書名 死の海より説教檀へ
著者 新屋 徳治 氏
著者ガ島戦時略歴
駆逐艦「暁」 水雷長 海軍中尉
出版当時著者略歴
1,920年東京生まれ。海軍兵学校。日本聖書神学校。
マコー、ミック神学校卒業(M.Th)
出版当時、日本キリスト教団曙教会牧師。
前・日本聖書神学校長
発刊日 昭和63年
頁数 220頁
発行 聖文社
主よ、わたしは深い淵からあなたに呼ばわる。(詩篇一三〇篇一節)
目次
ガダルカナル 7
捕虜となる 27
移動 49
ニューカレドニア 59
ニュージーランド 81
士官収容所 105
『勝ちの哀しみ』 115
深い淵から 133
回心 151
招命 165
終戦前夜 181
帰国-説教檀へ 201
あとがき 219
昭和17年10月17日深夜、第三次ソロモン海戦(米呼称ガダルカナル海戦)
著者は、駆逐艦「暁」の水雷長として登場する。
日本側艦艇
戦艦「比叡」「霧島」
軽巡洋艦「長良」
駆逐艦「暁」「雷」「電」「雪風」「天津風」「照月」「朝雲」「村雨」「五月雨」「夕立」「春雨」
海戦に詳しくないのだが、確か戦艦「比叡」が舵を被弾故障し自沈した海戦であろう。
また、ガ島海戦初期は目視による見張りが功を奏していたが、この海戦はアメリカのレーダーが実戦配備された時期であったかと記憶する。
本書初めの部分に第三次ソロモン海海戦の駆逐艦「暁」の戦闘が描写されている。
ガ島へ向う途中、B17に発見されながらも12日ガ島海域進入に成功し敵艦を発見する。
著者の水雷長はこれから始まる雷撃戦にそなえ、息詰まる一時を過ごしている。
「暁」は砲撃戦を決意し探照灯を放ち米駆逐艦の捕捉に成功する。
第一弾が発射されるまでの数秒・・・
轟音と共に、水雷長は艦橋の甲板に叩き付けられた。
「暁」この時点で戦力としての存在ではなくなっている。
なんともあっけない幕切れではあろうか。
ガ島撤退時、駆逐艦の時間厳守も頷ける気がした。
退艦命令により海上へ飛びおり一夜が明けると周辺に30~40名の「暁」乗組員が漂ってる。
著者はガ島へ泳ぎ着こうと傷ついた身体で必死に泳いでいるが米小型舟艇に回収され捕虜となった。
その後は、桜井甚作氏の「地獄からの生還」 に詳しく記述されているが数回の移動の後ニュージーランドのフェザーストーン収容所へ送られ終戦まで過ごす。
本書の伝えたい意図は、収容所生活の中から得た体験によりキリスト教へ回心し帰国後神父となった事だと思われる。
残念な事に、キリスト教に興味が無い為、本書の意図を理解できずにいる。
しかしながら、一瞬で決まってしまう夜戦の現実、その後の捕虜生活などは貴重な体験として後世に伝える充分価値の有る資料と考えます。
第三次ソロモン海海戦でご英霊となられた皆さまのご冥福を心より祈りたいと思います。