(参考:0868「米州機構、ニカラグア・コスタリカ紛争で決議」)


ニカラグアとコスタリカの東部の国境は、サンフアン川とされている。このサンフアン川の主権はいずれに属するのか、また川のなかの島や潟の帰属をめぐる争いは独立以来、2世紀にわたるとされる。一般にはサンフアン川の主権は、1858年のカニャス・ヘレス条約によって、ニカラグアに帰属するものと理解されている。


したがって、この問題をめぐる異議申し立ては常にコスタリカ側からおこなわれてきた。1896年には、旧植民地宗主国であるスペインのアルフォンソ13世による仲裁裁定がおこなわれ、国連国際司法裁判所(CIJ)による裁定も、1960年、2009年とおこなわれ、いずれもサンフアン川の主権はニカラグアに帰属するとされている。


もっとも最近のものが、2009年7月13日のもので、CIJは、サンフアン川の主権はニカラグアに帰属する。その管理はニカラグアがおこなう。コスタリカは商用船に限ってサンフアン川を自由に航行することができる。コスタリカは軍事的(国境警察的)に、この川を使用することはできない、というものであった。


2010年10月21日、コスタリカのラウラ・チンチージャ政府は、ニカラグア軍がサンフアン川のコスタリカ領であるカレロ島にキャンプを置き、浚渫作業を始め、約3㎞のあらたな運河を作ろうとしていると非難した。これはこの地の塩水沼の環境に打撃をあたえ、コスタリカのエコツァーにも損害を与えるというものである。ニカラグアのダニエル・オルテガ政府は、110年来主権が認められている、ハーバー・ヘッド潟において、清掃作業をおこなっているものであり、あらたな運河を作るものではなく、作業は軽微なものであり、塩水沼に影響を与えるものではないとしている。


11月12日、コスタリカ政府の訴えによって、米国、ワシントンにおける米州機構(OEA)常任会議は、問題となる地域の主権がコスタリカにあることを前提にした、ニカラグア軍の撤退をもとめる決議を採択した。ニカラグア政府はこれを拒否した。コスタリカ政府は、オランダ、ハーグの国際司法裁判所(CIJ)にこの問題を訴えた。CIJでこの問題が審議されるのは、これで3回目となる。


2011年1月11日、ハーグ司法裁判所の審理が始まった。審理は19人(16人という報道も)の判事によっておこなわれる。まずはコスタリカからの報告書の提出がおこなわれ、そののちニカラグア側からの報告書の提出がおこなわれる。このあとにそれぞれの報告にたいする反論が提出される。コスタリカ政府は、ハーグ裁判所からニカラグア軍の撤退というような裁定が出ることを目指している。ニカラグア政府は、CIJの裁定には従うという姿勢を示している。


ニカラグアのカルロス・ホセ・アルグエジョ大使は、「どうしてずっとこの地にいたものが撤退しなければならないのか。単に小さな川の清掃をしただけだというのに」と、コスタリカ側の主張がためにするものであると語った。コスタリカのエドガル・ウガルデ・アルバレス大使は、「(紛争は)人的犠牲者をうんでいない。なぜならコスタリカは軍隊を持っていないからだ」。平和的解決を求めるが、「攻撃におびえるものではない」、と語った。「コスタリカに不当に川を使用させないことを防ぐために、国境警察部隊を増強する」計画を説明した。


一方これとは別に、グアテマラ、メキシコを調停者として、メキシコのケレタロにおいて、2国間協議が予定されている。(0922)


* この記事は、El Pais, AP, Prensa Latina, EFE, を参考にしました。