六覚燈での直球と変化球 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

3月1日木曜日、六覚燈に5人でお邪魔したが、普段銀座の店に行かれている
店主の水野さんがおられた。
最近は火曜日に帰阪されているという話だが、この日はどこかのテレビが取材に来て
カメラを回していたので、おられたのだと思う。
3年ぶりにお会いしたが、覚えてもらっていたかなあ??

わたしはガチガチのブルゴーニュ党であり、最近けっこう頻回に現れて、いつも古手のワイン
ばっかり所望しているので、きっと向こうは何か新しい技をかけようとしているに違いない。
技がハズレたらはっきり言うので、きっと困った客だろう。

この日は5人で5本開けたが、水野さんが特別に、と言って出してくださった
オスピスのヴォルネイ・サントノが絶品であり、そのあとに出てきたDRCが
かすんでしまうほどであった。
そのあとのエピローグの2本も、流れを読んで選ばれていて、とても面白かった。
ヤボと知りながら一言断っておくと、内容を考えるとこの日もとても安かったと思う。

最近わたしが泡ものを連続して開けているのをご存知の中山さんが、われわれのために
最初にシャンパーニュを開けて下さった。
多分お好み似合うと思いますよ、とのことだったが、その通りだった。


ブルーノ・パイヤール プルミエール・キュヴェ 
開栓日    2007年3月1日
インポーター ミレジム

気安い価格のNMシャンパーニュである。
どこかにデゴルジュマンの日付が書かれている、ということだが、
LT15B 6N1という刻印があるだけで、これがその日付だろうか。
インポーターシールには、2006年2月と書かれている。

わたしの好み通り、細かでやや弱めの泡、控えめな甘さ、しっかりした酸味を持った、
ドライなシャンパーニュであった。
ブルゴーニュもシャンパーニュも、やはり柔らかなものがよい。


オスピス・ド・ボーヌ ヴォルネイ・サントノ キュヴェ・ゴーヴァン 1989
開栓日    2007年3月1日
インポーター サントリー

サントリーの佐治さんが高値でせり落としたワインだそうで、水野さんもその場に
おられたとのことだ。
これは香り高くて柔らかい。ヴォルネイなのに、締まっていてゆるゆるではない。
現在でもしっかりと果実味が残っており、飲み干すと、舌の両脇を芳香が
モーツアルトのソナタのように通り過ぎ、とても長い後口が続く。


DRC エシェゾー 1993
開栓日    2007年3月1日
インポーター サントリー

今日は5人もいるし、ひどく高くなっているDRCで、何か残っているのはおまへんか、
とリクエストしたらこれが出てきた。
10年以上前、DRCで最も安いエシェゾーは1万円程度で買えた。隔世の感あり。

93はまずまずのヴィンテージだろうし、かつて飲んだ同じワインは
もっとスパイシーで獣香も感じられたが、この1本は平板な並の特級ワインで、
取り立てて述べる印象が残っていない。

先のオスピスが良すぎたために、過小評価されてしまったかも知れないし、
この1本だけが冴えなかったのかも知れないし、現在の93がこんな状態なのかも知れない。
かといって決してこけているワインでもない。

新しいヴィンテージはとても3万円では買えないし、もしこれがDRCのエシェゾーの
14年ものの平均的な状態だとしたら、まったく価格には見合わない。
六覚燈でも、高すぎるので新しいヴィンテージを入れるのはやめた、
と中山さんはおっしゃっていた。


ファットリア・ヴィティッチオ プルナイオ イタリア・トスカーナ1999
開栓日    2007年3月1日
インポーター モトックス

さて、意外や意外、4本目にはこんなものが出てきた。
ブラインドで飲んでいたらしっかりしたタンニンがあり、左岸系のカベルネ・ソーヴィニオン
主体のワインかと思ったが、何のことはない、トスカーナのサンジョベーゼだった。
自分の味覚もアテにならない。

先月ここに来たときのグラン・ピュイ・デュカスはバリバリの左岸ワインで、驚くほど
酸味が乏しかったが、その点こっちはかなりまし。
しかしサンジョベーゼにしては酸味は少なくて、イタリアらしくなく、ストイックなトスカーナかと
思う。


Casa Ferririnha ヴィーニャ グランデ (ポルトガル ドウロ DOC)2001
開栓日    2007年3月1日
インポーター 日食

これが本日の最大のトラップ。
何が何だか、ブラインドで飲んだらまるで分からない。
比較的若いヴィンテージであるのは分かる。エッジは丸く、かなり濃厚で果実味はたっぷりある。
特筆すべきは長い長い後口で、熟成した赤い果実に混じって、まろやかなミルクコーヒーの
風味も出てくる。

当然ピノ・ノワールではないが、上質なブルゴーニュに混じっても対等に勝負できる
くらいの気品はある。
翌朝の鼻腔に残った残り香は、やはりピノが優れているし、ちょいと芸術的な技を見せる点で
オスピスに分があるが、飲んでいる最中の説得力は、2本目のオスピスにも対抗できる、
と一瞬思った。

4本目のイタリアンで終われば、幾ばくかの欲求不満を抱きながら店を出る、
というのは読まれているだろう。
遊び心から、きっと中山さんはピノ中毒のわたしを改宗させうるようなものを
提示してみたかったのだろうと思う。これは外角の変化球のストライクである。

ネットで調べても、今のところこのワインは出てこない。
価格はかなりお手軽ですよ、とのことだが、さて市場価格でいくらだったら買うだろうか。
1人で1本飲んでみたい、という気はする。

来るべきブルゴーニュの入手難に備えて、わたしもそれに代わる選択肢を用意しておかねば
ならないと考えるが、毎日開けるには退屈だとしても、さしずめこのワインなど、
時に楽しむにはいいかも知れない。