先日、告知したとおり・・


今日は、この『絵空事』です。





オチつき大五郎え日記




すべてフィクションです。


なが~い上に、つまらないかもです( ̄ー ̄;



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『恵まれていることを知る者』







彼女の名は、「知恵(ちえ)」。
「恵まれていることを知る者です」と、
彼女は、いつも自己紹介のときに言う。



実際、彼女は、とても恵まれている。
一般的な家庭で育って、たくさんの人に愛されて・・・
決して、美人てわけじゃないけど、
よく見ると・・・やっぱり美人だ。



俺の名は、「海(カイ)」。
「ウミと書いてカイです」と、自己紹介の時に言う。
別に変わった由来もなければ、
特に恵まれているわけでもない。



ただ、ひとつ恵まれていたとすれば・・・


その「恵まれていることを知る者」と、
幼馴染だったということだけだ。




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小さい頃から、いつも手を繋いで、仲良しだった。






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それが、いつの間にか手を繋がなくなった。
理由は、俺にある。
「恵まれていることを知る者」が好きになったからだ。
幼馴染としてでなく、一人の女の子として。
んで、思春期とか反抗期ってヤツらしくて、
つい、冷たい態度をとってしまうようになった。



「最近、冷たいな~・・・私、何か悪いことした?」



彼女は悪くない。むしろ、良い。
笑顔もかわいいし、スネてる顔もかわいい。
でも、恥ずかしくて直視できない。
クールな態度で、ごまかしているだけなのに、
彼女を傷つけてしまっている気がして・・・苦しい。


恋ってのは、苦しいものらしい。





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そんな、ある日・・・事故が起きた。





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「恵まれていることを知る者」が・・・
俺の目の前で、車にひかれたんだ。


幸い、一命はとりとめ・・・深く残る傷もないということだった。



ただ・・・ある後遺症が残ってしまった。
『高次脳機能・・・なんたら』っていう、
よく分からない、脳の機能がヤバくなる障害らしい。



それの症状は様々らしいけど、
彼女は・・・記憶をとどめておく部分が、ダメになってしまったようだ。
事故に遭う以前の記憶は残っているのに、
事故後の記憶は、数ヶ月か、数週間か・・・
最速、数時間で忘れたりするらしい。



周りが悲観している中、彼女は、そのことの重大性が
分かっていないかのように、いつも笑っている・・・。
俺には分かる。
忘れてしまう恐怖・・・悲しみ・・・彼女が一番ツライこと。
それでも、彼女は、周りのために気丈に振る舞うんだ。



「みんなに心配されている私は恵まれている。
これって、ステキなことだから、私はちっとも不幸じゃないよ」





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それからというもの、彼女の目覚めは決まって・・・





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天井に書かれた『指示書』を見ることから始まる。





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彼女の後遺症は、勉強にすごく影響した。
クラスでも10位以内だった成績は、みるみる落ちて・・・
でも、もともと勉強熱心だったから、
成績が真ん中あたりから落ちることは無かった。
勉強のための記憶は、どこかまた違う脳の部分が働くのだろう。
でも、希望の大学には行けないようだった・・・。
それでも、アイツは笑っている。



「私、カイ君と同じ大学がいいと思ってたから・・・
カイ君の学力に合わせるのに、後遺症はちょうどいいみたい。
私のことよりも・・・カイ君は卒業できるの?」



なんて・・・
そのイタズラっ子のような笑顔も、俺にとっては反則だ。



「私は恵まれている」が口癖の彼女。
事故前までは、たくさんの男子に告白されていた。
事故後は誰も言い寄ってこない。
告白されたことを忘れられてしまうからだ。
それでも、彼女は笑っている。



「私は恵まれている・・・
私には他の男子より
幼馴染のカイ君がいれば、それだけでいいのよ」



そのセリフが、事故前だったなら、
どんなに嬉しかっただろう。
でも、今は・・・嬉しい反面、悲しくなる・・・。



何も覚えていないクセに・・・。
そう思う。



でも、彼女の気持ちは、もう分かっている。
だから、俺はそこまで悲観していない。
でも、やっぱり悲しくなる・・・。
むしろ、彼女の気持ちを知っているだけに、
悲しみは倍増している。





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ある日、彼女が意を決して、俺に告白してきた。
顔を真っ赤にして、



「好きです!」



ラブレター・・・嬉しいよ。


でも・・・彼女は、何も覚えていない。




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その決意して告白したのが、
これで、50回に達していることに。


彼女は、何も覚えていない。
彼女が事故に遭ったのは・・・俺のせいだということも。



事故直前に、彼女は俺に告白したんだ。
俺は嬉しくて、でも、すごく恥ずかしくて・・・
どう答えたらいいのか分からず、その場から逃げたんだ。


その逃げる俺を追いかけてきた彼女は、






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道路へ飛び出し・・・





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事故に遭った。


すべて俺のせいなんだ。
そのことを思い出されるのが・・・怖い。
ぜったい嫌われる。
もう2度と会ってもらえなくなる・・・。


そう思っていても、罪悪感に耐え切れず、
俺はすべて彼女に話したこともある。
でも彼女は、こう言った。



「カイ君のせいじゃないよ。
飛び出した私が悪いだけでしょ?
カイ君は、何も悪くないよ・・・悪いのは・・・
何も覚えていない私だよ」



そう言って、彼女は泣きながらも





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「でも・・・そっか~私、もう告白してたんだ。
今日こそ告白するつもりでいたんだけど・・・
もう告白終わっちゃってるのね?
じゃぁ、もう恋人だよね!嬉しい!
やっぱり私は恵まれてるんだわ」



でも、翌日には





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「カイ君、おはよう!
昨日のこと、教えてくれる?」



彼女は何も覚えていない。





恋人でいられたのは、最長で3日までだった・・・。



「ねぇ、カイ!
明日の日曜日、デートしようよ!
駅で待ち合わせね!」



日曜日・・・




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俺は一人で、朝から夜まで駅にいた・・・。


そして、月曜日の朝に彼女は、


幼馴染の顔で、何もなかったように言うんだ。



「カイ君、おはよう!
昨日のこと、教えてくれる?」





・・・悲しい、空しい・・・。
いつも、そんな感情を抱きながら、
ずっと彼女のそばにいなくちゃいけないのか?
いっそのこと、
俺もすべて忘れられたらいいのに・・・。



今日・・・彼女は、俺に告白しようとしている。
モジモジしてるから、そろそろだろう・・・。
もう彼女の告白するタイミングや仕草が
手に取るように分かるようになってしまった。
記念すべき、100回目だ。



嬉しい・・・。嬉しいんだよ。
でも、俺が嬉しいと思ったことすらも、
彼女は忘れてしまう・・・。
彼女の記憶には、「今の俺」が残らない。
いつまでも「幼馴染の俺」が残って、
いつまで経っても「恋人としての俺」が残らない。



「あ、あのね、カイ君・・・
ちょっと、聞いてくれる?
あ、あのね・・・」





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気づいたら、俺は・・・
彼女を抱きしめていた。



「え!?え!?ど、どうしたの!?」



彼女には、
何が起きているのか分からないだろう。
俺も、どうして
こんな大胆な行動に出たのか分からない。



でも、もう・・・


我慢できなかった・・・。
気づいたら、泣きながら・・・彼女を抱きしめていた。



「・・・カイ・・・君?」



「・・・どうすりゃいいんだよ」



「え・・・?」



俺が、毎朝、恋人になったことを
伝えればよかったのかもしれない。
でも、それが出来なかった。
恥ずかしいのもあったけど・・・
何よりも、俺だけがそんな大切な記憶を
覚えていることがイヤだった。
恋人同士で共有して覚えているべき大切な記憶なのに・・・
俺だけ覚えているなんて・・・
彼女に「いつの間にか知らないうちに付き合ってた」
みたいに思わせることが、イヤだった。





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「どうしたら、恋人同士になれるんだよ!」



「え・・・?」



「俺はお前が好きだ!」



「!」



「お前が俺を好きなのも分かってる!」



「・・・!」



「どうやったら・・・俺のこと、
ずっと覚えててくれるんだよ!」



「・・・」



言ってしまった・・・。
これは禁句だって分かってた。
彼女に罪はない。
忘れようとして忘れてるわけじゃないから。
こんな言い方をしたら、彼女が
傷つくのも分かっていたのに・・・。
でも、もう・・・
俺の心の傷のほうも限界だった・・・。





オチつき大五郎え日記




「もしかして・・・
私・・・たち・・・もう、恋人・・・なの?」



「・・・どうして・・・」



「え?」



俺は、前から疑問に思っていたことを聞いてみた。
簡単なことなんだ。



「どうして、日記とか書かないんだよ!
どうして毎日、俺に聞くんだよ!
大切なこと忘れてるって聞かされる、
俺の気持ち、考えたことあんのかよ!」



「ごめんなさい・・・だって・・・」



「・・・?」



「忘れるって分かってるんだもん・・・。
書いてあっても、『出来事』を知るだけで、
記憶が蘇るわけじゃないもん・・・。
「あ、そういうことがあったのか」って
思うだけだもん・・・。
私・・・イヤなことが書いてあったら、
忘れてて良かったって思えるけど・・・
楽しかったこと、嬉しかったことが
書いてあるの見たら・・・
それを忘れてしまっていることが、
それを思い出せないことが、
すごく悲しくなるんだもん!」



「・・・」





オチつき大五郎え日記




一番ツライのは、彼女だって分かっていたはずだけど・・・。
後遺症のことで、ずっと悩み、困っているのは
彼女だって分かっていたのに・・・。
俺は、いつの間にか、
自分だけが被害者のような
気持ちでいたのかもしれない・・・。
彼女のこと、分かっているつもりになっているだけだった・・・。



悪いことをした・・・。
明日、謝って・・・
いや、明日じゃ忘れられてるかもしれないから、
今日中に・・・



いや・・・



結局、いっしょか・・・。
今日、謝っても、
明日か明後日には、忘れられているんだから。



どうすることもできないのか・・・。


こうやって俺が悩んでいることも、
彼女は知らないし、気づいたところで忘れる。
何ひとつ、未来へ残せない。


逆に、うらやましいかもな。
イヤなことも忘れれるなんて。
まさに「恵まれている」・・・。
俺にも少し、その幸せを恵んでほしいくらいだ。


また明日になれば・・・
彼女はいつものように、俺に話しかけてくる。





「カイ、おはよう!
昨日のこと、教えてくれる?」



「え!?」





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・・・その後、彼女は
俺が恋人であるということを忘れたことはなかった・・・。



どうして、忘れないようになったのかは・・・
後日、彼女の部屋へ行ったときに
知ることになるんだけど・・・。





オチつき大五郎え日記




俺の恋人は
「恵まれていることを知る者」。
そして、俺は彼女から
毎日、幸せを恵んでもらっている。







END



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エンディングです。
この曲をイメージしながら描きました。
(携帯では見れませんが)

最近、こういう夢を見てしまって・・・
夢では、恋人がすべて忘れてしまうって
結末だったんで(-_-;)
ハッピーエンドを考えるのが難しかったっす(汗)
『絵空事』としては、恋愛モノに初めて挑戦してみましたが
いかがだったでしょうか?







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