Magic Circle " The Jokers " -208ページ目

第二話:揺れ

「いらっしゃいませ。2,463円になりま~す」
メメコは笑顔のよく似合う女性だ。

$Magic Circle " The Jokers "-memeko
Memeko


お客さんからの評判も良い。
山のこのスーパーもメメコが働く様になってからというもの、日に日に売上を伸ばしている。

「メメコちゃん、ホントよく働いてくれるね。助かるよ。」
店長が言った。

「赤んぼの為にがんばんなきゃね!あの子には私しか居ないんですから。それとも店長が養ってくれる?」
「メ・メメコちゃん…」
「冗談ですよ!はははははっ」

店長は微笑みの中に残念さも加えながら、部屋へ戻った。

「あのう…すいません…」
レジに並んでいたお客の一人が申し訳なさそうな声で言った。

「あっゴメンなさい!!」
お客の顔を見上げたメメコは心臓が破裂するかの様な衝撃を受けた。
そのお客の顔がキンタにソックリだったからだ。

$Magic Circle " The Jokers "-kinta
Kinta


「キ・キンタ…?!」

周りの景色、音、何もメメコの中には入る事が出来ない。
我に返るまでに何度、男が声をかけ直したであろうか。

「あっす・すいません!」

笑った顔までキンタにソックリだった。

男は1.5Lのペットボトル入りのミネラルウォーターと団子を大量に買い込んだ。

バイトの時間が終わったメメコは外に出てみると、なんと向かいの山の公園のベンチにさっきの男が座っているではないか。

迷わず声をかけた。
「あのう…何をしてらっしゃるんですか?」

「あっ、あなたはスーパーの…。ははは、お恥ずかしい。実は私、放浪の旅の途中でして…。」
メメコは男の話に吸い込まれるかの様に時間を忘れた。

「あっ、いけない!もうこんな時間。私行かなくちゃ。私はメメコ、あなたは?」

男は答えた。
「モモジロウです。」

$Magic Circle " The Jokers "-momojiro
Momojiro


男は公園にテントを張り、しばらくの間、そこで生活をしていた。

メメコは毎日、バイトが終わると男の旅の話を聞いた。
まるで、キンタと話しているかの様な錯覚にも捕らわれていた。

いつしかメメコの想いは恋へと変化を遂げた。
しかし、まだキンタが死んで間もなかった為、口には出せずにいた。

モモジロウにはそれが解っていた。

そんな中、突然の別れはモモジロウから切り出されてしまった。
「もうそろそろ旅に出ます。この町は素晴らしい所だった。また寄りたいと思います。メメコさんもお元気で。」

メメコが見せた笑顔はいつもと何かが違っていた。

モモジロウは察知して、メメコに一つのプレゼントをした。
それはお腰に着けた袋だった。

「これはウチに代々伝わるものなんです。良ければ預かってて頂けませんか?私はこれからある人物を探しに遠い所へ向います。あなたの気持ちが整理出来た頃、また団子を買いに現れます。それまで…」

そしてモモジロウは姿を消した。

袋の中には高価な宝物が入っていた。

それから数ヶ月…

一通の手紙がメメコの元へ届いた。
「困った時は、その中身を使って頂いても結構です。いずれは私のもの。
Momojiro with lots of love...From U.S.A.」

【次回予告】
息子のキンジを連れ、海へ出かけたメメコ。
そこには亀をイジめる少年達の姿が…。
お楽しみに!

>>> 第三話:浦島太郎

第二話:桃太郎

三村マサ○ズ風にツッコんでみて下さい。

Magic Circle " The Jokers "-momotaro


昔々ある所に、お爺さんとお婆さんがおったそうな。
お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行った。
お婆さんがジャブジャブ洗濯をしておると、どんぶらこっこ大きな桃が流れて来た。
桃がかよ

お婆さんは桃を拾って帰ると早速お爺さんと食べる事にしたと。
そんなの喰うなよ

お婆さんが桃に包丁をあてた時。
なんと桃がパカンと割れて元気な男の子が飛び出した。
気持ち悪いよ

「桃から子供が産まれるとは、こりゃあびっくらこいた!」
ったりめえだよ

でも、もっとびっくらこいたのは、その子の元気のよさ。
そしてその喰いっぷり。
むしゃむしゃパクパク、喰うのなんのって。
おまけにすごい力持ち。
また力持ちかよ

お爺さんとお婆さんは、この子を桃太郎と名付け、うんとこさと可愛がったと。
単純すぎだよ

桃太郎は喰った分だけズンズン大きくなり、強くたくましく育っていったと。
そんな大きなイメージねえよ

その頃、村には恐ろしい鬼が現れて悪さをしておった。
桃太郎は村の人達が困っているのを黙って見ている事が出来なんだ。
「オラ、鬼退治に行って来るだ。」
お爺さんの作った晴れ着を着て、お婆さんの作ったきび団子を持ち、桃太郎は勇ましく家を出た。
だから止めろって

桃太郎は元気いっぱい鬼ヶ島を目指して突き進む。
どこにあんだよ

そこへ犬が一匹やって来て言った。
「桃太郎さん、お腰につけた きび団子を一つ下さいな。そしたら家来になりましょう。」
犬はムシャムシャ食べると家来になった。
騙されてるよ

しばらく行くと、今度は猿がやって来た。
「きび団子をくれたら家来になるよ。」
お前もかよ

続いてキジも来た。
ま・まさか!
「きび団子を下さい。家来になります。」
行き先を先ず聞けよ

こうして桃太郎は三匹のお供が出来た。
かわいそうに…

海辺に着いた桃太郎達は船に乗り込んだ。
誰のだよ

えんやあとっと えんやあとっと。
力を合わせて船をこぐ。
だから誰のだよ

大波だって何のその。
「とうとう着いたぞ。鬼ヶ島だ!」
先ずはキジが様子を見に飛び立った。
わかるのかよ

「桃太郎さん、今です。鬼どもは酒盛りの真っ最中です!」
わかってんじゃんかよ

キジの言葉を合図に桃太郎は鬼ヶ島に乗り込んだ。
「やいやい悪い鬼どもめ。この桃太郎がせいばつに来たぞ!」
突然現れた桃太郎に鬼どもは大慌て…。
読んでるこっちが大慌てだよ

あっけに取られてる鬼どもを桃太郎は次から次へとやっつける。
ポカリ!ポカリ!
いやその強いこと。
むごいよ

三匹の家来も大活躍。
犬は噛み付き、猿はひっかき、キジは鬼の目玉を突っついた。
キジの攻撃が一番むごいよ

「ええい生意気な小僧め。俺様が相手だ!」
怒り狂った鬼の親分が大きな金棒をビュンビュン振り回しながら現れた。
「小僧、これでもくらえ!」
鬼の親分は桃太郎の頭目掛けて金棒をガキーンと振り下ろした。
子供相手にムキになんなよ

ところが桃太郎は平気な顔。
これには鬼の親分も真っ青になった。
俺もだよ

「ぎょぎょっ、金棒が折れるとはなんちゅう石頭だ…。」
「今度はこっちの番だ!」
ガツーン!
金棒より硬い桃太郎の石頭攻撃に流石の鬼の親分も降参だ。
結局それが必殺技かよ

「どうかお許しを。盗んだ宝は全部お返しします。」
「よし、二度と悪い事はするなよ。」
桃太郎は取り戻した宝を船に積み込んだ。
ネコババすんなよ

鬼の親分は船の帆にビュウっと息を吹き掛けて桃太郎達を送ってくれた。
報復せよ

こうして桃太郎は無事にお爺さんとお婆さんの所へ帰って行った。
桃太郎にとって何より嬉しかったのは鬼退治という、でっかい夢を見事やり遂げた事だったそうな。
めでたし めでたし。
宝、きちんと返せよ~

>>> Memeko The Love 02

第三話:夢

穏やかで平凡な毎日が過ぎていた。

日に日に大きくなっていく息子『キンジ』はもう3歳。

$Magic Circle " The Jokers "-kinji
Kinji


男の子だからなのだろうか、言葉が少し遅い気もする。
しかし、明るく元気な子であった。

今日はパートも休みなので、キンジを散歩に連れて出る事にした。
「どこに行きたいかな?あっそうだ、海を見せてあげる!」
メメコ自身、海を見に行くのは久しぶりだった。

$Magic Circle " The Jokers "-memeko
Memeko


小さな山の向こう側に、それはそれは美しい海が広がっている。

初めて見た海に驚きを隠せず、嬉しさのあまり走り出してしまったキンジ。
「ダメよ!ママと手を繋がなきゃ危ないわよ!」

浜辺に着いた二人は砂でお城を作ったり、波打ち際で波と追いかけっこをして楽しんでいた。

しばらくした頃、少年達の声が聞こえてきた。

その方向を見てみると、亀をイジメる地元の不良少年達だった。

「かめさん かわいそう」
初めてハッキリとした口調でキンジが言葉を話した。

関わらず立ち去ろうとしたメメコだったが、キンジの父ならどうするか、また正義感と強さを教えなければいけないと判断した。

「あなた達、やめなさい!かわいそうじゃないの!」

「あん?何だてめえは!このババアが!」
不良少年の一人が振り向きざまに言い放った。

「子供連れだからって、俺らに文句つけん奴は上等なんだよ!」

メメコが、これまでに見てきた者達に比べれば、ただの子供。
しかし、メメコ自身に力がある訳ではない。

キンジはとっさに不良少年目掛け、石を投げ付けてしまった。
石は額に命中し、血が流れ出した。

「このガキが!」

「やめてえぇぇぇ!!!」
メメコの叫び声が響いた。

そこへ通り掛った男がいた。

「やめろ。」
ぼそっと小さな声で男は言った。

不良少年達の顔から、血の気がどんどん引いていく。
「う・うら し・ま…先輩…!?」

$Magic Circle " The Jokers "-urashima
Urashima


この男、地元ではかなり有名な族上がりの人物だった。

不良少年達はすぐに姿を消した。

「有難うございました。危ないところを…。」

男はそんなメメコの言葉を聞こうともせず、亀の方へ駆け寄った。

「何て可哀想に…。ケガをしてるじゃないか。帰って手当てをしてやろう。」

メメコは不思議そうな顔で、男に訊ねた。

「亀の手当てをするの?どうしてそこまで…。」

男はこう答えた。
「昔から、動物が好きなんです。気が付いたら獣医ですよ。」

続けてキンジに言葉を繋げた。
「ボク偉かったな!ママを助けようとしたんだな。カッコよかったぞ!ウチに来てみるか?動物さん達がいっぱいいるぞぉ。」

「うん」
キンジはニッコリ笑って、ママの手を引っ張った。

そこは小さな動物病院だった。
だが、治療中の動物も含め、いろんな動物達がいっぱいいた。

「どうしてこんなに、いっぱい…。」
メメコは驚いていた。

「捨てられている猫や犬達を拾っていたら、このありさまさ。世の中には最低な動物がいて、勝手な事をしてくれるからね。」

「最低で勝手な動物って?」

「人間さ、感情の動物。人だけはあまり好きになれないな。はははっ」

自分も親に捨てられ、寂しさのあまり若い頃はグレていた経験がある。
いつしか、そんな深い話にまでなっていた。

「おっといけない、もうこんな時間だ。夜の診察の準備をしなきゃ。」
「え!?夜も診察してるの?」

「夜になると傷付いた動物達が自分でやって来るんだよ、不思議だよね!この前なんか、熊が現れたよ、あれには驚いた。」
メメコにはそれがビリーだって事がすぐに判断出来た。

「面白い人ね、また来てもいい?良かったら友達になってほしいわ。最低な動物だけどね!」
「参ったな、はははっ。ボクまた来てくれるかい?」
「うん」
「じゃあ友情の印にいい物をあげよう。」
男は箱を手渡した。

「この中には、いろんな夢が詰まってるんだ。おじさん自身、開けた事がないから、中身は知らないけどね!ボクの夢は何だい?ウルトラマンになる事かな?諦めずにいろんな夢を想像するんだよ。くじけそうになったら、箱を開けてみてもいいよ。おじさんは諦めずに箱を開けなかったけどね。」

「あけない」
キンジは意味が解っていたのだろうか、そう答えた。

メメコは箱を振ってみたが、中には何も入っている様子がない。
夢にはきっと大きさも重さもないんだろう。

開けるなと言われれば、開けたくなる。

でも、そこで我慢する事の延長線に夢の実現がある。

メメコは考えていた。
あの人の夢は何だったんだろうと。獣医になる事?動物と暮らす事?

キンジは帰り道、こうママに言った。
「またあのおじさんの所へ行こうね。おじさんの夢、友達だもんね」

今日一日で、かなりの言葉の成長を遂げた。

【次回予告】
鏡台の奥にしまってあったクシ…
それは昔、親友の鶴子がくれた物だった。
キンタとの出会い。三角関係。
すべてが明らかになる。
お楽しみに!

>>> 第四話:鶴の恩返し