横山 秀夫
出口のない海

通勤電車の中じゃ、最後までとても読めなかった。

この青い海で、どれほどの若者が死んでいったか。

狭い「回天」-人間魚雷の中で

最後の瞬間、何を思ったろうか。

みんな、その時までは普通の若者だったのに。


お風呂の中で、イメージしてみた。

狭くて身動きの取れない「回天」の中。

外は暗い海の底。

たった一人で、敵艦を沈めるために

死ぬために、その瞬間を待つ。

怖い。苦しい。とても、それ以上想像を膨らませられなかった。


親や故郷や愛しい人とも

若者らしい生活とも決別して


死ぬことが決められた特攻隊員として

死と対峙する。

たった1年前までは、普通の大学生として野球部員として

仲間と白球を追っていた若者なのに。


海に消えた若い命。

特攻として出撃しながら

生き残ってしまったことに苦悩する若者もいて。

なんでこんな馬鹿馬鹿しい兵器を作らなきゃならなかったんだろう。

虚しくて悔しい。


「出口のない海」

それは、二度と陸地を踏むことを許さない海。


でも横山秀夫は、暗いだけでは終わらせない。

最後に、明るい何かを残してくれる。