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11月21日、ブラジル政府はエクアドル駐在のブラジル大使を協議のため本国に召還した。この結果、ブラジル、エクアドルは緊張関係におちいっている。発端は9月にさかのぼる。エクアドル内ではブラジルのゼネコン、オデブレシュ社が大プロジェクトの発注を受けている。2つの水力発電所、空港、灌漑施設などである。オデブレシュ社は2007年6月にサンフランシスコ水力発電所の建設を始めたが、重大な欠陥のため、いまだ稼働できない状態にある。エクアドルは発電できないことへの賠償を要求し、オデブレシュ社はこれを拒否、コレア大統領は同社を国外追放した。ブラジル政府は仲裁者の立場をとったが、マナウス-マンタ間の大西洋と太平洋のあいだの流通路を建設する巨大プロジェクトを凍結することになった。ところでオデブレシュ社のエクアドル内でのプロジェクトの支払は、ブラジルの国営経済社会開発銀行(BNDES)がエクアドル政府に貸し出し、それが自国の企業に支払われ回収するというシステムになっている。コレア大統領は1976年から2006年までのエクアドルのいくつもの政府が外国から借り入れた結果の負債総額38億ドルについて、このなかに払うべきではない不当、不法なものが含まれていないか、国際的な会計検査機関で調査すると決定した。またBNDESからの負債にかんして、パリの国際通商裁判所(CCI)に仲裁を申し入れた。これは2004年、当時のグティエレス政権がBNDESから2億4300万ドル借り入れたものが5億5000万ドル以上の支払いに膨れ上がっていることに関してのものである。ブラジル企業のラテンアメリカ諸国との軋轢はほかにも例がある。2006年にボリビアのモラーレス大統領が石油・天然ガス産業の国有化を行った時がそうであった。またパラグアイのルーゴ大統領がイタイプ発電所の電力の価格を引き上げるように要望したとき、ブラジルは2023年まで待ってくれと回答した。また世界貿易機構(OMC)のドーハ・ラウンドの協議において、ブラジルはアルゼンチンなどと対立し、米国、UE、日本と同じ立場をとった。ここに一貫するのはブラジル資本の利害を最優先する姿勢であるが、このことがブラジル政府の主導するラテンアメリカ統合を支持する諸国を離反させる要因ともなりうる状況にある。(0231)