前回の記事は自分の中で好評だったので(笑)、今回はその第2弾で行ってみたい。

 

今回は刑事ドラマの金字塔『太陽にほえろ!』、それで頻繁に使われたBGMで、カシオペアのアルバム『CROSS POINT』をフィーチャー。

 

CROSS POINTCROSS POINT
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ご存知のように、『太陽にほえろ!』のサウンドトラックは一貫して大野克夫によって作られたのだが、喫茶店などでの場面はリアル感を出すための効果音として、放送当事に流行していた歌謡曲やロック、それから歌のないフュージョン系の音楽が使用されている。で、大野克夫によるサウンドトラックは放送中から現在に至るまでレコード(CD)で市販化されてきて、マニアならば「あのアルバムに入っているこの曲」とか、その逆に「この場面に使われているのはあの曲」なんてことが語られている。でも、喫茶店の場面で掛かる、大野克夫のサウンドトラックではないそれが語られることはなかったので、重箱の隅をつつくこの私めが取り上げていこうという次第。

 

 

このアルバムをかいつまんで紹介すると、1981年10月21日に発売された通算6枚目のアルバムで、前作『EYES OF THE MIND』でプロデューサーに迎えたアメリカのドラマー、ハービー・メイソンが本作にも共同プロデューサーとして参加している。本作でのハービーは、アルバム全体の音作りを決めるためのリハーサルとリズム録りまでは参加したのだが、それ以降のメロディー楽器主体のオーバーダビングや最終段階のミックスダウンには参加していない。これには理由があり、まずアルバムのレコーディングが1981年7月から9月まで長期に渡るもので、その間にカシオペアは全国各地で開催される夏のジャズ・フェスティバルを廻るライブスケジュールも入っていて、レコーディングがある一定期間に集中して行われなかったために、ハービーの来日滞在スケジュールとの兼ね合いがあったこと。もうひとつは、アメリカ市場向けにハービーがフルプロデュースした前作『EYES OF THE MIND』はカシオペアにとって好い面と悪い面の両方あったことが挙げられる。好い面とはアメリカで流行していたファンク・ミュージックやAORみたいに“時代の波に乗れた”シンプルな音作りで、フュージョン・ブームが退潮していくなかで逆にファンを増やせたこと。悪い面とはそれまでの音楽性が捻じ曲げられてしまって、ライブで完全再現出来るほどの“スリル・スピード・スーパーテクニック”を謳った音楽性ばかりではなく、持ち味であったポップなメロディーはヒーリング・ミュージックに通じるような薄味なものにされてしまい、従来のファンはもとよりメンバーのなかでも疑問が生じてしまったこと。

 

当ブログ記事 CASIOPEA『EYES OF THE MIND』(1981)

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-10940761539.html

 

『EYES OF THE MIND』とは違い、『CROSS POINT』は日本市場向けの作品ということで、引き続きのハービー参加もそれに合わせることで『EYES OF THE MIND』の悪い面を考慮するものとなった。結果、『CROSS POINT』は『EYES OF THE MIND』の延長線ではありながらも、カシオペア本来の良さも復活。そして、次作でありライブ盤となった名作アルバム『MINT JAMS』に繋がるのだった。

 

今年になって突如出てきた貴重な映像。『MINT JAMS』収録ライブ三日前、1982年2月20日(土)に行われた静岡県・磐田市民文化会館でのライブ。ツアーの一環ではなく、単発のライブであった。おそらく三日後と同内容のセットリストによるもので、リハーサルも兼ねていたのではなかろうか。

 

さて、『太陽にほえろ!』から本作『CROSS POINT』を見ていこう。本作からの曲が初めて使われたのは、発売から一ヶ月半近く後、1981年12月4日放送の第486話「赤い財布」において。喫茶店での刑事どうしにおける昼食場面で新人刑事のラガーが先輩のドックから捜査のイロハを説かれていた際に、アルバム最後の収録曲「ENDLESS VISION」が使われていた。それ以降の回も「SMILE AGAIN」、「SWEAR」、「SPAN OF A DREAM」などのミディアム~スロー曲を中心に使われている。本作の特長である音数を少なくして“空気”を聴かすことと印象に残るメロディーは、その他の音声ともミックスしなければならないテレビドラマのBGMとしては最適であったに違いない。当時のカシオペアは半年のインターバルで新作アルバムを続々と出していくのだが、そういう理由もあってか、『太陽にほえろ!』の 「選曲」スタッフは結構なまでに『CROSS POINT』に収録されたものばかり選んで喫茶店のBGMに嵌めていく。

 

 

『太陽にほえろ!』ではあまり使われたことがないが、80年代から90年代に掛けてテレビ&ラジオのBGMとして掛かりまくったこの曲も『CROSS POINT』に収録。