LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略 | 後藤組社長 後藤茂之のブログ

後藤組社長 後藤茂之のブログ

仕事のこととか、趣味のこととか、Twitterでのつぶやきの他に思うところをアップしていきます。

リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著 「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」

 

{A1BDE20C-BD00-476E-9C98-D104D0FB7E7B}

社会は急激に変化しています。

そしてその変化のスピードはますます早くなっているようです。

その変化に合わせて企業も個人も変化していかないと、あっというまに負け組になってしまいます。

しかし、これから迎えるであろう変化が新聞その他のメディアで明らかになっているのに、まるで自分にだけは関係ないかのように変化することを拒む人は多いし、変化の必要性に気づいていない人も多いことも事実で驚かされます。

 

この本は、訪れることが確実なことの一つ、長寿命化に焦点を合わせた本。

昔と比べ、確実に平均寿命は延びている一方、将来の年金制度にはあきらかにムリがあるのに、65歳でリタイヤして普通に生活できると考えている人が多すぎると思うのですが、そんな人達に警鐘をならした本です。

 

以下抜粋

 

私たちは今途方もない変化のただ中にいるが、それに対して準備ができている人はほとんどいない。その変化は、正しく理解した人には大きな恩恵をもたらす半面、目を背けて準備を怠って人には不幸の種になる。グローバル化の進展とテクノロジーの進化がそうだったように、それは私たちの生き方と働き方を様変わりさせるだろう。その大きな変革は、長寿化の進行である。

 

100歳まで生きるとして、勤労時代に毎年所得の約10%を貯蓄し、引退後は最終所得の50%相当の資金で毎年暮らしたいと考える場合、あなたは何歳で引退できるか?この場合は80代まで働くことが求められる。

 

3ステージの人生では、教育→仕事→引退と言う順番にステップをへる以外の選択肢はない。多くの人がこの順番どおりに人生を歩み、同世代の人たちが隊列を乱さずに一斉行進することにより、確実性と予測可能性が生まれていた。人々は、機会と選択肢の多さに戸惑うことがなく、企業や政府は、人々の多様なニーズに直面せずに済んだ。この点を考えれば、多くの組織の人材採用、育成、昇進の方針が3ステージの人生を前提にしていることは意外でない。

マルチステージの人生では、新しい人生の節目と転機が出現し、どのステージをどの順番で経験するかという選択肢が大きく広がる。ステージをへる順番は、3ステージの人生の論理ではもはや決まらない。それは、一人ひとりの嗜好と状況によって決まるのだ。

 

人生の選択に関しても、「オプション」には価値がある。人生が長くなれば、変化を経験する機会が増えるので、選択肢をもっておくことがいっそう重要になる。100年ライフを生きる人々が選択肢を見いだし、それを長く残しておこうとすることは必然なのだ。前述の18~30歳向けの新しいステージが生まれる一因は、ここにある。年長世代はこの年頃ですでに人生の道筋を固めていたが、これからの世代は、結婚や子づくり、住宅や自動車の購入をどんどん先送りしていく。こうして、選択肢を残そうとしているのだ。

もっとも、選択肢を持っておくことは、若者時代だけでなく、人生のあらゆる時期に重要だ。マルチステージの人生を生きる人にとっては、その重要性がとりわけ大きい。選択肢に投資し、選択肢を残すことは、人生計画の欠かせない一部になる。

 

本章の分析によれば、長く生きる時代には、ほとんどの人はこれまでよりもかなり長い年数働かなくてはならなくなる。ほんの数年の話ではない。ジェーンの勤労期間は、ジャックより20年も長い。人生が長くなれば、働く年数を増やさないかぎり、十分な老後資金を確保することがきわめて難しいからだ。賦課方式の公的年金制度が持続困難になり、年金支給額が削減される国では、ひときわ状況が厳しい。ほとんどの人は、おそらくいま覚悟している以上に、もしかすると今望んでいる以上に、あるいはいま可能だと思っている以上に、所得の多くを貯蓄に回し、長い年数働かなくてはならなくなる。

 

過去100年を振り返ると、今100歳の人たちは、生涯を通して多くのことを経験してきた。二度の世界対戦と、騎兵から核兵器の戦争手段の変化を目の当たりにし、ロシア革命と共産主義の興亡も目撃した。史上最初のグローバリゼーションの終焉と第二のグローバリゼーションの興隆、中国の衰退と台頭、電気、ラジオ、テレビ、量産型乗用車、最初の商業用旅客航空機の登場、人類最初の月面着陸、そしてインターネットの誕生も見届けてきた。家庭生活でも、自動洗濯機と電気掃除機が家にやってきて、屋内トイレが多くの家に普及し、ジッパーとブラジャーも当たり前になった。

これらの変化について少し考えればわかるように、今生まれた子どもたちが100年の間に経験することを予測するのは不可能だ。だから、長寿化時代には、不確実性に対処することが避けて通れない。長生きする人たちは、変化のペースが減速しないかぎり、過去の世代よりずっと多くの変化を経験する。

 

1979年以降、低スキルの職と高スキルの職は増えているが、中スキルの職は減っている。スキルのレベルで見ると、労働市場の中央に大きな穴が空いているのだ。中程度の雇用が空洞化しているのである。

 

テクノロジーは、中スキルの労働者を「代替」するだけでなく、高スキルの労働者を「補完」してきた。ソフトウェアやコンピュータは高教育・高技能の働き手を補完する役割を果たせる。その結果、テクノロジーは、中スキルの働き手の職を奪う一方で、高スキルの働き手の生産性を高め、所得を引き上げてきた。また、所得が上昇した高スキル層のニーズに後押しされて、サービス産業で需要が高まり、この種の産業で働く低スキルの労働者の雇用も増えた。以上のような要因が相まって、労働市場で中程度の雇用の空洞化が住んでいるのだ。

 

アップルのiPhoneはその象徴だ。スマートフォンのiPhoneやタブレット型端末のiPadは、主に台湾のホンハイ精密工業の子会社が中国の深圳に設けている工場で製造されているが、製造コストが販売価格に占める割合は5~7%程度に過ぎない。アップルが販売価格の30~60%相当を得ている。深圳の工場でホンハイの従業員が生み出している経済的価値は一人当たり2,000ドル相当なのに対し、アップルの従業員は一人当たり64万ドル以上の経済的価値を生み出している。経済的価値を生むのは、製造ではなくイノベーションなのである。

 

テクノロジーの専門家は、社会で高賃金の雇用の数を維持することが難しくなると主張する。経済学者は、多くの敗者が生まれる一方で多くの勝者も生まれると指摘しつつ、テクノロジーの恩恵はすべての人に等しく及ばない可能性があることを強調する。両者の意見が一致するのは、低スキル・低賃金の人たちを守るために政府が社会保障を充実させる必要があるということ、そして、これまで大勢の人たちの生活を支えてきた職種の多くが消滅するということだ。

 

あなたはおそらく、友人関係や知識や健康を「資産」と考えた事はないだろう。「資産」というのは、ほとんどの人が日常生活で使う言葉ではない。しかし、これらの要素を資産と位置付ける発想は、100年ライフを生きる上で欠かせないものだ。資産とは、ある程度の期間にわたり恩恵を生み出せるもののこと。言い換えれば、資産はある程度の期間存続するものである。そこで、長い人生を生きる人にとっては、資産管理が大きな課題になる。

 

自分のことをよく理解し、よく学ぶためには、他の人たちに意見を求め、寄せられた意見について内省することが有効だ。内省の重要性はきわめて大きい。自分と世界についての認識に新しい情報を加えるだけなら、誰でもできる。変身資産を積極的に築こうとする人が他の人と違うのは、単に情報を加えるだけでなく、自己認識と世界の見方を変更することだ。その結果として、自分についての理解が広く深くなり、いくつもの要求と不確実性に対処する能力が高まる。

 

新しい人的ネットワークを築けば、古い友達の一部と疎遠になることは避けられない。この点はよく理解しておくべきだ。あなたのことを最もよく知っている人は、あなたの変身を助けるのではなく、妨げる可能性が最も高い人物なのである。その人たちは多くの場合、あなたが今まで通りで変わらないことに最も多くの投資をしている人間だからだ。その点、新しい人的ネットワークに接すれば、新しい価値観、規範、態度、期待に触れられる。それに、そうしたグループのメンバーは、あなたと同じような不安を味わっている可能性が高い。そのような人たちと自分を比べることではじめて、あなたは変身への抵抗を乗り越える「臨界点」に到達できるのだ。

 

そもそも職場の研修だけで、スキルが古びることを避けられるのか?おそらく、それは不可能だ。ジェーンは、自由に使える時間の一部を、レクリエーション(= 娯楽)ではなく、自己をリ・クリエーション(=再創造)するために振り向ける必要が出てくるだろう。ジミーの4.0シナリオと同様、週末や休暇の一部を能力開発と学習に費やさなくてはならなくなる。生産性資産に絶えず投資し続けなければ、必要とされるレベルのスキルを保つことは難しい。

 

わかりやすく言えば、未来に備えてお金を蓄えるとは、現在から未来にお金を移すことだ。ところが、ほとんどの人は、未来の自分のことをなかなか自分のこととして考えられない。

 

50%という目安に関して、もう一つ断っておきたいことがある。この数字は、住む家を所有していることを前提にしている。もし家を所有していなければ、引退後も家賃を支払わなくてはならない。この場合は、最終所得の70~80%の資金が必要だろう。