日にはサンチャ・ジョレンティ内務大臣が責任を取る形で辞任。モラレスは警察部隊に行進隊排除の命令は出していないとする。この問題はより重大化する可能性がある。詳報、後日。