地震後、娘は東北に行って亡くなった人たちを家に連れてくる作業をしています。
「ボランティアの人が見つかってね。その人と一緒に建物の下敷きになっている人たちを探したりしてる。
小さな子供達は何があったのかわかってないから、ここに来て遊んで笑ってる。
孫がいる年代のお年寄り達は、子供達の側に居て一緒に遊んだりしてる。
お母さんたちも子供達と一緒にいる。
こういう人たちは光に帰りやすいんだけど、会社員とか、中学生以上の男の人たちはただ呆然としてる」
地震で来た人たちは、2つに分かれているそうです。
今はクジラが毎日来ていて他の動物もたくさんいるので、子供達は喜んで遊んでいます。
それを見ているお年寄りやお母さんたちも癒されていき、みんな帰ることができます。
ただ男性は子供や動物やイルカに反応しなくて、その様子をただ見ているだけとか、外でぼーっと座っているだけだったり、中にはまた現地へ戻ってしまう人もいるそうです。
せっかく連れて来ても帰ってしまっては意味がないので、娘が考えたのが「龍を呼ぶ」でした。
「たぶん龍なら男の人も好きだと思うから、すぐ近くの雑木林を山のように高く見せて、龍に来てもらいやすいようにする。
そこに他の山から龍をたくさん集めてきて見せたらどうかなーって。」
どの山にも何匹かの龍がいるそうで、頼んで来てもらうようです。
「龍は感情が強いし気まぐれだから、長くて2時間ぐらいしか居てくれないと思うけど仕方ないよね。
でも龍は神に近いから、たぶん効果があるんじゃないかと思う。」
手伝ってくれている人は岩手の独身の男性です。
背が低くてがっしりとした体型で、コンピューター関係の仕事をしていて、見える方だったそうです。
「私が探してたら、向こうから『成仏する前にボランティアして、みんなを見つけてから行くわ』って声を掛けてくれて驚いたけど、おもしろい人だよ」と言っています。
高校でスポーツをやっていたことや、今はジムで鍛えていたというような話を娘にしているそうですが、自分の名前だけが思い出せないそうです。
一つ前の記事の宮城の女性もこの男性も、実在したのかどうか私にはわかりません。
確認できたとしても、できなくて全てが想像だったとしても、「そういった世界を娘が見ている」という事実は受け入れています。