一番作ってほしくなかった映画『ブレードランナー』の続編、『ブレードランナー 2049』の予告編がとうとう公開されてしまった。

 


振り返れば、『ブレードランナー』の続編を作るタイミングは1980年代後半だけであったと思う。それまでアクション作品ばかり出ていたハリソン・フォードが『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985年公開)や『モスキート・コースト』(1986年公開)で演技派の評判が付き、「スターウォーズ」シリーズが停止していてSF作品の旗手が空席になっていたころだ。


しかし、『ブレードランナー』は、俳優間、スタッフ間、俳優-スタッフ間、製作現場のあらゆる人間関係が険悪だったことと1982年の劇場公開時における興行の失敗は尾を引いていて、まだまだ限られた人しか観られなかったビデオソフトでの人気で復権した評価だけでは、続編製作なんて到底叶わなかった。


1980年代後半、演技派の側面を手に入れてさらにビッグネームとなったハリソン・フォードの決定版は『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年公開)、SF映画の旗手は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989年公開)が手に入れた。もしも…の話として、『ブレードランナー』 の続編が一作目と同じようなスタッフの面子で作られたのなら、さすがに一作目を越せないまでも、納得の行くシリーズとしてファンに迎えられたことであろうし、興行的にも不安を抱かせないものであっただろう。『ブレードランナー』を監督したリドリー・スコットもそれに通じる世界観で作り上げた『ブラック・レイン』(1989年公開)を成功させていたことだし。


ただ、それ以降は無理だったはず。ハリソン・フォードの絶頂は続いていたけど、1992年に公開された再編集版、いわゆる「最終版」で新たに示されたテーマで問われるであろう、彼が演じるデッカードが実は人間ではなくてアンドロイドであるレプリカント説=年齢を取らない設定が、加齢による容姿の変化で叶わなくなっていった。そして決定打となったのは『ジュラシック・パーク』(1993年公開)だ。この作品が起こした革命的なCG映像製作と『ブレードランナー』の美術面における表現美は相反するものだった。自分も含めて、人々は『ブレードランナー』をいつしかクラシック映画として捉えるようになっていく。


『スターウォーズ  エピソード1/ファントム・メナス』(1999年公開)、『 インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年公開)、時が経ち過ぎた続編は哀しい出来なものばかり。『ブレードランナー』にも幾つもの続編製作話が出てきては、“幸いなことに”消えていった。その度に一喜一憂した。正直、後日譚は気になるものの、それを具現化してしまったら『ブレードランナー』の価値そのものを堕とすようなもの。再編集版は許せるけれど、〝『ブレードランナー』は『ブレードランナー』ただ一作だけで良い〟という考えに至っていた。


〝 リドリー・スコットが製作総指揮で、ハリソン・フォードもちゃんと出演する〟、時が経ち過ぎていた以外はぐうの音も出ないような内容で続編製作が発表された際は目眩がしたが、 今回出てきた予告編は想像していたものよりも出来は良い。でも、〝やっぱり観たくはない、作ってほしくなかった〟という想いもある。はてさて。