第一話:別れ
「ねえ、キンタ…。どうしても行ってしまうの?」
「しょうがないだろ!相撲好きな俺には欠かせない行事なんだ。いいかげん理解してくれよ!」
毎年行われている山の相撲大会の時期が近づくと、必ず交わされる二人の会話である。
「お母さまが亡くなってから、あなたは変わったわ…。以前はもっと優しかった…。でも私、心配なのよ!獰猛な動物達を相手に戦いを挑むなんて…」
確かに月日は流れ、動物達も世代交代を繰り返し、優しいものは少なくなってきていた。
当然、キンタの力も年々衰えてきている。
そして、大会前夜…二人は燃え上がる…
それはお互い、最期かも知れないという緊張感からくる自然な感情なのだろう。
キンタ36歳。メメコ34歳。
籍を入れて、18年。子供はまだいない。
優しい言葉など今の二人には必要がない。
ただ熱く、ただ激しく互いを貪り合う。
思わずメメコの口から声が零れた。
「○△□☆♪←ⅷ!!」
「メメコ、心配すんな!俺は絶対負けない。明日はいよいよあの熊の息子(ビリー)が大会デビューする日だ。奴は俺を憎んでいる。でも動物界の王者『人間』が負ける訳にはいかないんだ。愛してるよ、メメコ…」
大会当日…
決勝まで上り詰めた一人と一頭の体には無数の傷がついていた。
意識も朦朧としている中で、行司の声が。
「はっけよ~い のこった!」
どれ程の時間が流れたのだろう…
気が付いたキンタは山の病院のベッドの上だった。
「キンタ!気が付いたのね!キンタしっかりして!私よ、メメコよ!」
メメコの眼から無数の涙がこぼれ落ちた。
「俺は一体…。どっちが勝ったんだ…。うっ…」
「キンタ あなたが勝ったのよ!喜んでキンタ 愛してるわ…」
「そ・そうか…。メ・メメコ… おれ…おれ…」
「もう何も言わないで!」
キンタは結果を知り安心をしたのか眠る様にして旅立ってしまった。
その顔に無数の傷と涙の跡を残して…
「キンタ~!!!」
病院の廊下にメメコの声が木霊する。
戦友のビリーが病院に駆けつけたが時既に遅し。
「キンタ、俺…あんたの…」
ビリーの顔にも涙の傷跡がまた増えた。
数ヶ月後、ビリーの新たなる戦友となるであろう一人の力持ちが誕生した。
おしまい…
【次回予告】
メメコは山のスーパーのレジ係。
そこへ現れたのが一人の男、モモジロウ。
二人は一体どうなってしまうのか!?
>>> 第二話:桃太郎
「しょうがないだろ!相撲好きな俺には欠かせない行事なんだ。いいかげん理解してくれよ!」
毎年行われている山の相撲大会の時期が近づくと、必ず交わされる二人の会話である。
「お母さまが亡くなってから、あなたは変わったわ…。以前はもっと優しかった…。でも私、心配なのよ!獰猛な動物達を相手に戦いを挑むなんて…」
確かに月日は流れ、動物達も世代交代を繰り返し、優しいものは少なくなってきていた。
当然、キンタの力も年々衰えてきている。
そして、大会前夜…二人は燃え上がる…
それはお互い、最期かも知れないという緊張感からくる自然な感情なのだろう。
キンタ36歳。メメコ34歳。
籍を入れて、18年。子供はまだいない。
優しい言葉など今の二人には必要がない。
ただ熱く、ただ激しく互いを貪り合う。
思わずメメコの口から声が零れた。
「○△□☆♪←ⅷ!!」
「メメコ、心配すんな!俺は絶対負けない。明日はいよいよあの熊の息子(ビリー)が大会デビューする日だ。奴は俺を憎んでいる。でも動物界の王者『人間』が負ける訳にはいかないんだ。愛してるよ、メメコ…」
大会当日…
決勝まで上り詰めた一人と一頭の体には無数の傷がついていた。
意識も朦朧としている中で、行司の声が。
「はっけよ~い のこった!」
どれ程の時間が流れたのだろう…
気が付いたキンタは山の病院のベッドの上だった。
「キンタ!気が付いたのね!キンタしっかりして!私よ、メメコよ!」
メメコの眼から無数の涙がこぼれ落ちた。
「俺は一体…。どっちが勝ったんだ…。うっ…」
「キンタ あなたが勝ったのよ!喜んでキンタ 愛してるわ…」
「そ・そうか…。メ・メメコ… おれ…おれ…」
「もう何も言わないで!」
キンタは結果を知り安心をしたのか眠る様にして旅立ってしまった。
その顔に無数の傷と涙の跡を残して…
「キンタ~!!!」
病院の廊下にメメコの声が木霊する。
戦友のビリーが病院に駆けつけたが時既に遅し。
「キンタ、俺…あんたの…」
ビリーの顔にも涙の傷跡がまた増えた。
数ヶ月後、ビリーの新たなる戦友となるであろう一人の力持ちが誕生した。
おしまい…
【次回予告】
メメコは山のスーパーのレジ係。
そこへ現れたのが一人の男、モモジロウ。
二人は一体どうなってしまうのか!?
>>> 第二話:桃太郎