病院に着くと、菜花先生と研修医サイト君が入り口で待機していた

肺の画像をみながら受けた説明

「進行が早いです。」

(…知ってる…わかってる)


「肺が腫瘍で埋め尽くされています。」

「もう隙間が有りません。」

(じゃあ…何処で呼吸しているの?)


「良くせんりちゃんは、頑張っていると思います。」

(まだだよ…まだ…)

私の頭の中は、空っぽ…

と言ってもよい程、
完全に思考停止…



千里は、
酸素の流量を10リットルに流して落ち着いていた

もう深夜だ…

菜花先生は、
「今晩は、病院に居ますから安心して下さい」
と言って長い時間、千里の側にいてくれた


真夜中に痰が絡んで、看護師さんに千里自ら

「吸引して下さい」
とお願いをしたところ
なんと看護師さんが、断った

「うーん、吸引かぁ~ちょっと怖いな」←看護師さんは、サチレーションが下がって呼吸困難になるのを恐れている。

千里は、「ダメなの?」と不思議そう


一緒に来ていた若い方の看護師さんが、

「せんちゃん
じゃあ、吸引しようか?がんばろ」


と言ってくれて
吸引を行う

その様子を見ていたパパが、

「看護婦のくせに、出来ないとか、恐いとか、ないだろう」←(捨て台詞的)にそしてパパは、トイレに…


パパは、後でママに怒られるかな?
と思ったらしいけど…


パパが言わなかったら、多分ママが、
嫌みに「じゃあ自分達でやるからいいよ」って言ってたと思う(-.-;)



千里が、ママの手を握りながら
「ねぇママ…明日、家に帰れるかな?」


必死に息をしながら私に聞いて来た …


ママは、
「…わかんないよ、明日、先生に自分で聞いてみな」


力なくそう言うしかなかった…


もう、
どうしていいか…
なんて…ママもわからなくなってしまって…

ただただ




終わりなんて嫌だ

それだけが…頭を巡って…



その日なんて
来ないんだって…



まだ貴女は、しっかりと生きているのに…


ママに、助けを求めていたのに…

ママは、絶望してしまって…

力が出なくて…


何にも考えられなくて…



何も考えなくて良かったんだよね…

手を握ってあげるだけで…

でも、手を握る事さえ満足にしてあげなかった…


もっと手を、
握っていてあげれば良かった …







2010.10.27